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BBCを通じて「日本人は不気味で異様」と言う印象を広めたスマイルアップの東山紀之社長

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BBCがジャニーズ問題を追求する番組の第2弾を放送した。日本では加害者2名を告発せずBBCが報道するまで日本のメディアも無視し続けたことが話題になっていた。だが、番組を見て唖然とした。日本を知っている人はなんとなく東山氏の気持ちもわかるだろうが、そうでない視聴者は「日本人は気持ちが悪く無責任だ」と嫌悪感を感じるだろう。

背景には「する文化」と「なる文化」の違いがある。日本人は形式的には背広を着て民主主義社会を生きているのだがその中身は空洞であって気持ちが悪いという印象を広めたと思う。

中にはサイコパス的な匂いを感じ取った人もいるのではないか。スマイルアップ社側はある工作をしていた。

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モビーン・アザー氏はまず会社の構造(Structures)などについて聞いている。ここから会社の目的(Objectives)を探り、具体的な手段(Processes)について聞こうとしたようだ。ところが既にここで会話が空中分解する。

この噛み合わなさの原因は「する文化」と「なる文化」の違いで説明できる。

モビーン・アザー氏はこの後ひたすらに「この状況をどうしたいのか」を聞こうとする。ところが東山社長はひたすら「どうやったら許してもらえるようになるのか」と話している。最初は違和感程度でしかないが徐々に広がってゆき最後には大惨事になる。

最初の亀裂は「構造」にあった。東山社長はエンターティンメント企業と補償会社が分離していると答えていない。そこからアザー氏は東山社長が依然としてタレントたちに影響力を持っているのではないかと疑っている。日本ではタレントたちは新会社に移り旧ジャニーズの影響下を離れたと説明されているがそもそもそれがうまく伝わっていないのだ。

次にモビーン・アザー氏は東山氏に「ソーシャルワーカーの資格を持っているか?」と聞いている。日本の人たちはこの質問の意味がわからなかったのではないかと思う。つまり、アザー氏は被害者救済に具体的に何をするべきなのかわかっているのか?と聞いているのだ。だが日本人は「どうやったら周りが許してくれるようになるか」を気にしているために、そもそも「どうするべきかか」という発想にならない。だから質問の意味が理解できない。

溝はさらに深まってゆく。モビーン・アザー氏は次に1990年代の裁判の時になぜ中から声を上げて状況を変えなかったのか?と「する系」の質問をする。ところが東山社長にはそもそもそんな意識はない。ひたすら「なぜこんなことになったのか」を自問し続けている。

社会を良い方向に持ってゆくためには一人ひとりが主体的に行動しなければならないと考える西洋人にとってはおそらくかなり不気味に見えただろう。不都合に対してひたすら見て見ぬ振りをしてやり過ごしていたことになる。

日本人は背広を着て民主主義の社会を生きているように見えるのだが、一皮剥いてみると中には何もない。だから虚空に見えるのである。

その文脈で出てくるのが2名の加害者が在籍していたと言う話である。彼らはジャニー喜多川氏と違って生きているがスマイルアップ社は当事者として関わっていない。日本ではこの箇所が大きく取り上げられていたがむしろ東山氏の縁故者であると言う関係性が強調されており社会的責任にはあまり焦点が当たっていなかった。だがアザー氏が質問していたのは「わかっているのになぜ行動しないのか?」という点だった。

ここで今回のインタビューの最大の悲劇が起こる。

スマイルアップのスタッフたちは自分達に都合がいい被害者を集めてモビーン・アザー氏に「被害者側に虚偽の申告をしている人がいる」と言う印象操作を行おうとしたようだ。おそらく東山社長は単に「する」と言う発想を持っていないだけだと思う。そしてスタッフたちはアザー氏がどうしたら許してくれるのかを考えている。

この「隠蔽工作」は日本でもTBSが拾って報道している。だが「なぜいつも日本のマスコミはBBCが伝えるまで何もしないのか?」と批判的な声も多く聞かれたようだ。

とにかくこれがアザー氏に「保身と隠蔽ではないか」という印象を与える。全く主体的でないように装いつつも実は隠蔽しているんですねと受け取られてしまったのだ。ここにも「する」と「なる」の違いがある。東山社長はなんとか穏便にならないかと考えているだけなのだろうが、これがBBC側には狡猾な工作のように見えてしまう。

結果的にこのインタビューはジャニーズ事務所の「虚偽の」発信のために二次被害がでたという主張に流れてゆく。25分から先はこのBBCの主張を強化するための時間として使われた。モビーン・アザー氏は「虚偽の被害者がいると仄めかすことで二次被害があったと認めて謝罪するのか?」と重ねるのだが、東山紀之氏は謝罪をキッパリと拒絶している。

普段から日本人は人権にはほとんど興味がないと感じる。東山紀之社長のインタビューを聞いているとそもそも自分達が主体的に社会参加して社会を変えてゆくという発想すらないことがわかる。あえてやり過ごしているわけではない。そもそも自分が何かしてどうなるものでもないと考えている。

さらに、モビーン・アザー氏は依然としてスマイルアップ社は日本のエンターティンメントに大きな影響力があると疑っている。BBCの視聴者も東山氏がジョニー喜多川氏の後継者だと感じただろう。合宿所を通じて親密な関係があったというエピソードがインタビューに練り込まれているのはそのためだ。

このため、最後にジュリー・藤島氏が経済的に恩恵を受けているかと聞いている。ここは経営的にタレントマネジメントの会社と分離されていると主張しなければならなかったところだが東山紀之社長はそれが理解できておらず曖昧な発言に終始していた。

BBCは記事では経営は分離されたとしているがアザー氏は明らかにその実効性を疑っており、補償手続きが行き当たりばったりだとする被害者の声を伝えている。どうやったら許してもらえるようになるのかばかりを考えている日本の常識では仕方がないことのように見えるかもしれないがおそらくBBCの視聴者は「できることをしないで誤魔化そうとするのはなぜなのか?」と感じたはずである。

これを受けてジャニーズ事務所は昨年10月、事務所の「解体」を発表。被害者への補償を担当する会社は社名を「SMILE-UP.」とするとした。さらに昨年12月には、タレントのマネージメントなどを行う新会社は、社名「STARTO ENTERTAINMENT」になると明らかにした。

だがそもそも「なぜやらないの?」と言う質問に対して虚な目で話をはぐらかし続ける東山紀之社長の端正な顔立ちに底知れない不気味なものを感じた人は多かったのではないかと思う。それはおそらく全く感覚が通じないサイコパスに対して我々が抱く嫌悪感のようなものである。

おそらく東山紀之社長はそれを自覚できていないのだろうしそんなつもりもないのだろう。このインタビューが悲劇的に見えるのはそのためだ。最後まで西洋と日本の溝が埋まらないのである。

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