ある国の支配者が別の国を併合したい時に「民主的に選ばれた」と主張することがある。この時に便利に使われるのが国民投票だ。ベネズエラがガイアナの7割を占めるエキセボ地区を狙っている。沖合に次々に油田が発見されているという地域だという。地域住民は無視されており貧しい状態に置かれているようだ。いずれにせよ軍事衝突を伴う領土紛争になる可能性があり周辺国は警戒を強めている。
時事通信に「隣国の7割が「自国領」 ベネズエラ、ガイアナと対立―南米」という記事が出ている。この記事によると国民投票が行われるのはベネズエラということになる。
APの記事を読むと事情はかなり複雑なようだ。ガイアナは元々イギリス領だがインド系が多い。大統領もインド系。ここまでは時事通信にも書かれている。だがAP通信によるとエキセボ地区の住民は先住民である。彼らは政府の恩恵が自分たちには届いていないと感じておりベネズエラで国民投票が行われるようだという情報も耳にしているそうだ。
ベネズエラの目的が沖合の石油だとするとベネズエラは石油が欲しいだけということになる。ガイアナの政治は先住民に関心を持っていない。結局どちらが勝っても石油利益は地域住民には得られない。一方で軍事衝突が起きれば彼らは土地と平和な暮らしを奪われる。
いずれにせよ緊張が高まっておりブラジルは軍隊を動かして状況を注視しているそうだ。つまり住民投票の後で軍事侵攻があるのではないかという警戒感が高まっている。
時事通信はガイアナはアメリカを頼るのではないかと書いているが仮にベネズエラがガイアな侵攻を実施するとアメリカ合衆国は地域紛争に巻き込まれることになる。もともとの仲裁当事国はアメリカ・イギリス・ロシアだそうだがロシアとアメリカ・イギリスは交渉のテーブルにつける状況ではない。さらにバイデン大統領の頭の中は選挙でいっぱいになっていてとても他国の紛争にまで関心が向かわない。ベネズエラにとってはチャンスとも言えるだろう。
一方、ガイアナは仲裁裁定を「最終決着」と見なしている。ジャグデオ副大統領は24日、国益を守るため、外国軍の基地建設など「全ての選択肢がある」と表明。米国防総省の担当者らが近くガイアナを訪問すると明らかにした。
大統領選挙を前にしてバイデン大統領の頭の中は選挙キャンペーンでいっぱいになっており、外交問題に関する優先順位はかなり低くなっているものと思われる。かなりの興奮状態にあるようで、先日も「私は世界を吹っ飛ばすコードを持っている」と自慢げに支持者にジョークを飛ばしたそうだ。原文では「the codes to blow up the world」となっている。ジョークを言われた労働者はニックさんというそうだが、さぞかし驚いたのではないだろうか。
バイデン米大統領は29日、西部コロラド州を訪れた際、核攻撃を命じるための「核のボタン」に唐突に言及し、自身の随行者が「世界を粉々にする暗証番号を持っている」と述べた。
既にウクライナ、イスラエルと2つの地域で紛争が起きている。来年は台湾で総裁選挙が行われる。こうなると世界の他の地域で過去に解決したはずの紛争に火がついてもおかしくない。ベネズエラとガイアナの問題はその一つということになりそうだ。