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再エネタスクフォースの中国企業ロゴ問題 大林ミカ氏と立憲民主党の「不適切な」関係も明らかに

河野太郎大臣の政策を推進するためのタスクフォースに中国企業のすかしが入った資料が使われていた問題に進展があった。岸田政権の危機感は極めて薄いようで「内閣府で適切に処理するだろうから今はまだ政府全体の問題ではない」との立場だ。河野太郎大臣は「ウイルスではないから大丈夫だ」と噛み合わない答弁に終始した。

一方で渦中の人物大林ミカ氏は実は立憲民主党との関係も深かったということがわかってきた。背景にあるのは「脱原発」というコンテクストである。

非常に残念なことだがこうした党派性につけいり国政に浸透するのが中国のやり方である。オーストラリアで以前問題になっていたが清和会安倍派が退潮したことで日本でも同じような問題が起きていることがわかる。保守がライバルであるリベラルの政策を取り込もうとして中国の影響を受けてしまうという構図もオーストラリアに似ている。

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維新の音喜多駿氏が岸田総理と河野太郎大臣にこの件について質問をしており産経新聞が記事にしているが、世間のこの問題に対する関心はあまり高くないようだ。

音喜多駿氏は意思決定機関ではないとはいえ中国の影響があるとすればそれは問題なのではないかと追求している。だが、河野太郎大臣は「ウィルスやハッキングではない」と答弁しており議論が噛み合っていなかった。ブロックを多用しバブルの中に住んでいる河野太郎大臣はおそらくSNSでの状況の推移をご存じないのだろう。

音喜多氏は「河野大臣の調査では不安なので政府の別の組織(国家安全保障会議)がクリアランスを行うべきではないか」と岸田総理に質問をしていた。だが、危機感の薄い岸田総理は「内閣府が調査が終わっていないのでそれ以上のことを検討する段階ではない」との答弁に終わっている。

噛み合わない答弁だったが、SNSでの議論を知らない人は「一体何が問題なのだろうか」と感じただけで終わったかもしれない。音喜多駿氏は家庭にとって実質的な負担増となる再エネ賦課金についても見直しを訴えてゆきたいと総括し別の話題に移っていった。

このままでは火がつかないと思ったのだろう。この議論の発端となった某Webメディアは西村智奈美幹事長(当時)との対談を削除したことを問題視した記事を掲載している。これはネット保守の「上には逆らいたくない」という気持ちをうまく利用としているのだろう。世話の焼ける話だが、ポピュリズムに訴える人たちはネット上の認知に合わせて記事を加工してやらなければならない。

この某Webメディアの心配をよそに実際には立憲民主党は痕跡を消し切れていない。2022年1月の「持続可能な社会ビジョン創造委員会」というキャンペーンサイトが残っておりここには依然大林ミカ氏の名前が入っている。

こうした資料を検索するのは実は簡単だ。Googleの場合site:というコマンドを追加することで立憲民主党のサイトに限定した検索をかけることができる。例えば近藤昭一衆議院議員と大林ミカ氏のの対談記事(2019年7月2日)なども検索できる。

立憲民主党は反原発の立場の議員が多く、大林氏は原発に対置する存在として置かれている。大一方の国民民主党は電力総連が背景にあり原発推進・現状維持の立場だ。ここから再生可能エネルギーは出来るだけ抑制したいと考えても不思議ではない。

立憲・国民は同じ連合を背景にしているとはいえ、こと電力政策においては立場が決定的に異なる。立憲民主党に入り込んでいる社会民主党系の議員たちは原発を決して許容しないだろうし、市民運動(脱アベ政治)のコンテクストでも反原発運動は中心課題だった。

仮にこれが「電力政策をめぐる内輪揉め」という文脈に落ちてしまうと中国政府や企業がどのような形で日本政府の意思決定に関与しているのかが焦点にならなくなる。これが問題になった国がある。それがオーストラリアだ。

オーストラリアは中国との緊密な関係をもとに不景気知らずと言われていた。このため右派も中国との関係が無視できなくなり政権の中心課題に中国との融和策を食い入れた。

2015年に右派の自由党の首相となったターンブル氏は自由党の中ではリベラルだと見做されており中国との関係を緊密にしオーストラリアの経済をよくするという親中国の方針を採用していた。ところがこの対中政策はオーストラリアには悪手であった。次第に中国共産党がオーストラリアの政治に干渉を始めたのだ。このためターンブル政権は中国の干渉を防ぐ法律を準備せざるを得なくなる。

この時に問題になっていたのが左派労働党(当時野党)のサム・ダスチャリ上院議員だった。結局ダスチャリ氏は上院議員を辞職している。野党が政権に返り咲くためには資金が必要になる。このように党派対立を利用してその国の政治に介入するというのが中国式のやり方である。彼らは外側から民主主義を見つめ、政治家たちが何を欲しているのかをよく知っている。

この時に労働党=中国という印象がつき2022年の総選挙(労働党が勝利した)では自由党を応援している選挙活動グループは習近平トラックを走らせて労働党に投票しないように呼びかけている。

2024年に退任した自由党モリソン首相は引退演説で「中国に騙されるな」と演説を行った。つまり労働党を牽制しているのである。一方で根強い反中感情が残る中、本音では中国との関係を修復したいアルバニージ首相は2023年11月に中国を再び訪問している。現在の日本ではオーストラリアは「自由で開かれたインド太平洋陣営」でありQUADの有力な参加国として理解されている。だが、実際には中国との関係修復の機会をうかがっている。中国の市場は政治家にとっては極めて魅力的な「禁断の果実」でもある。だがオーストラリア国民の間にある中国に対する警戒感配膳根深いものがある。

中国は一連の政治介入を全て否定している。

今回の中国企業の透かし問題を見ると、岸田政権はこの問題のインパクトを軽視しているようだ。だが構図としてはオーストラリアに似ているところがある。

  • 野党は与党との違いを打ち出すための強い政策が欲しい。立憲民主党の場合はそれが再エネ(太陽光パネル)だった。
  • 一報で与党も野党の得点になりそうな政策を内包しておきたい。この場合河野太郎氏(党内では進歩派・リベラルとされる)と岸田総理(やはり右派リベラルと位置付けられる)がこれにあたる。

同じ自民党で経済安保に詳しい小林鷹之氏は「これは自民党の総意ではない」として否定ていることから党内にも警戒感を抱く人はいるのだろう。

今回音喜多駿氏は中国の太陽光発電の関与について指摘していたが、実は奈良県では維新の知事がメガソーラーに執着しており、こちらは自民党と公明党の反対で予算が通らないという事態に陥っている。SDGsというスローガンの下で中国の影響はかなり広く浸透しているのかもしれない。

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