自民党の政治と金の問題をめぐる処理が迷走している。岸田総理は相変わらずリーダーシップのなさを露呈しており、自民党の独自案も後ろ向きのものなりそうだ。連座制の導入もなく「いわゆる連座制」で落とし所にしたい考えだ。
TBSは自民党議員は「会計責任者の裏切り」を警戒しているのではないかと指摘する。自民党の議員は普段からスタッフを信頼しておらずいざという時に切り捨てられる存在としか見ていないことがわかる。有権者は野党支持を通じて自民党を下野させるのではなく無関心によって内部から破壊に導く道を選んだ。
予算編成が終わり国会の関心事は子育て支援制度と政治と金の問題に移っている。岸田総理の答弁はいつも通りに迷走しているが迷走自体はもうニュースにならない。
当初、自民党は独自案を示さず公明党との協議に臨んだ。その真意は明らかではないが議論を始めてしまうと党内からの提案が抜け穴だらけになることを警戒したのではないかと思う。当事者ではない公明党の案に依存することで党内議論を避けようとしたのだろう。自民党に自浄作用がなくなりつつあることがわかる。
ところが、この姿勢が野党に攻撃されると国会答弁がもたなくなった。そこで岸田総理は態度を一転させ党内での議論がはじまった。そこで出てきたのが「いわゆる連座制」という提案だ。案の定抜け穴作りを画策したのだ。
連座制では会計責任者が処罰されれば自動的に議員が公民権を失う。ところがいわゆる連座制では会計責任者との間に確認書を作らせ確認していないことがわかった時点で公民権停止となる。だがその意図がわからない。
▼1つは会計責任者や秘書が収支報告書に故意に不記載を行い、議員が辞職に追い込まれる悪質なケースを懸念する声が党内で多く出ていること。▼2つめは誤記載などの単純ミスだった場合、国民の代表を選ぶ選挙での不正行為と同じように扱い、議員本人の責任を問うことが適切なのか、慎重な意見が多いことです。
今回は岸田総理が自身の派閥の問題において多額の不記載を「単なる事務処理のミス」として説明しているためそもそも「まちがいと悪意」の間が曖昧になっている上に、会計責任者や秘書が「故意に」議員を陥れる可能性を想定しているのだ。
秘書や会計責任者が信頼できないなら事務所の人間関係は破綻していると言ってよいだろう。だが、そもそも普段から「すべては秘書のせいだ」として責任を押し付けているのだから秘書やスタッフから恨まれているとしてもそれは議員の自己責任だ。
そのほかの政治と金の問題をめぐる争点はいくつかある。
まずどうしてこの問題が始まったのかについて岸田総理は頑なに調査を拒否している。森喜朗時代に始まったと言われているがはっきりとは森喜朗氏に聞かなかったようだ。もちろん記録などは残っておらず再調査の予定もないという。
また政策活動費についても総理は曖昧な答弁を繰り返した。党勢拡大のための費用ということになっているが野党は裏金の温床になっているのではないかと疑っている。しかしながら実際には自民党内の地方議員の奪い合いの原資になっている。これまでのお金の流れが明らかになればおそらく党派や議員の人間関係は崩壊するだろう。金で身内から議員を引き抜こうとしたことが露呈してしまう。
自民党内では選挙への影響を懸念する声が出ており時事通信は「総理・総裁分離案」も出ていると指摘する。だが国民の政治と金の問題についての関心は薄れつつあり内閣支持率は微増している。岸田総裁の次を探すとしても冷淡な有権者も呆れながら推移を見ている自民党員たちも誰かを積極的に推すことはないだろう。結果的に誰も総裁選レースで支持を集めることができなくなり「どんぐりの背比べ」が泥沼化する可能性がある。
むしろ問題なのはうっすらと広がる政治そのものへの不信感と無関心だ。江東区では政治を冷笑する人たちの支持を背景にした愉快犯的な選挙妨害が起きているが、おそらく選挙に夢中の議員たちがこの重大さに気がつくにはかなりの時間がかかりそうだ。
まとめると次のようになる。
有権者は政治への関心を失いつつあり「何もかもむちゃくちゃになってしまえばいいのに」と考える人も増えている。党内では地方議員の取り合いにお金が乱れ飛んでいるようだがそれを明らかにすれば党内の人間関係は破綻するだろう。さらにこれまで長年「すべて秘書のせいでございます」と言い続けていたために秘書や会計責任者からも恨まれている。岸田総理はこの問題を解決できるとは思えないが、岸田総理以外に解決できる人がいそうな気もしない。
自民党は今度こそ本当に内部から崩壊するのではないか。
有権者は野党支持を通じて自民党を下野させるのではなく無関心を背景に内部から崩壊させる道を選んだと評価すべきなのかもしれない。冷笑化した日本人は意外と冷酷で残忍だ。