アメリカの株価が近く景気後退局面に入るのではないかという観測をロイター通信が出している。これはバブル崩壊ではなく「単なる調整だ」という説明である。金融市場関係者はアマチュア投資家たちのパニックを恐れているようだ。スマホ一つで預金の移動や株の売買ができてしまうため去年の今頃はデジタルバンクラン(デジタル取り付け騒ぎ)も起きていた。群集心理に巻き込まれれば単なる調整局面ではない極端な動きも予想される。だから事前に呼びかけておこうということなのだろう。
ロイターがいくつか記事を出している。
どちらの記事も現在の株価の高騰には企業業績の裏打ち(好調なファンダメンタルズに起因)があるためバブルではないと指摘している。ただし最近は急激な株価上昇が起きているため近く調整局面に入るのではと予測する人が増えてきた。株価下落のきっかけが何になるかはよくわかっていない。だがちょっとした経済指標の発表がきっかけとなり引き起こされる可能性がある。
ただし個別銘柄を見ると懸念もある。一部の株価に資金が集まり過ぎている。
現在S&P500の時価総額に占める上位10銘柄の割合は33%に達しており一部の株式に過度に集中している。こうした株式は値を崩しやすい。一部の株に資金が集中しているため極端に過小評価されている小型株も多いという。
ランキングによって安易に情報をとる人が増えているのだろうが、有名だからという理由だけで株を買っているランキング・マニアの人はポートフォリオを見直すべきだ。
金融市場関係者が心配しているのは「投資家がおじけづいた」時だ。投資家たちが群集心理に基づいて株式を手放し始めるとパニックが起こり挙動を予測することはできなくなる。このため市場関係者たちはあらかじめ「ちょっと下がることはあるがそんなに心配する必要はない」と注意喚起している。心の準備さえしておけばいざという時に群集心理に巻き込まれずに済むということだ。
資産運用会社マーサーのオラオル・アガンガ氏は「2008年、20年、22年のような最大規模の資金引き揚げは通常、大きなショックによって引き起こされる。しかし、当社は常にパニック売りには自制を促している。特に年金、退職金口座、基金といった長期投資家クライアントに対してはそうだ」と語った。
2023年の3月にはデジタルバンクランが起き銀行が破綻している。日本ではデジタル取り付け騒ぎと翻訳された。スマホで簡単に資金移動や株式売買ができてしまうため噂によって極端な動きが起きやすい市場環境ができている。
アメリカ合衆国は株式もスマホで「宝くじ感覚」で売買できてしまうため調整局面にどのような動きが出るのかは予想ができない。このためあらかじめ「調整局面」入りを予告しておき、いざという時にクライアントが動揺しないように呼びかけているのだろう。
日本ではまだまだ投資は特別な人たちだけのものという認識が強い。だが、最近テレビ局が盛んに新NISAの解説を行なっており、株価40,000円のニュースに心を動かされ新規参入した人たちも増えているのではないかと思う。日本の投資環境も徐々にではあるがアメリカ化しているのかもしれない。
また一週間ほど前には福岡銀行が破綻するのではないかというデマも飛び交った。銀行側はデマを流した人たちに訴訟も検討しているそうだがすでに投稿は100万回以上再生されているそうである。
投資教育や情報リテラシの徹底に課題が残る投資環境になりつつあると言えるだろう。