東京商工リサーチが2つの記事を書いている。パン屋とラーメン屋がバタバタと潰れているというのだ。この話からは二つの情報が読み取れる。一つは岸田政権下で国民の負担を増加させる悪い政策が着々進行しているというものだ。ここから政府批判につなげることができる。
もう一つは実利的な情報だ。政治が変わらないからと言って企業も何もしないわけにはいかない。プチ贅沢というセグメントが成立しなくなりつつあるのだから、高級路線で儲けるか価格重視を徹底させるかを決めた上で変化に対応した企業だけが生き残れることになるだろう。
東京商工リサーチの記事は二つある。
どちらも不況型の倒産が多いそうだ。パン屋では9割が不況型である。つまり業績不振で廃業を決めている。この記事を見て「なんだ件数はそれほど多くないではないか」と思う人もいるだろう。だが、現実問題として家計の実質消費は12ヶ月連続で落ちている。グラフで見ると2月は持ち直したようにみえるのが、これはうるう月の影響だった。例年より1日多かったため統計的には影響が小さかったように見えている。
- 消費支出、2月は前年比マイナス0.5% 「うるう年」影響除くと2.7%減(Reuters)
岸田政権は防衛費と少子化対策で国民の高負担を求めていると言われる。確かにそれはそうなのだが加えて悪性インフレを放置することで国民に物価高という負担を押し付ける政権でもある。おそらく岸田総理がこの状況を改善する見込みはない。国民が自民党政権を選択し続ける限りこの状態は続くのだろう。自民党の中にから岸田総理の政策を代替するようなアイディアは生まれていない。
一方の立憲民主党などの野党にもどんな代替策があるのかわからない。インフレ対策のための政府支出を増やせという要求は聞かれるが、抜本的なインフレ対策にはならない。
ここは考え方を変えて政府批判以外の着眼点を持つべきなのかもしれない。
ラーメン屋が潰れる原因は「1000円の壁」を超えることができないからなのだそうだ。もともと庶民の食べ物であり確かに1000円は高いという気がする。とはいえ小麦粉などの値段が上がっており今まで通りの提供は難しそうだ。つまり商品カテゴリーにはそれ特有の価格の壁というものがありそれを乗り越えるのは容易ではない。価格転嫁が進めば消費そのものが消えてしまう。SNSで言えば「ブロック」か「ミュート」されたアカウントと一緒である。無かったことにされる。
さらに高級食パンももはやビジネスとして維持できる状態ではないそうだ。高級食パンは「食パンなので贅沢品ではあるがかろうじて手が届く」というレンジの食品だった。これも成り立たなくなる。
高級ラーメンも「フランス料理のフルコースは食べられないが、高級ラーメンだったら何とか手が届く」というカテゴリーの商品だった。いわばプチ贅沢といえるだろう。こうしたプチ贅沢カテゴリーにある商品が食べられなくなっている。
そんなことを考えていたらこんな記事が見つかった。リンガーハットの業績が落ちているそうだ。ラーメンでもうどんでもないという選択肢として人気だった。さらに「国産の材料にこだわっています」という打ち出し方もしていたそうだ。つまりこれも「手が届く商品でありながら少しだけ贅沢で安心」というカテゴリーにあることがわかる。これが苦境に立たされている。
悪性インフレ型の経済ではこうした「日々のちょっとした贅沢」が削られてゆくのかもしれないと感じる。だが、政治が変わらない以上はこうした新しい環境に適応したセグメントの最適化が求められるようになるのかもしれない。変わらないならそれになれてゆくしかない。