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茂木幹事長10億円と二階前幹事長50億円 行き詰まる分配型政治とますます厳しくなる国民視線

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SNSのXに茂木幹事長10億というトレンドワードを見つけた。新しい裏金でも見つかったのかと思ったのだが単なる政策活動費の話だ。「なんだ」と感じた。だが、冷静になって考えてみると政治に縁遠い人にとってみれば裏金も政策活動費もなんだかよくわからないお金が飛び交っているという印象にしかならないのだろうなと感じる。

このまま行くと自民党・公明党政権は中から崩壊することになるだろう。ただ自民党・公明党政権が内部崩壊することにより政党同士の競争が生まれる可能性もある。立憲民主党と維新は自民党よりも効率の良い政党運営をしている。

ポイントになるのは分配型政治からの脱却だ。分配政治が続くと「俺はもらっていないのに」と感じる人が増える。SNS時代では情報が丸わかりになり誰が得をしているのかがわかってしまう。ここから脱却しない限り混乱は収まらないだろう。

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FLASHの記事は「茂木幹事長10億円、二階氏は5年で50億円! 使途公開不要「政策活動費」に批判集中「自民こそインボイス導入しろ」」というもの。大したことは書いていないが、幹事長はだいたい1年間に10億円くらいのお金をばらまいていることになる。何だか物凄く大きなお金が動いているという印象だ。

政治資金規正法は「派閥をなくし政党がお金をコントロールするようになれば派閥同士の不毛な対立がなくなり近代的な政党が作られるだろう」というあまり根拠のない見込みで見直されている。おそらくこの思い込みが問題を引き起こしている。立ち止まって「何か根本からおかしいのではないか」と気がつく人が出てくるまで状況は混乱し続けるだろう。

政治資金の不透明さに怒っているというより「自分達のところに分前が来ない」ことに苛立っている人が多いのではないかと感じるからだ。全員に平等に分配できない以上は分配じたいを見直す必要がある。

今回の安倍派と二階派のパーティー券問題を見ると政党が議員たち全員にお金を配ることが難しくなっていることがわかる。全員の面倒を見ることができないので「自分達の面倒は自分達で見てください」「そのために派閥のパーティーを言い訳にしていいですよ」ということになった。大きな派閥ほど、配下の議員たちの面倒を上がみるという分配構造が崩れていることがわかる。

FLASHの元になった朝日新聞は次のように書いている。政党ごとにずいぶん違いがある。

  • 自民党は14億1630万円
  • 立憲民主党は1億円
  • 国民民主党は6800万円
  • 社民党は700万円(社民は名目を「組織活動費」)
  • 日本維新の会は政党支部から5057万円を支出
  • 公明党、共産党、れいわ新選組、政治家女子48党(当時)、参政党は該当支出なし

聖教新聞やしんぶん赤旗に支えられている両政党とおそらくカンパによって成り立っていると見られる政党にはこうした資金を必要としていない。支持者の上納によって成り立っていて自民党の「分配」とは逆になっている。例えば参政党は大型のイベントを開催し広く資金を集めていると聞く。

興味深いのは労働組合連合や市民運動によって支えられている立憲民主党と国民民主党だ。おそらくそれほど「分配」の必要はないのだろう。特に立憲民主党の「コスパ」の良さが際立つが理由はよくわからない。また日本維新の会もかなり「コスパ」はいいようだ。

このことから、自民党がかなりコスパの悪い政党になっていることがよくわかる。古い議員や古い産業などに縛られており維持費の方が嵩んでいる実態が伺える。

網の目のように張り巡らされた系列が自民党の力の源泉だったがその維持コストが膨らみすぎているのかもしれない。政党は国会議員を財政的に支える。国会議員は子飼いの地方議員を抱える。実際の選挙活動はこの子飼い・系列の地方議員を通じて行われる。さらに地方議員たちの背景には各種の産業団体がある。

このことは朝日新聞の記述を読めばよくわかる。党勢拡大がポイントだ。実際には拡大ではなく維持やメンテナンスに充てられているのではないか。

党幹事長室は取材に「党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うために、党役職者の職責に応じて支出している」と文書で回答した。

自民党幹部の頭の中では「票はお金を出して買うもの」という認識が生まれている。そのことがよくわかるのがリーマンショックやコロナ禍の国民直接給付だった。発想としては少なくとも麻生政権の頃にはすでに存在し「議席を維持するためには何かを分配しなければならない」という気持ちがあった。だが、当然のことながら国民に広く薄く分配してしまうと一人ひとりの取り分は少なくなる。このため麻生総理は直接給付には否定的な考えを示すようになっていった。効率よく票が買えなかったために政権を失ったというトラウマがあるようだ。

過去に学んだ自公政権は近年「自分達に票を入れてくれる組織に重点的にばらまく」方式に転換した。だがこのやり方は世論の批判を集める。特に大きな批判を浴びたのがガソリン補助金だった。「なぜ自分達に直接還元しないうえに効率の悪い方式をわざわざ採用するのか」と批判されている。

しかし、一度染み付いたマインドセットは払拭し難い。岸田総理は人気を回復するために鳴り物入りで「被災地に1000億円の予備費を導入しますよ」と発表してみせた。お金さえ配れば支持が回復するものと考えているのかもしれない。だが「自分にいくら入ってくるか」わからないお金に関心を寄せる人は少なかったようだ。また、用途を追えるようにしておかなければ状況はかなり混乱するだろう。「私たちの元には全く届いていない」と考える人も出てくるだろうが、政権も「一体どこにどれだけ流れたのか」が把握できない可能性がある。

田中角栄総理大臣の人気ぶりからわかるように、自民党政治の成功は「分配」の成功だった。この分配の水路をいかに維持するのかが世襲二世三世の政治家の家業になっている。自民党としては票に結びつく人たちを選別して効率よく給付したい。ところがそのやり方が進めば進むほど「なぜあの人たちだけが」ということになってしまう。SNSが発達すると「俺のところにはお金が流れてきていない」ということが丸わかりになってしまう。こっそり分配していいように発表するという今までのやり方はSNSの発達によって破壊された。

これを払拭する道は二つある。一つは増税などを中止して国民にばらまくという中南米型ポピュリズモ路線だ。もう一つは分配を諦めて支持基盤を手放すという選択である。政策活動費を廃止すればおそらく自民党支持を諦めるところも出てくるはずで、結果的に政界再編と政権交代が起こりやすくなる可能性が高い。

自民党は財政破綻覚悟のポピュリズモ路線を走るか政界再編覚悟で政策活動費などの不透明な支出を見直すかの二者択一を迫られているといえる。少なくともちょっとした「説明」程度では収まりそうにない。

岸田総理は「状況に張り付いた」状態になっており政治の全体像が見えなくなっているようだ。麻生副総裁、菅前総理大臣、森山総務会長、関口参議院議員会長らに「一体どうすればいいと思いますか?」と個別に相談したのだそうだ。会議でみんながいる席で話し合えばいいと思うのだがそれができなくなっている実態も伺える。

岸田総理や幹部たちが「これは全体的になにかおかしいのでは」「間違った方向に進んでいるのでは」と気がつくまで混乱は続くだろう。そのためにはまず状況から離れる必要がある。

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