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結局、今の日米の株価はバブルなのか? アメリカの金利高止まりと株価上昇の現在地とこれから

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日経平均の最高値更新を背景にした記事を何回か書いた。主に訴えたかったのは「経済がデフレ期からインフレ期に移行したにもかかわらず岸田政権の見通しが変わっていないのは危ない」という点だ。だがSNSのXを見る限り人々の関心は「結局、この流れに乗るべきなのか?」という点にあるようだ。こんなに儲けましたというニュースも流れる。だが一方で「下手に手を出して損をしたくない」という気持ちも強い。

自分で情報にあたって判断すればいいのでは?と思うのだが、どうも事情はそれほど簡単ではないようだ。人々が迷っている理由は二つあるようだ。第一にこれまでの経済が成長を前提にしていなかったために成長のある世界がどんなものなのか想像がつかない。次に情報が多すぎる。さまざまな情報が飛び交っておりどう整理していいかわからないという人が多いようだ。現在さまざまな媒体が「現在の株式市場」について有料の記事を書いており、株式市況解説はレッドオーシャン化しつつあると言ってもよい。迷っても当然だ。

ここに新しい記事を「投げる」と返って混乱しそうだ。そこで、これまでの流れをおさらいすることにした。つまり今回のエントリーは「わかっている人には当たり前」のことしか書いていない。むしろそんなに単純化していいのか?と不満を感じる人さえいるかもしれないと言った程度の単純なことしか書いていない。つまり、この記事を読んでも市況がわかるようにはならない。だが自分なりにどう情報を整理していいかの助けくらいにはなるかもしれない。重要なのは自分なりに流れを掴み「わかっていることとわかっていないこと」を仕分けすることだ。

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2023年の10月ごろにアメリカの株価が下がっていたことを記憶している人もいるかもしれない。金利上昇局面にあり「景気後退(リセッション)」が起こるのではないかと言われていた。景気後退になれば企業業績は落ち込む。だから株価は下がるはずだ。

だがそうならなかった。景気がそれほど冷え込まなかったのである。そこで再び株価が上昇を始めた。この時に株を買った人はかなり儲けているはずだ。Yahoo!ファイナンスで調べたところ10月23日の終わりが33,272ドルだった。現在のダウは39,069ドルだ。つまりNYダウに連動するものを買った人は17%も儲けていることになる。

そもそもアメリカの経済が短い間に20%近くも上がることはないのだから「上がりすぎ」なのだがこれそのものはバブルとは言えない。その直前にリセッション不安があり株価が落ちていたからである。

ではもうこれで危機は去ったのか?ということになるのだが、実は金利も高止まりしたままなのだそうだ。つまり現在は「金利が高止まりしているのになぜかアメリカの経済が落ち込んでいない」という極めて不思議な状況にある。

次に「CPIショック」が起きた。CPIというのはアメリカの物価のことだ。2月に発表された1月のCPIが予想よりも良かった。つまり、金利が高止まりしているにもかかわらず「アメリカの経済は引き続き好調」というわけである。

アメリカの金融当局者は戸惑っている。

FRBは市場にブレーキをかけているのだが市場には過度の楽観論があり景気は加熱気味である。このため現在の金融当局者の間にはこのまま金利が高い状態(ディスインフレーション)を続けるべきかについて意見が出ている。

ロイターのさまざまな記事を見るとFRBの理事たちの間にも意見の相違があることがわかる。市場はFRBの動向を知りたがっているため連邦銀行の総裁たちの発言がその都度紹介され話題になる。この時に重要なのが「FOMCに議決権を持っているかどうか」である。

ゴールドマン・サックスは「金利の下げは5月から」と予測していたが、これを一ヶ月後ろに下げた。

「まだまだ株価は上がり続けるだろう」と予測するプレイヤーも出てきた。フィデリティのある運用者がアメリカ国債をほとんど全て売ってしまったそうだ。つまりこの人はまだまだアメリカの株価が上がり続けるだろうと見ている。リセッション入りはないとしたうえで「そもそも着陸しないのではないか?」と言っている。まだまだロケットは飛び続けますよというわけである。

人々は利上げは終わると考えており「次の利下げがいつになるか」を予想している。だがフィデリティの運用者が「ロケットはまだまだ飛び続ける」と言っているほど好調だ。サマーズ元財務長官は「次も利上げになる可能性が残っている」と言っている。もちろん可能性としては高くないのだが、仮に利上げが起こればサプライズとなり投資家は動揺するだろう。アメリカの金融はこれくらいよくわからない状態になっている。

ここまでの状況をおさらいすると次のようになる。

アメリカの株価は上がり続けている。だがなぜ上がっているのかはうまく説明ができない。もちろんNVIDAが象徴するAI産業のような「目玉」があることは確かだ。だがAIも実需なのかはよくわからない。この「説明できない」という感覚は非常に重要だ。説明ができない上がり方をしているわけだから当然説明ができない下がり方をすることもある。

ヨーロッパはこの写鏡になっている。

アメリカは何らかの理由で世界からのマネーを引きつけている。こうなっては困るというのがヨーロッパの中央銀行の立場だ。このため高い金利を維持しつつ何もしないという政策をとっている。これをオランダ語でニクセンというそうである。アメリカの状況を見て「ブレーキを緩めるとアメリカのようになる」と考えているわけだから、アメリカの状況を制御不能だと見ているのだろう。

当然、ニクセンには副作用がある。ヨーロッパの経済は不調だ。ドイツもイギリスもこれから景気後退期に入るかすでに入った可能性がある。政府の補助金が引き揚げられたことで農民の生活が苦しくなっていて各地で激しいデモが起きている。特にディーゼル補助金がなくなるドイツとフランスの農民デモは「反乱」と言ってよいほどの激しさになっている。

ではアメリカの経済はこれまでのように飛翔し続けるのか。

いくつかの危険な兆候が出ている。金利が上がったなかで借金をしている人たちがいる。アメリカ合衆国は資産さえあればクレジットスコアが上がり借金ができるのだが2022年と2023年の借金は条件が悪くなっていて今後これらの借金が返せなくなる人たちが出る可能性がある。アメリカの家計の負債はたびたび問題になるのだがいまだに弾けたというニュースがない。また商業不動産の差し押さえも増えている。

さらに具合の悪いことに大統領選挙が始まっている。民主党政権は補助金を使って経済政策を行う傾向にあるのだが、共和党がこれらの補助金をブロックしている。このため補助金を受け取れなくなる人や高騰した学費ローンの返済に苦しむ人たちが出てきている。共和党が妨害を続ければおそらく少なくない人の家計が破綻することになるだろう。

バイデン政権は学費ローンを減免するとしていた。だが最高裁判所はこの決定をブロックしてしまう。バイデン政権は新しい政策として10年以上返済している政府プランの参加者はもうローンを払わなくて良いという新しい政策を打ち出した。

ここまで辛抱強く読んだ人の中には「ほらやはりバブルではないか、株式市場はギャンブルだ」と感じた人もいるのではないか。だが、ここから先が今回の説明の最も難所となる部分である。まず線を水平に引きそのうえに右上に伸びている線を書いてほしい。右上に伸びる線は株価である。ここまでができたら水平の線が右下に傾くように置き直してみてほしい。

全体に金利が上がっているということは現在の現金の価値が将来的に下がるということを意味する。これがインフレである。今回のいろいろな議論をSNSのXで見ていて「インフレ」に色をつけている人が多いことに気がついた。インフレは単に状態を意味していて「いいインフレ」も「悪いインフレ」もない。つまりインフレ=好景気ではない。むしろインフレになると坂を登りきれず脱落する人が出てくる。だが経済全体が好調である限りこれをスタグフレーションとは言わない。

日銀の植田総裁は「日本経済はすでにインフレ状態にある」と国会で宣言している。つまり水平線は右下に傾いている状態になっている。人々が水平(現状維持)を保つためには坂を登らなければならない。つまりインフレ宣言は「今後頑張って坂を登ってくださいね」という意味だ。このインフレを「好景気」と呼ぼうが「スタグフレーション」と呼ぼうが「どうぞご自由に」ということにしかならない。ただ、このまま現預金を持っていても利子がつかない限り価値は下がり続ける。また現在の賃金が上がらなければその価値は将来に向けて下がり続けるということである。

すでに紙とペンを持って絵を描いた人が次に聞きたいのは「では線をどれくらい傾ければいいんですか」だろう。つまり新しい水平を見つけるにはどうすればいいですかということだ。実はこの合意がない。だからアメリカのFRBは金利をどの程度まで上でそれをいつまで維持しさらにどの程度に下げるのかがよくわからない。この予想はたびたび書き替えられその度にニュースになる。

ここまでくると「アメリカのことはわかった」「では日本はどうなんだ」ということになるだろう。そこでやっと岸田政権の批判ができる。

少なくとも日銀の植田総裁は国会で「今の状態はインフレです」と認めた。つまりこれまでの水平はもう水平ではないですねと言ったことになる。ではそれがどの程度のものなのか、あるいは今後どうなるのかについて岸田政権は全く示しておらず、野党にも代替案がない。

さらに言えばなぜ政治がそれを示さないのかもよくわからない。岸田総理大臣はそもそも興味がなさそうなのだが、財務大臣にはそれを言い出せない事情があるのかもしれない。いわゆる「アベノミクス」の出口には痛みを伴う。そしてその痛みは誰にでも平等に降り注ぐものではない。坂を登れる人と登れない人が出てくるためだ。政府の利払は増えるためこれまでのように気前良く補助金が出せなくなる。また市中金利が上昇すれば小さなビジネスは成り立たなくなる。生活に必要な家や車を買えないという人も出てくるかもしれない。

経済は上り坂に入った。これまで平坦な道しか歩いていない人の中には上り坂を登れないという人が出てくることが予想される。しかし政府が「これから上り坂に向かいますから頑張ってください」と注意喚起することはないし登れない人たちにどんな対策を講じるのかも全く明らかになっていない。基本的に当ブログはそれを批判したかったのだが、Xの投稿をみて「そもそもの前段階の理解が広がっていない」と感じた。

日本の状況を簡単におさらいすると次のようになる。

マイナス金利の解除が予想されている。このため一時日米の金利差が縮小し円安が改善されるのではという予想になっていた。これと同時に現在の金融緩和策が解除されるのではという見通しがあった。ただ、副総裁がたびたび金融緩和継続の方針を示していて現在は再び円安方向触れている。およその水準は150円だが、今後130円台後半から140円台前半に向けて落ち着くだろうというのが大方の予想になっている。

もともとのドル円のラインはだいたい110円台前半だった。だがアメリカの金利が上がり始めたことで円の下落が始まる。これは一時150円ラインまで到達したところで下げ止まった。120/150は0.8だ。つまり円の価値はかつては2割くらい高かったということになる。それだけ円の預貯金は目減りしているということだ。

このまま円高傾向に戻るはずと言われたのだが2023年1月からまた上昇が始まり現在は再び150円近辺にある。さらに株価が好調であれば円の価値が高くなってもよさそうだがそうはなっていない。

詳しくはチャートを参照のこと。

円安は金利差によるものとされているが日銀の金融政策が修正された後にどの水準まで戻るかにはさまざまな議論がある。仮にこの円安が単に金利差に起因するものであるならば元の状態に戻ってもよさそうなのだがどうもそうなりそうにない。なぜ元に戻らないのかについてはさまざまな意見がある。

人々の「よくわからない」には2つの種類がある。1つはそもそも合意がなくよくわからないものだがもう一つはそれぞれの関係や流れがうまく掴めないというものである。このうちみんながわからないものは分かりようがないのだから、せめて流れだけでもおさらいしておくべきである。

さらにここにまた別の問題が載ってきたりする。例えば中国の経済が滞っていてチャイナマネーがアメリカに流れている。おそらくこれも株高に貢献しているはずだが、当局が規制すればチャイナマネーは止まってしまう。またサマーズ元財務長官は「政治的に不安定な状態になっているがそれを市場は織り込めていないのではないか」と言っている。つまり、戦争によってもたらされる経済混乱が起これば市場は動揺する可能性があるだろう。さらに気候災害のような問題も今回は扱わなかった。

このように現在の市場はさまざまな変化にさらされており予想がつきにくい状態になっている。こうした市場を「ボラティリティが高い市場」という。現在はウクライナとパレスチナという問題が手付かずになっている。このボラティリティが高い状態はしばらく続くだろう。つまり我々は霧の中で上り坂に向かうということになる。

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