イスラエルがイランなどを攻撃した。すわ第三次世界大戦かという情報も飛び交ったのだが、結果的にはイランが「警報装置が作動しただけでダメージはなかった」と宣言したことで沈静化に向かっている。エントリーをいくつかに分けてそれぞれの国の立場から報道を整理する。このエントリーではイランの状況について伝える。イランは今後神の威光を具体的に国民に示す必要に迫られる。その「威光の具現化」は今後の世界情勢に大きな影響を与えるだろう。
イランは現在ファトワ(宗教令)で核兵器の開発と利用を禁止している。だがこのファトワを解除するのではないかと伝えられていた。
現在のイランの国内状況は極めて不安定だ。長引くアメリカの制裁に疲れた国民たちの反政府感情が高まっている。イランは政府をイスラム教が指導するという専制主義の国であり国民の苛立ちは最終的にはイスラム教指導者に向かう。
スカーフの着用に反発する女性が宗教・風紀警察に殺された事件の後には大規模な抗議運動が起こっていた。
イスラエルは戦争を起こすことで政権の延命を図っているが、イランの状況は真逆である。国民を煽り全面戦争に突入するとイランの体制が崩壊する危険が高まる。民主主義に支えられた国は戦争を望んでおり専制主義の国は治安維持のために戦争を望んでいないという西側の常識から見れば非常に奇妙な状態になっている。
今回イスラエルとの対立が陰の対立から表の対立に昇格したことでイランは核兵器開発を積極的に進めることになるのではないかと思う。
ではなぜ今回の攻撃が核兵器につながるのか。イランは「正しさ」と「強さ」が結びついた国だ。宗教指導者はイランがイスラム教の神に守られた強い国であるからこそ支援されている。BBCはいつまでたっても「邪教の国」イスラエルを滅ぼさないイランの指導者に対する怒りのメッセージが各地に見られると報じている。
イラン各地の都市では、「イスラエルよ、(イランの)最高指導者(アヤトラ・アリ・ハメネイ師)の家を攻撃せよ」と落書きされた壁が複数見つかっている。「イスラエルよ攻撃せよ、彼ら(イラン)には報復する勇気がない」と書かれたものもある。
今回のアメリカに関する分析では「アメリカが信奉する民主主義という正義は崩壊した」と書いたが、実はこれはイランにも言えることなのである。ハメネイ師は1939年4月19日生まれだ。このためイスラエルがわざわざこの日にイランを攻撃したのはハメネイ師に屈辱を与えるためであったとする説がある。
イランの専制主義体制は「神の威光」を具現化させる必要がある。つまりイランが核開発に前進するモチベーションが強まったことになる。