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「とにかく忙しすぎたから」馳浩石川県知事が2週間現地に行かなかった理由が判明

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馳浩石川県知事が2週間現地に行かなかった理由が判明した。「忙しかった」のだそうだ。少なくとも「どうしていいかわからなくなった」からでも「極めて冷たい人」だったからでもなかったことがわかったのはよかった。ただしやはり県知事としての仕事はしていなかったように思える。ポイントになるのは「情報ボトルネック」現象だ。

さらに現在は特有の事情も加わっている。友達同士で喧嘩が始まってしまいLINEでやりとりが送られてくる。中には夢中になって一日中スマホを手放せないという人も出てくるだろう。だが、状況に張り付くと全体像が掴めなくなり却って何が何だかよくわからないということになりかねない。現代の危機対応には現代ならではの危険もあるようだ。トップリーダーたちも我々と同じようにとにかく情報が多すぎるという状況に晒されているようだ。

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TBS系列の北陸放送が「馳浩石川県知事「元日から24時間知事室に滞在して適時適切に指示を決裁していた」発生から14日まで被災地訪れなかった理由語る」という記事を出している。

第一に批判が馳浩知事の耳にも届いていたことがわかる。次にどうやらパニックに陥っていたわけではなかったということもわかった。馳さんとしては仕事をしているつもりだったのだろう。

ただし岸田総理訪問時には能登半島に随行していたことから「忙しくて離れられない」という表現はおそらく正しくないのだろうという気がする。チャットがあるから今後は被災地に行けると言っている。なら最初からそうすればいいのにという気になる。おそらく批判を受けて「ああ現地に行かないとダメだったのだ」と気がついたのだろう。また「24時間執務室にいた」と言っておりさすがに仮眠くらいはとっていますよねという気になる。二週間も寝ていないとすれば逆に判断能力の低下が心配になる。

ただここまではご本人のキャラクターなんだろうなという気がする。オリンピックのアルバム事件でも同じように言い訳が迷走していた。謝りたくない人なんだろうなとは感じるがそこを責めてもしかたない。もう最初の二週間は戻ってこない。

今回の弁明で最も気になったのが全てを馳さんが「決済」しているという点だ。馳さんが情報ボトルネックになっている。状況が複雑になればなるほど意思決定の遅延を招くんことになりそうだ。すでに官邸が一部意思決定を「代行」しており今後は1,000億円の使途を追うことができない予備費が被災地に流れ込む。おそらく今後状況はさらに複雑になる。

前回阪神淡路大震災について書いた時、村山総理は各セクションに決済を任せ「最終的な責任は自分が取る」としていたと書いた。現場仕事から意図的に離れることで全体を見回すことができるようになる。特に危機対応時には誰かがその仕事をやらなければならない。

菅直人総理大臣は福島第一原子力発電所の問題にかかりきりになり現場を混乱させた。初動時に権限分割ができていたのかどうかが非常に気になる。少なくとも初動においてはボールを一人で持った状態で走っていたのではないかと思える。これは災害対応などの危機対応によく見られる間違いといえる。災害だけではなく企業炎上事件でも同じような現象が見られる。

前回の阪神淡路大震災の時に紹介した産経新聞の記事は「地方自治体の幹部たちは責任を取りたくないために首長に全ての意思決定を押し付ける傾向がある」と指摘している。知事にいちいち「これはどうしましょう?」と相談した方が地方自治体の幹部にとっては楽なのだ。この時にトップマネージメントが「最終責任は自分が取るから自分の判断で行動し必要な時だけ連絡しろ」というのはとても勇気がいることだ。ただそうやって現場仕事から自由にならないと仕事量が積み上がり司令塔がパンクする。また全く見当違いの方向に突き進んでしまい取り返しのつかない事態を招くことも多い。

今回の被災地報道ではすでに「現場に情報が降りてこない」との意見が多数寄せられている。2週間もの間全く行政からのアクセスがなかったという地域もある。

今回の一連の弁明で気になる点はまだある。それが「張り付き」現象だ。一日中SNSのXに張り付いているような状態を想像すればいいと思う。適切に権限を移譲しない限りはログチャットに張り付くような状況が生まれるだろう。知事の発言は次のとおり。

また私が視察に行っても、ログチャットで決裁できるんですよ。ログチャットで決裁することが可能な状況になりつつありますので、来週以降、順次、できる限り時間を見て、すべての市や町の視察に参りたいというふうに思っています。

Xでもたまに見る光景だ。一日中Xに張り付いていて自分に飛んでくる悪口と一生懸命戦っている人がいる。だんだんXのタイムラインだけが「世界」のように思えてくるのだろう。そもそも災害時には意思決定の遅延や間違いなどの情報ボトルネック現象が起こりやすい上に、現在では情報から意図的に離れる時間も求められることになる。

今回、阪神淡路大震災と東日本大震災の教訓があまり生かされていないことについて書いてきたのだが、おそらくそれぞれ菅直人総理と馳浩知事の個人批判だという漠然とした印象を持った人もいるかもしれない。

状況を分析する際には個人批判を避けつつ構造的な問題を考える必要がある。「よくやっていた仕方がなかった」では同じことが繰り返されるだけだ。Don’t take it personally(批判を個人的に受け取らないで)ということだ。

Yahoo!ニュースのコメントにはすでに「批判は無視しろ」とする応援コメントがついている

ポイントをおさらいする。

災害の時には誰でも「現場に権限以上できず」「状況に張り付いてしまう」危険性が高い。特に情報が豊富に手に入る現代ではそのリスクは増している。極めて難しいことではあるが、情報や状況から意図的に離れる勇気も必要だ。

全ての人が目の前の状況に張り付いてしまうと状況を俯瞰できる人がいなくなる。トップリーダーこそ勇気を持って各所に権限を割り振り自分はフリーな立場から状況を見る必要があると学ぶためにはまず個人批判の文脈から一度離れてみる必要があるのではないかと思う。

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