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1ドルは154円のまま – アメリカと韓国の協力で口先介入してみたものの

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円安が止まらない。マイナス金利政策解除には成功したものの金利が上げられない日本はアメリカと韓国に頼んで口先介入を手伝ってもらった。一時はその効果が出たようだが数時間のうちに剥落してしまった。

この状況を変えるためには政治が国民を説得した上で金利を上げるしかない。だが日本の政治は集団無気力症に感染しておりおそらくそれは起こらないだろう。国民は一時は政治に文句を言うだろうが1990年代と同じように自己責任社会へと向かうはずだ。1990年代は企業の自己責任化が進み日本企業の強みだった知的資産が破壊された。

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ワシントンで各種財務大臣会合が行われている。日本は同じような通貨安を抱える韓国と共同で「最近の急速な円安およびウォン安に関する日韓の深刻な懸念」という声明を出してもらった。為替介入の国際協調をやる代わりに口先協調とでも呼べる状況が作られたことになる。これにより相場は一時円高方向に触れたが、その効果は数時間のうちに剥落してしまう。金融市場は「週末までになんからの具体的な行動」が行われることを期待しているようだ。アメリカ合衆国は為替介入に反対の立場であり「事前調整」と「認識」なき介入を認めない方針だ。今回「事前調整」と「認識」が整ったことで形式的には介入の条件ができたことになる。

仮に具体的な行動がなければどうなるのか。ロイターは円安が長期化する可能性が出てきたと指摘する。アメリカの金利は高止まりした状況が続き石油価格も不安定な状況が続きそうだ。4月に限っていえば「スタグフレーション相場」だったそうだ。エネルギー企業の株が売れたが消費財・不動産関連は低調だった。この環境で過度な円安を解消するためには金利を上げるしかない。

だが金利を上げると「ゾンビ企業」と呼ばれる企業の倒産が加速することが予想される。また例え局所的ではあっても不動産市場における影響も無視できないと日銀は憂慮している。特に家の借金を払い終えていない若年世代ほど大きな影響を受ける。

ここは政治の側が国民の声を吸い上げ、それを政策化し、国民に政策を説明すると言う機能を果たし、マスコミもそれを補完すべきだろう。ところが政治もマスコミもこの立論・議論・実行という機能を失いつつある。結果的に日銀がとりうる政策の選択肢は限定され、国民生活は苦しいままなのかもしれない。

実はこうした「政治が何もしない」状況は状況はバブル崩壊後にもみられた。政治は総括をせず責任を取らず国民の意見をまとめようともしなかった。宮沢政権はバブル崩壊直後の1992年に崩壊しその後に非自民党系の政権ができた。これが細川政権と羽田政権だったがどちらも短命に終わっている。政権交代と政界再編じたいには何も意味がないことを日本人は学習済みだったはずだ。

当初人々は政治に期待するが、政治は何も役割を果たさないことがわかると諦めから自己責任化する。バブル崩壊で金融機関が資金を引き上げると企業は自己資本に頼るようになった。企業が実施できるリストラ(構造改革)は結局コストカットしかなく、正社員の非正規化・新規雇用の抑制・従業員教育の縮小など企業の強みであった無形の知的資本の破壊という病状が進行していった。また地方銀行との関係が切れた企業は次々に海外に流出していった。これも地域から知的資本を蒸発させた。

今回の円安の影響を受けるのはおそらく大企業ではなく中小の国内製造業とレストラン・宿泊などのサービス業だろう。今回の円安では「円安が続くと倒産する」という中小のものづくり企業の声が寄せられているが、彼らはおそらく金利上昇にも追随することはできないだろう。

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