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時間稼ぎの政策もむなしく、2023年度の企業倒産は9年ぶりの高水準

前回のエントリーでは「基金の国庫返納」のニュースをきっかけにして日本の経済状況を調べてみた。このエントリーはその結果ということになる。

政府は必死で数々の延命策を繰り出してきたにもかかわらず倒産件数は9年ぶりの高水準となった。

「インフレ経済」の影響が出始めている。共同の記事は東京商工リサーチの調査を引用しており、ロイターの記事は帝国データバンクを引用している。どちらも同じ結果となった。

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共同通信は負債額を書いている。コロナ禍対策の貸倒が1兆円程度になるのではないかという会計検査院の指摘もでているが実際に金融機関が被った被害(負債総額)は2023年単年で2.4兆円弱だそうだ。帝国データバンクも東京商工リサーチもゼロゼロ融資について触れているためおそらく事実上の国の貸倒も増えているものとみられる。

当然、これらは全て国民負担となる。

23年度の負債総額は6.0%増の2兆4630億円。1億円未満の小規模倒産が目立つ。大型倒産は特別清算を申請したパナソニック液晶ディスプレイ(兵庫県)の5836億円が最大。次いで民事再生法の適用を申請したユニゾホールディングス(東京)の1261億円だった。

内容はかなり悲惨だ。「悪夢の民主党政権」と呼ばれることがあるが悪夢の実体は日本経済のゾンビ化だった。

安倍政権はアベノミクスによる延命を図るが成長戦略はほとんど実行されず単なる時間稼ぎに終わった。悪夢はさったわけではなかった。単に破綻が先延ばしされただけである。これが剥落しかけたところにコロナ禍が襲ったため国は無担保・無利子による融資を計画する。また「コロナ対策基金」で官僚の決裁権を膨張させた。この基金が膨らんだまま修正できなくなっている様子については別のエントリーで詳細に検討している。国民負担もまた増えている。

結局、これらの時間稼ぎ政策の数々が効果を発揮することはなかった。原因は単純だ。企業の稼ぐ力には何ら変化が見られなかった。破綻が遅れれば遅れるほど事態は悪化してゆくばかりだ。

コロナ禍の後に経済がインフレ転換し中小企業の経営はますます難しくなっている。もちろん、国は何もしていないわけではないが結果的に状況を改善させることはできず、国民負担を垂れ流し続けている。

勤労統計では賃金の低下が続いており国民生活が改善していないことがわかる。内訳を見ると特に飲食業やサービス業などが賃上げに苦労していることがわかる。実際には事業継続ができずに倒産しているところも増えているのだから「物価上昇以上の賃上げ」などできるはずもないということがわかるだろう。

この件について問われた林官房長官は「重要との認識を示し注視すれば自ずと賃金は上がるであろう」という謎の認識を示した。「前向きさが重要だ」という。

ついに長官の信念はスピリチュアルな領域に達したようである。

この件に関しては「そもそも国民の税金を使ってゾンビ化した企業を温存すべきなのか」について考えるべき時期に来ている。だがおそらく「稼げなくなった企業は退出すべきだ」というとその部分だけが切り取られるだろう。SNSの炎上を恐れる政治家たちは何もいえなくなっている。

この温情主義が生きてくれば良いのだが実際には企業も助けられなければ国民も負担を余儀なくされるという誰もハッピーにならない状況が生まれている。こうした難しい問題を勇気を持ってわかりやすく説明する政治家が現れないかぎりこの悲惨な状況はダラダラと続くのではないかと個人的には懸念している。

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