今、ガザ地区では大勢の人々が飢え死にの恐怖と闘っている。西岸では超正統派が主導する治安維持文体によって大勢が殺されているという話もある。これを止めるためには一時休戦・停戦協定を結ぶしかないのだが交渉は難航している。
そんな中バイデン大統領とホワイトハウスは「和平交渉はほぼ合意に達している」との主張を繰り返していた。バイデン大統領の設定した日付はラマダンの始まる3月10日ではなく3月4日だった。実はアメリカ大統領選挙が重要な節目スーパーチューズデイを迎える。今年は3月5日だ。
しかしこの交渉は失敗したようだ。イスラエルの政権内部に緊張がありそれを刺激してしまったもの考えられる。
停戦枠組みについてCNNは「停戦枠組み イスラエルは原則同意、ハマスの回答待ち 米高官」と伝えていた。CNNによればバイデン大統領は改めて1日に停戦を訴えており。ハリス副大統領もガンツ前国防大臣と会談を設定していた。
ロイター通信はガンツ氏の渡航はガンツ氏の意思によって行われたとしている。のちにネタニヤフ氏に無断で渡航したことがわかっている。ガンツ氏とネタニヤフ首相はライバル関係にあるためガンツ氏がホワイトハウスと独自に接触すると却ってネタニヤフ首相を硬化させる可能性があった。会談内容にはパレスチナ自治政府のもとでパレスチナを統治する計画も含まれているがネタニヤフ首相と極右の連立協力者の意見とは異なる。
ガンツ氏とネタニヤフ氏の間には優先順位をめぐって認識の違いがある。ガンツ氏はハマスの殲滅は不可能であろうと感じているがネタニヤフ氏はハマスが殲滅されるまで戦いはやめないと言う方針だ。ネタニヤフ氏は「イスラエルには首相は一人しかいない」と主張しガンツ氏の訪米に不快感を隠さなかった。
アクシオスによればバイデン大統領はかなり焦っているようだ。カタールとエジプトの大統領に電話をした時「とにかく取引をしてくれ」と明確に伝えていたという。ただし3カ国の首脳は「イスラエルとハマスの要求内容には相当の隔たりがある」という認識も共有している。
アメリカ三大ネットワークの1つABCもこの「イスラエルには首相は一人しかいない」と言う発言を伝えつつ、土曜日に1万人の抗議活動が行われたと報じている。司法改革に反対していたかつてのデモよりも小ぶりなものだったそうだが苛立ちは確実に蓄積している。ABCニュースが心配しているのはガンツ氏が政治内閣から離脱する可能性だ。こうなると国民の不満は爆発しネタニヤフ政権に対する抗議活動が激化しかねない。
停戦ディールはもう手の届くところまで来ていると言うホワイトハウスの宣伝は「蕎麦屋の出前」で終わることが多い。
この記事をまとめていたところBREAKING NEWSが入ってきた。タイトルは「イスラエル、ガザ停戦協議見送り 人質生存者リスト巡り」となっている。会談はエジプトで行われるはずだったのだが、イスラエルが参加を拒否した。理由は「ハマスが人質リストの提示などイスラエルの要求を拒否しているからだ」なのだそうだ。おそらくは内政的な事情もあるのだろうが、イスラエルはあくまでも全てハマスのせいだと言っている。
これを受けてハリス副大統領は双方に対して妥協を訴えた。大統領選挙を念頭にバイデン大統領のポジションと矛盾しないように双方をコントロールしようとしたがやはりそれは無理のある戦略だった。結果的にイスラエル政局の不安定さを刺激してしまい本来まとまるはずだったかもしれないものを壊してしまったのだ。ただ今回の件は単にアメリカの政治の失敗と嗤うわけにはいかない。大勢の市民が食べ物を探して一日中歩き回っている。普段なら食べるはずもないサボテンの葉を口にして飢えをしのぐ人もいるなどと伝わっている。