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「支援を打ち切るぞ」でようやくイスラエルが検問所と港を解放

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ガザ戦争は非常に緊張した状態が続いている。イスラエルが攻撃を止める兆しはなくこのまま惨劇につながるのではないかと書いてきたが、ここにきてようやく改善の兆しが見えてきた。

アメリカ市民が1名亡くなったことでバイデン大統領がイスラエルの状況を許容できなくなった。「支援を打ち切るぞ」と脅したところネタニヤフ政権はガザのすぐ北にある港を開放し検問所もオープンした。さらに将校2名を解任したそうだ。

アメリカの本当のレッドラインは「アメリカ人が犠牲になること」だった。つまりそれ以外であれば別に構わないと示してしまったことになる。

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今回の一連の出来事からネタニヤフ政権がバイデン大統領の「本当のレッドライン」を探っていることがわかる。つまりそれにさえ触れなければ何をやっても構わないと理解した。本当のレッドラインはアメリカ市民と米軍の巻き添えだろう。つまりアメリカ人の命だけには触れてはいけない。裏を返せばパレスチナ人が何人亡くなろうがそれはアメリカには関係ないということをわかりやすく示したことになる。

バイデン大統領にとっての最優先課題は11月の大統領選挙で勝つことだ。このためには有権者から「アメリカ市民や軍人を犠牲にした」と非難されることは避けたい。だがアメリカの有権者はそれ以外の命にはそれほど関心がない。また、ここでバイデン政権が軍事支援を引き上げてしまうと共和党から「社会主義者の民主党は実はパレスチナ支持の極左に支配されている」と宣伝されかねない。

このためネタニヤフ首相はかねてEUからリクエストがあった港を開放しガザ北部にある検問所を開放する。つまり西側の肝煎りの人道支援策を邪魔しないと宣言してみせた。対応は極めて迅速だった。さらに将校も「ミス」が咎められて解任させられた。狙い撃ちにしたことがわかっているが誰が命じたのかははっきりしていない。公式にはミスということになった。

極めて冷静な反応だ。アメリカとヨーロッパはイスラエルを支援しながらも「人道危機を欧米が容認している」という罪悪感を持っていることをネタニヤフ首相はよくわかっている。このため形だけでもその罪悪感を払拭してやれば引き続き支援してくれるであろうという見込みを持っている。「狡猾さ」と呼ぶか「強かさ」と呼ぶかは別にしてこの独特のセンスがネタニヤフ首相の地位とイスラエルの国益を支えてきた。

案の定ブリンケン国務長官は結果的に「アメリカはきちんと人道支援をイスラエルにやらせている」という形を作ることができ大満足だった。つまりアメリカ人が死なず国内向けに有権者の罪悪感さえ払拭してやればまだまだイスラエルがやりたいことができるという形を示してしまったことになる。

アメリカを利用して国益を守るためにはこれくらい狡猾に動く必要があるということになるが残念ながらこれは合衆国が常々主張する「国際的正義」とは相容れない。

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