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There is a date for Rafah Invasion – ラファ侵攻の日程はある

日本のメディアでは「ラファ攻撃の日付は決まっている」と翻訳されている。ロイターのヘッドラインは「There is a date’ for Rafah invasion」でありBBCはBenjamin Netanyahu sets date for Rafah offensive as pressure growsと表現する。表現は媒体によってまちまちである。元々の表現は英語ではないのかもしれない。

この発言だけを見るとラファ侵攻は不可避に思えるのだが実はそうではない。本来なら「詰んだ」状態なのだが各国ともそれを何とかしようとしているというのが今回のコンフリクトの特徴だ。

今回の状況をざっくり一言で表現すると「詰んだ」状態だ。それぞれが身動き取れない状態になっている。何かを決めた途端に何かを失う。だが何も決めないわけにはいかない。そんな感じである。

アメリカ合衆国のバイデン大統領は次のようなジレンマを抱える。

民主党人権派は「パレスチナ人を見捨てるな」というが共和党は「民主党は極左に負けてイスララエルを見放した」と言いたい。

交渉は事実上決裂しているのだがアメリカ主導で交渉が進んでいると見せたい。エジプト政府は「停戦交渉は基本的合意に達した」と宣伝していたがハマスはこれを「お話にならない」と一蹴している。このため交渉は進展していて望みはあると宣伝しておきながら、裏ではCIAの長官が新しい提案をしているという報道が出ている。

ネタニヤフ首相もまたジレンマを抱えている。

レバノンやシリアにいるシーア派勢力を刺激してしまったために二正面作戦を迫られている。

アメリカ合衆国は援助停止を仄めかすが援助が停止されればおそらくイランから攻撃されるだろう。

とはいえ援助の継続を優先しラファから撤退すれば内閣が崩壊する。極右の連立相手であるベングビル氏はラファ攻撃が停止されれば政権から撤退するといっている。

ベングビル氏も実はジレンマを抱えている。

政権から撤退すれば選挙が行われるが議席の獲得ができるかどうかは危うい状況だ。ネタニヤフ氏は政権を失う可能性が高いが超正統派・正統派の人たちが政権に参加できなければ兵役免除というこれまでの特権を失ってしまうだろう。

普通に考えると「もうどうしようもない」状態だ。

だが、ここで粘って見せるのがネタニヤフ流である。ラファ侵攻の日付は既に決めてある(がその日付がいつかは言わない)と仄めかし続けることでその場を何とかしようとしている。そして何とかしていればそのうちどうにかなるだろうと考えているようだ。

この被害を受けているのがガザ地区の人々だ。イスラエル軍の撤退が決まりハンユニスに戻った人々を待っていたものは瓦礫の山だった。

そんななか、ガザ地区を南北に分断する横断道路が作られたがおそらくガザ地区の人々は自由に往来ができないだろう。ネタニヤフ政権は時間稼ぎをしながらガザ地区のを管理するための体制づくりのために着々と次の計画を実行している。

そんな中、次の動きも始まっている。

ヨーロッパは難民の流出は防ぎたいと思っている。だが、統治能力がなく攻撃的なハマスも応援したくない。そのためパレスチナ自治政府は新しい内閣の組閣を行い「次」の受け皿を作った。国連ではこのパレスチナ自治政府に国家格を与える動きが加速している。今月中に何らかの結論を出すという方針だ。

既に停戦決議は出ているのでフランス、ヨルダン、エジプトは「すぐに停戦を実行し、次の統治機構について検討すべきである」という共同声明を出した。

ネタニヤフ政権はパレスチナの国連加盟には反対しており、アメリカ合衆国がパレスチナの国家承認にどのような姿勢で臨むのかに注目が集まる。アメリカ合衆国は常任理事国なのだから、バイデン政権はパレスチナ国家を承認するかしないかを決めなければならない。ラファ侵攻の日付よりももっと確実にその締切はやってくる。

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