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自民党がガソリン補助金で守りたいのはこんな人たち エネオスホールディングス経営陣が2代連続でセクハラ解任

ダイハツのニュースに隠れてあまり報道はされないのだろう。エネオスホールディングスの斉藤猛社長が解任された。懇親の場で泥酔し女性に襲いかかったのだそうだ。11月に通報され発覚した。同席していた谷田部靖副社長も解任され須永耕太郎常務も報酬減額処分を受けた。須永氏にも不適切な発言があったそうだが内容はわかっていない。どうやら経営陣に集団セクハラ体質があったようだ。彼らの振る舞いは例外的なものでなく企業風土に根ざしているもののようだ。実は2022年に起きたセクハラ事件の第二章だった。

政治的には「自民党が守ろうとしている人たち」がどのような人たちなのかがよくわかる事例と言っても良い。彼らはお互いに庇いあい自浄作用を働かせない極めて「昭和的な体質」を残している。言い換えれば体育会的隠蔽文化だ。現代基準のコンプライアンス意識がない。

こうした業界慣行が温存されるならば税金の二重取りを業界への補助金で補填するという現在の「業界温情的な」政策の妥当性は再検討されるべきではないかと思う。一言で言えば昭和のおっさん体質の維持をするために無駄な支出をするべき妥当性がない。

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今回の辞任劇の裏側にあった事情は説明されていない。ENEOSは複数の会社が合併してできた会社のためあるいは「この際に特定の企業出身者を排除してしまおう」という狙いがあったのかもしれない。いずれにせよ、今回の事件を起こした人たちは「2022年の反省」と「再発防止」を誓った人たちだったが問題のある体質は維持されていた。

実は2022年8月には杉森務グループ会長が辞任している。セクハラ行為だったと報道されているのが報道を読む限りは限りなく暴行事件に近い。今回の経営陣はこの時に「人権尊重に努める」としていた。

東洋経済によると杉森氏のケースはデイリー新潮で伝えられていたそうだ。日本経団連の副会長を務めた経験があり石油連盟の会長でもあった財界の大物だった。当初企業広報は会長が辞めた事実を隠そうとしていた。石油連盟会長の退任も理由が記されていなかった。だがSNSに乗って騒ぎが広がりついに隠しきれなくなった。被害者は骨折していたそうである。つまり限りなく暴行に近いものだ。

杉森氏は日本石油に入社。日本石油は三菱石油と統合されエネオスになった。さらに2017年には東燃ゼネラルと合併し「ホールディングカンパニー」が作られた。もともと人事担当だったそうだがさまざまな遊びを通じて特約店との関係を深めて出世したとという異色の経歴を持つ。一橋出身で東大出身者に対抗心を燃やし「麻雀では負けない」などと豪語していたという。差別化が図れない石油元売りが勢力を拡大するためには地方の小売業者と「昭和的な」結びつきを強める必要があるのだろう。

メディアはセクハラと書いているが実情は限りなく犯罪に近い。

沖縄の高級クラブのVIPルームでホステスの上半身を裸にし「銀座では普通だ」などと言いながら襲いかかった。翌日病院に行ったところ肋骨が骨折しており全治二週間の診断を受けたそうだ。「その界隈」では事件として扱われたのだろうが全く記憶にない。つまりメディアはあまりこの件を伝えなかった。エネオスといえばおそらくテレビの大スポンサーだ。ある程度の配慮(流行りの言葉でいえば忖度)が働いたと考えるのが自然なのかもしれない。

衆人環視の中で暴行されたのだから逮捕されてもよさそうだが「夜の女性」なので何をしてもいいということなのだろう。暴行で逮捕されたという報道はない。そもそもこれについて疑問視している人が誰もいないようだ。BBC以前のジャニーズと全く同じ構図なのである。

今回解任された斉藤猛氏にはこのような武勇伝は確認できなかった。経営陣が集団で処分されていることから「杉森体質」が払拭できなかったことは想像できる。杉森氏のケースと違いコンプライアンスホットラインにかかってきた内部通報で見つかったため内容はわからないままである。メディアの強い関心もなさそうなのでおそらくこれが検証されることはないだろう。

斉藤氏は杉森氏の性加害問題ではコンプライアンス強化に向けた陣頭指揮をとっていたそうだが、杉森体制で体質を受け継いでいたのだろうと考えると、ENEOSのコンプライアンス改革とは一体何だったのだろうという気がする。これもジャニーズによく似ている。ジャニー喜多川氏の作った文化の中で育った人に内部改革はできない。そして問題が十分に大きくなり制御不能になるまで膨らみ続ける。

国民の間からはガソリン対策としてトリガー条項の凍結を解除したり消費税との二重課税を解消すべきだという声がある。岸田総理は一時国民民主党との間で凍結解除の検討を約束したが、単に国民民主党と連合を取り込みたいとういう政局的動機に基づくものだということがわかっている。

彼らが元売りへの補助金にこだわる背景にも経団連に大きな影響を持つENEOSなどの企業を取り込んでおきたいという狙いがあるのかもしれない。

既に会計検査院が101億円がどこかに消えていると指摘している。おそらく対して遵法意識がない昭和のおっさんたちへの「補助金」になっているのだろうと思われる。パーティー券疑惑を通じて選挙のための裏金を必要としている政治家と女性に対する暴行を「セクハラ」と言い募る人たちが結託しているのが今の日本と言えるのかもしれない。

今後マスコミがこの問題についてどの程度真剣に取り扱うのかにも注目が集まる。ジャニーズとの潜在的な共犯関係の「反省」を盛んに語っていたマスコミだが、CMの大型クライアントである石油元売りに対してはあまり大きなことは言えないのではないかと思う。

今回の記事はENEOSの事例を石油元売り全体に拡大しているという批判を受けるかもしれない。それは確かにその通りだ。だが、ガソリンスタンドのサービスはどこも似たようなものでサービスや商品開発による差別化は難しい。また価格競争も十分には行われない。おそらく元売りはどこも小売を系列化することによって勢力を維持しようとする慣行はかなり一般的なものなのではないかと思う。「昭和的な」とか「体育会的な」などいろいろな言い方はあるだろうが、業界が全体としてこうした傾向を持っているのではないかという疑いはやはりどうしても払拭できない。

こうした旧態依然とした業界が昭和的な政治システムと結びつけ日本全体の効率化を阻害してるのではないか。連日のように報道されるパーティー券疑惑を見ているとそんな印象を抱く。

せめてもの救いは今回の解任が内部通報によって自発的に行われたという点である。ENEOSの中に出身企業閥のようなものがあるのかもしれない。同じ文化を共有する人たちは庇い合いを行い自浄作用を働かせることはないが、複数の閥があると権力闘争を通じて自浄作用が働くことがある。ただこれも想像に過ぎず実際にはどんなメカニズムが働いたのかは不明である。

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