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日経平均が怒涛の40,000円超 「バスに乗り遅れるな」でSBI証券アプリもつながりにくくなるほどの大盛況

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月曜日は朝から景気の良いニュースで溢れた。東京証券取引所が9時に開くとすぐさま40000円を突破した。このニュースを見て「バスに乗り遅れるな」と感じた人がSBI証券のアプリを開こうとして接続障害が起きている。Yahoo!ニュースのコメントを見るとNISAなど株式熱の高まりを受けて過去10ヶ月で200万口座が増えているそうだ。Web側に問題がなかったところからPCではなくスマホで株を買おうとした人が増えていることがわかる。株式投資の裾野は確実に広がっているのである。

ただし依然「これはバブルに過ぎないのではないか」と感じている人もいるようだ。株価上昇のニュースを尻目に「蚊帳の外」という人も多い。一方、アメリカの報道を読むと「バブルだからこそ今乗っておけ」という人もいる。同じ現象でも国によって評価が変わるものだと感じる。

このバブルが崩壊する過程において「わかっている人」と「そうでない人」の淘汰が進むものと思われる。乗り遅れた人、降り遅れた人と「わかっている人」の間で落差が生まれるのである。預貯金さえしておけば誰でも老後の資金が確保できるという時代は終わったと言えそうだが、それが日本人全般にふさわしいものなのかには疑問も残る。

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今回の値上がりは好調なアメリカ経済と生成AIなどの半導体・サーバー需要に支えられている。全体に株価が値上がりしているところから世界中からアメリカを中心とした先進国に資金が逆流しその一部が日本に回ってきていることもわかる。

日本人は従来外貨と株式投資を嫌ってきた。ところがNHKでさえも「取引開始直後に40000円を」などと報じるようになると「いよいよこれは本物である」と考える人が増える。証券会社はクラッカーを鳴らしたりしてお祭り気分だ。「コールセンターでは問い合わせが殺到している」などと伝えている。「みんながやっているなら自分も電話をかけなければ」と慌てる人も出てくるだろう。

ロイター通信も識者の声を伝えている。42000円や43000円という景気の良い話が飛び交っている。

日経平均は初の4万円台を突破したが、通過点にしか過ぎないだろう。ドル建ての日経平均は21年2月の高値を下回っており、海外投資家からみるとまだまだ割安感がある。米ハイテク企業のEPS(1株当たり純利益)も切り上がっていく一方で、それに対する日本株の出遅れ感は明らかだ。日経平均は4万3000円台も視野に入る。(大和証券 シニアストラテジスト 細井秀司氏)

日経平均の4万円の水準は、24年度に5─8%の増益を想定すれば適正価格の範囲内といえ、ファンダメンタルズで正当化できる。モメンタムがついているため、4万2000円程度までスルスル上昇していく可能性もある。(ニッセイ基礎研究所 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾氏)

今回流れに乗った人はすでに投資口座は作ったが投資はまだ始めていなかったという人たちのようである。

このためまだ始めていない人たちは外から複雑な思いでこれをみている。そもそもアプリで株など買えないという人や株の仕組みがわからないために「生活実感と合わないのはおかしい」と感じている人もいるようだ。時事通信は「喜びの一方「いつ落ちるか」 株価4万円突破に受け止めさまざま―東京・兜町と新橋」と引きこもごもの様子を伝えている。特に34年前のバブル景気を知っている世代は「前回は給料も上がっていたのに」と懸念を表明している。

疑り深い人のためにまず懸念材料をNHKロイターの記事から拾っておく。いうまでもないことだが「切り抜き」なので詳細は必ずオリジナルの記事を参照していただきたい。投資に関わる話なので情報収集は慎重に行ったほうがいい。

値上がりが一部の株に偏っている

  • 市場関係者は「日経平均株価は上昇したが、最上位のプライム市場でみると値上がりした銘柄の数は、全体の4分の1ほどにとどまった。(NHK)
  • 半導体関連銘柄に買いが集中しているところは、やや気になる点である。(ロイター)

すでに半導体関連株は割高感が出ている

ちなみにこのPERは日経平均の数字のようだ。NHKにこれについて言及した記述がある。半導体に限っては40倍から50倍というものもあって「濡れ手に粟」状態だ。ただし1989年のバブル期には株価収益率が60倍を超えていたそうでこれに比べればまだかわいいものというのがNHKの見立てである。ちなみに後で出てくるがドットコムバブルの時には48倍というのが全体の平均だったようだ。

  • 上昇スピードの速さには違和感はある。半導体関連など指数を牽引している銘柄に限定すれば、やや割高感が出ている。(ロイター)
  • 上昇スピードの速さには違和感はある。半導体関連など指数を牽引している銘柄に限定すれば、やや割高感が出ている。適正範囲内とはいえ、高めではある。株価収益率(PER)で16倍前後が長続きしたことはなく、24年度の業績がきちんと1桁台後半の増益になるかは確認したいところだ。(ロイター)

アメリカの金融状況に過度に依存している

  • まず、アメリカの株高が続かなければ日本の株高も続かないと思う。アメリカの金融政策については、FRB=連邦準備制度理事会がいつ利下げを始めるか、年内に何回、利下げがあるかが注目で、金利が下がれば株価にとってプラスに働く。(NHK)
  • リスク要因としては、米国の利下げ開始時期が後ずれする可能性が挙げられる。サービス価格のインフレが落ち着いていないことが気がかりだ。(ロイター)

資金が外から入ってきて全体的に株価が上がっている時にはインデックスで投資しておけば間違いはない。おそらくあまり企業業績に詳しくない人が個別に株を選り好みするよりは上昇する確率は高いはずだ。

現在の株高は生成AIによって支えられている。これが今後どのように推移するか知りたいという人は多いはずである。テスラとアップルの例を挙げて説明したい。なぜこの2つを挙げるのかというと歴史的な検証が済んでいるためだ。

欧米で環境問題が重要視された流れを受けて電気自動車への期待が高まった。テスラはこの分野で先行しており自分達でインフラを整備しデファクトスタンダード化にも成功している。株価は2020年から一気に成長を始める。

ところが創業者が他の事業に関心を示すようになると(Twitter者の買収などはその一例だが)株価が大きく下がり、その後は好調と不調の波を繰り返している。現在は中国経済が不調であり中国での売り上げが伸び悩んでいて(「中国経済は崩壊した」とまでいう人がいる)2024年3月4日時点では中国での業績が不振を原因として株価が7%程度下落した。

一方でアップルの成長は2021年ごろに止まっておりその後は伸び悩んでいる。ただ暴落はしていない。アップルの業績を牽引しているのはiPhoneなのだが、こちらも中国経済に依存していた。中国政府がiPhoneを排除すると伝わると一時株価は下落する。かといってその売上を他の国で埋め合わせることもできない。ゴールドマン・サックスはついにアップルの「強い推奨リスト」から外している。

プロダクトライフサイクルで言えばテスラの主力商品であるEVの方が「若い」商品である。アップルはゴーグル型の仮装現実端末などを打ち出しているがiPhoneに代わるような新しい製品を出せていない。

どちらもバブル的景気の恩恵を受けた企業ではある。だが歴史的には彼らの製品は「本物」だったことが証明できている。例えば中国には後発のEVメーカーが多数あったがすでに消えてしまったものもある。雨後の筍のように増えた企業が淘汰されてしまったのだ。

2000年代のインターネットバブルの時にはあまりにもお金を集めるのが簡単だったためさまざまな企業が「雨後の筍」のように乱立した。その後インターネットバブル(英語ではドットコムバブル)が弾けた時に実体のある会社とそうでない会社の選別が行われた。Appleはこの波をくぐり抜けその後も成長を続けた。つまり全体がバブルだったからといってすべての企業が暴落するわけではない。当然と言えば当然だが意外と誤解されやすいポイントだ。

ちなみにドットコムバブルの時のPERは全体で48倍だったそうだ。このロイターの記事は「現在の株価はドットコムバブルの様相」と書いているが2020年に書かれている。

ただ、株式市場全体でみると、PERはドットコムバブル崩壊直後の水準を試している。S&P総合500種の予想PERは最近、02年以来の高水準となる18.8倍を付けた。S&P500ハイテク株指数のPERは22.5倍と04年以来の高水準となっているものの、00年のピークである48倍にはまだ遠い。2020年の数字である点に注意

2020年の記事でも「今の状況はバブルかも」と考えていた人はいた。だがこうした弱気派も今では「今はとりあえず出遅れを解消しなければ」と必死になっている。バブルだとわかっていても乗らなければという人が多いのがアメリカの状況である。

2024年になっても現在の株式市場はドットコムバブルの時に似ているとする観測は多数ある。ただし「やがて崩れますよ」と言っているのではなく、金融政策の動向とは関係なくまだまだ上がるだろうという主張になっている。国によって見方が大きく異なるものだと関心する。

いずれにせよ今はなんらかのバブルの上昇局面になっている。バブル期には誰でも簡単に儲けることができる。問題が起きるのはおそらくこれが崩れた時なのだろう。きちんと勉強した人は状況がわかっていて投資をしているので下落局面でもきちんと対応ができる。だがそうでない人は篩(ふるい)にかけられて今までの資産を失ってしまうことになるのかもしれない。

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