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マッドマンセオリーによる政党ビジネスの破綻処理が成功 旧N国党(みんなでつくる党)が破産

政党ビジネスという新しい形のスキームが破綻した。旧N国党(現在はみんなでつくる党という名前だったそうだ)の破産が決まった。党首の座を巡って立花孝志氏と大津綾香氏が対立していたというのが表面上の対立点だが、実際には持続可能性のないスキームからの出口戦略だったと考えられる。

心理学的な駆け引きに長けた立花孝志氏側の勝利ということになりそうだが、後には債権者(300人)が取り残されることになった。立花孝志氏はこれら300人の債権者から追いかけられる立場になっても不思議ではなかったがなぜか「彼らの代わりに戦う闘士」ということになってしまっている。ニクソン大統領も信奉していたマッドマンセオリーの成功例といえるのかもしれない。

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元々は政党助成金を使ったビジネススキームだった。これは当事者たちも認めている。NHK党の主張は当選者が1名出れば政党助成金がもらえるので選挙に候補者をたくさん出しても「元が取れる」というものだった。このためまずは小口の寄付者を募り候補者を立てて露出を増やし、比例区での当選を目指すという戦略が採られた。

大手マスコミはこの動きをまともに取り上げなかったが「どの政党に投票しても自分達の収入が上がるわけではない」と考える人たちの心を掴んだ。結果的にこのスキームは当たりN国党は各得票数で政党要件を満たし政党助成金の支給対象となった。

しかしながら立花孝志氏はこの頃からスキームの切り離しを考えていたのではないかと思われる。露出を増やすためには多額の寄付が必要だが実際にもらえる政党助成金の額は限られる。またこのスキームで得られるリターンには自明な限界があった。

立花氏は突然代表権と党務を大津綾香氏に譲った。ところがなぜかその後で党の運営をめぐって内紛が勃発。大津綾香氏との間に代表権をめぐる争いに発展してゆく。

立花孝志氏の手法は極めて天才的なものだったと言えるだろう。

まず、大津綾香さんという実務能力がなさそうな人を選ぶ。次に立候補という軽い選択肢を与える。大津さんが片足を突っ込んだところでさらに党務という重い責任を負わせる。これは「フットインザドア」として知られる営業テクニックだ。さらに、責任を肩代わりさせつつ時折政党に対する執着を見せることによって大津氏側の執着心を高めていった。代表権をめぐる争いの中で大津氏側には盗られては困るという感情が芽生えていたはずである。こうして結果的に責任を全て大津氏に追わせることに成功する。

さらに、ニクソン大統領やトランプ前大統領を思わせるマッドマンセオリー(狂人理論)も用いられた。一貫性がなく何をしでかすかかわからないという手法だ。ニクソン大統領の精神状態は不安定だったとされている。つまり普通の人がこの狂人理論を採用しようとしてもどこかで破綻してしまうだろう。実際にこれが成功するのは「一部の限られた」人だけに与えられた特権なのである。

総務省は一時どちらの側にも代表権を認定していなかったがのちに大津さん側の代表権を認定したようだ。だが代表権をめぐる紛争自体は継続中であった。そんな中、所属する国会議員2名が政党を離脱してしまう。結果的に大津さん側には負債だけが取り残され政党から政治団体に転落してしまった。これが今年1月10日の出来事だったという。

この時も表面上、斉藤健一郎氏は11億円の党の債務返済を第一に考えていますと表明しており「支援者のために最後まで戦っていますよ」という形を作っていた。1月16日に離党を表明した時も「大津氏側が8000万円を隠している」として大津氏を非難していた。債務を大津氏側に負わせて自分達は無責任な彼女と戦っていますよという一貫したメッセージを発しし続けているが、どこまでが計算でどこまでが破綻していたのかがよくわからないという状態になっている。

この対立の2日後には立花孝志・斉藤健一郎氏側は債権者として民事再生法の手続を起こしていると報道された。民事再生法が適用されてしまうと小口債権者の資金回収は極めて難しいものとなることはわかっていたはずだが立花孝志・斉藤健一郎氏側は債務者ではなく債権者として振る舞うことができるようになる。結果的に自分達は誠意を持って最後まで戦ったが大津綾香さんのせいで債権回収ができなくなりましたと主張することができてしまうわけである。

朝日新聞のまとめによると今回の騒動では300人が債権者になる。去年も政党助成金を受け取っているはずだがそれが今どこにあるのかはよくわかっていないようだ。大津綾香さんは抗告すると争う姿勢を見せている。もともと立花孝志氏のちょっとした依頼から始まっているはずだが、完全に没入させられており、最終的には自分の人生をかけて政党を守るという心理状態になっていることがわかる。

立花孝志氏は今後大津さんと大津さんを支援した人たちと戦う姿勢を見せている。あくまでも300人の債権者たちの代弁者として振る舞うようだ。「これまで大津綾香を支援した人は覚悟しておいて下さい」とSNSのXで宣言をしている。あくまでも返済義務は大津氏と大津氏を支援した人たちの側にあると訴えるつもりなのだろう。

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