ざっくり解説 時々深掘り

金利上昇によりアメリカの株高が正当化できなくなりつつある

パウエル議長が「利下げを急がない」と発言したニュースは日本では円安と絡めて報道された。だがアメリカでは別の問題が語られている。金利が高い状態が続くと現在の行き過ぎた株高が正当化できなくなる。暴落するかじわじわと下げに転じるかについては意見が分かれるが資産防衛のためになんらかのプランを立てる必要がありそうだ。

日本のテレビや新聞の情報は不正確とは言わないまでも興味の範囲がかなり限定的だ。日本の報道だけを見て意思決定することはリスクになりつつある。

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パウエル議長が利下げを急がないと発言したニュースは日本でも大きく取り上げられた。時代は変わったと感じた。

  • 現在物価高が進んでおり円安の影響であると広く認識されている。この原因がアメリカFRBの金利政策であるということも広く知られるようになった。
  • 新NISAやFXなどの影響で投資に興味を持つ人が増えている。
  • 中小企業を中心に円安が壊滅的な影響を与えている。

状況が変化しつつありアメリカFRBというこれまで馴染みのなかった存在が日本のニュースに組み込まれつつあるようだ。

一方でメカニズムに対する理解は全く進んでいない。日本のニュースを見ていると「このままでは中小企業はやっていけない」「賃上げなどとてもできない」「なんでもいいから政府は対策を講じるべきで、為替介入でもなんでもやればいいだろう」というような話が次から次へと出てくる。

とはいえ、日本人は政府に対して抗議運動を行わず自分達でなんとかしようとする傾向がある。個人やそれぞれの経営者が単独でできることといえば従業員を解雇したり工場を整理するといった「リストラ(日本では規模縮小のことをリストラという)」だけである。

徹底して話し合わず「お天気」のように情況を語る姿勢は経済の好循環どころか自民党の悪夢・岸田政権の悪夢を生じさせることになるだろう。人々にとってはこれはコロナの流行同じ災厄であり対策は「マスク」以外にはない。すると全ての活動は停滞を余儀なくされる。

この日本人のメンタリティは他人へのマスク強要という自警団活動を活発化させる。そして自警団活動による同調圧力も停滞の一因となる。

現在の政策論争を見ていると「政治家だけが特権を持つのは許されない」ということになりつつある。与党から野党への支持の移動は起こらず単に政治家に対する締めつけ運動になる。これが日本型のポピュリズムである。集団の不安な空気で社会全体を押さえつけてしまうのである。

さて、経済を扱う人たちには具体的な対策が求められる。

中小企業は「算数経営」だが大企業は事業計画に基づいて経営の意思決定をしている。企業の経営企画部にいる人たちは、今後の為替の具体的なレートを決めてそのレートを元に事業計画を再編成する必要があるだろう。為替レートが決まらない状態が続いており事業計画の策定に困難が出ている。年次の計画と同時に急激な変化に対するcontingency planが必要になる。ロイターはこれを「リスク回避計画」と表現しているようだ。

また金利が高止まりするとアメリカの企業には大きな影響がでる。現在は6月にも利下げが始まるであろうという想定の元に収益が予想されているが、利下げ時期が後退するとこの予想も変更せざるを得なくなるだろう。

欧米は新しい金融レジームに入ったという認識が出始めている。

ブラックロックのカトリンピーターセン氏は、米国の金利は今後5年間で4%近く、ユーロ圏の金利は約2%になると予想。「われわれは新たなマクロ市場レジームに入ったが、その基盤の一つは構造的に高い金利だ」と語る。

そして新しいレジームは新しい計算式を必要とする。つまり企業評価モデルを再構築する必要がある。

しかし、再評価が必要なのは投資家が企業評価モデルに組み込む割引率で、これは米長期金利予想を反映する。会計会社EYの推計によると、この基準が1%ポイント上昇すると、企業の将来収益の現在価値は10%低下する。

現在価値が低下すれば当然株式の評価も低くなる。問題は「新しい適正基準」が誰にもわからないという点にある。仮にこれが分かれば徐々にモデルを変えて織り込んでゆけばいいのだが、基準が明示されないと何かの経済指標をきっかけに思わぬ動きが生じることがある。これが暴落説の根拠になっている。つまり多くの企業が一斉にcontingency planに切り替えると投資家が動揺する可能性が出てくる。これが一部に出てくるブラックマンデーの再来の根拠になっている。

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