ざっくり解説 時々深掘り

成田悠輔氏もびっくり? フランスのマクロン大統領が「人生の終末法」を支持

SNSのXで成田悠輔氏が炎上している。過去の「老人集団自決」発言がキリン氷結無糖のコマーシャルをきっかけに再炎上しているそうだ。そんな成田さんもびっくりするかもしれない法律がフランスで議論されている。安楽死を認める「人生の終末法」である。カトリックが強いフランスでは長年タブーとされてきたが一歩前進した。マクロン大統領は法案を5月にも議会に提出すると表明している。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






成田悠輔氏は過去に「日本の老人は集団自決すればいいと思う」と発言し炎上ことがある。のちに成田さんは「SFであれば騒ぎにならないのに」という趣旨のコメントをしていたと思う。いずれにせよ日本ではこの手の話題は道徳的・政治的にはタブーとなっており議論が進まない。

議論が進まない分だけ「表立って意見が言えない人たち」の意見は過激化しがちだ。現在では膨らみ続ける医療・福祉負担を誰に押し付けるのかという議論が進展している。普段政治的意見を表明しない人たちや表明できない人たちの中には高齢者に対してかなり過激な意見を持っている人が大勢いるだろう。自分達は報われないのになぜ高齢者ばかり優遇されるのだという屈折した気持ちを持っている人が大勢いる。

アメリカのトランプ大統領はこうした表に出せない政治的に正しくない発言を掬い取ることで人気を集めている。抑圧された「政治的に正しくない」思想が社会を破壊しかねないという恒例だ。将来、日本ではこうした扇動者が出てこないとは言い切れない。キャンセルカルチャーは却って過激な意見を涵養してしまうということも知っておいた方がいいだろう。

ヨーロッパでは安楽死に関する議論が進んでいる。表向きは「個人に尊厳と選択肢を与えるための議論」ということになっており医療費削減や医療リソースの効率化といった話は出てこない。

また、カトリックが強いフランスにおいて特に安楽死はタブーとして扱われることが多かった。だが、最近この流れが変わりつつある。中絶の権利が女性の権利として憲法に明記されることとなった。フランスで脱カトリックが進んでいることがわかる。カトリックが強いポーランドやアルゼンチンなどでは中絶に対する風当たりが強くなっており脱カトリック化したフランス人も「自分達の国にもこうした揺り戻しがあるかもしれない」と考えているのだろう。だから取り上げるのが難しくなるように憲法に書き込んだのである。

そんなフランスでは安楽死に関しても議論が進んでいてマクロン大統領が「人生の終末法」を支持すると表明した。5月ごろの法案提出を目指すとしている。

議論の進み方には疑わしい点もあるのではないかと思う。マクロン大統領は国民の猛反発を押し切って年金改革を進めてきた。延命措置が医療高騰につながることは確かである。経営効率化を目指す病院側が「もうそろそろいかがですか?」と患者に安楽死を迫った場合にそれに抗うことができるのかという問題もありそうだ。提出予定の法律では医療チームが「自殺幇助を決定」する権限があり患者は異議申し立て権だけを持っている。

また「人生の終末」といういかにも修辞的な表現も気になる。罪悪感を抱えた人はきれいな表現に頼りたくなるものだ。

フランスにはフランスなりの事情と背景があるのだろうが、これが仮に日本に持ち込まれた時に何が起きるのだろうかと考えてみた。

今でも医療・福祉負担を押し付けあっているような状態で岸田政権は負担に関する議論を曖昧にしたままで枠組みだけを成立させようとしている。仮にこれがさらに進展し「今までのような延命治療は維持できません」となった時「個人に尊厳ある選択肢を与えるべきだ」という議論が出てくることは十分に予想できる。

特に日本人は「社会のお荷物になりたくない」「周りからの圧力に弱く個人の意見が言えない」という人が多い。つまり社会的事情や病院の経営などの経済事情からくる圧力に屈して「栄誉ある終末」を選ばされるという人が出てくるだろう。

現在のキャンセルカルチャーに依存するような反対意見でこの問題に太刀打ちするのは難しいのだろうと感じる。日本人は変化を嫌うが「もうどうしようもない」となってしまうと極端な選択肢を選びがちだ。フランスのような議論展開にはならないだろう。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です