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ChatGPTのOpenAI社で「意識高い系」の取締役会が敗北 アルトマン氏がCEOに復帰へ

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OpenAIでアルトマンCEOと取締役会の内乱が起きた。ロイターの記事をもとに構図を単純化すると、早いうちから一般に技術を解放してストレステストを行うべきだとするアルトマンCEOと功利的利他主義という考え方を持った取締役会の対立だった。

結果的に技術者とマイクロソフトを味方につけたアルトマン氏が勝利し功利的利他主義の取締役たちからなる役員会は刷新されることになる。理想主義の取締役会が現実主義の人たちに置き換わるということだ。Twitterの取締役会とイーロン・マスク氏の抗争の時にも浮き彫りになったように、アメリカの科学技術発展の背景には一種宗教的な文化闘争がある。

この辺りの機微をうまく理解しないことにはアメリカの成長の源泉を理解することはできないのだろう。

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OpenAIはChatGPTなどの生成AI技術で知られる。「生成AIは素晴らしい技術だ」という賞賛がある一方で、人類がAIを制御できなくなる「シンギュラリティ」というカタストロフィックイベントを招くのではないかと考える人たちもいる。フェイクニュースの蔓延も現実のものとなり各国の政府も対策を迫られている。フェイクニュースは戦争宣伝戦にも利用できるため安全上の脅威とも見做されている。SNSによる戦争が一般化した現代においては早期に国家が取り組むべき重要な課題でもある。

ロイターの記事をもとに構造を単純化すると、今回のアルトマン氏の放逐は「功利的利他主義者」が主導したと言われている。記事によっては「よりアカデミックな」と書くところもある。科学技術は人類の発展のためにのみ注意深く用いられるべきであるという考え方だ。

行きすぎた開発の反動から環境主義が生まれ、格差の拡大から多様な価値観を擁護する平等主義が生まれたように、欧米では今「持続可能性」を資本主義の中に取り込もうという動きがみられる。人間は理性を持って開発を制御すべきであるという考え方である。また、民衆に技術をそのまま公開すると何をしでかすかわからないという選民的な思想もありそうだ。

功利的利他主義の解説をファッション媒体のVOGUEで見つけた。資本主義も積極的に社会貢献に取り組むべきだという考え方は欧米の消費者の間に広く支持されている。アメリカでは民主党がこうした考え方を持つ人たちの支持を集めてきた。だから民主党は若者に人気の党であると言われてきたのである。

ところが、時にこうした取り組みは「意識高い系」として批判の対象になる。民主党の政策が行き詰まっているように理想に目が行き過ぎると現実対処が疎かになってしまう。また「愚かな大衆には難しいことはわからない」というエリート意識も批判されることが多い。前のめりなアルトマン氏の態度に不安を覚えた取締役会がアルトマン氏を放逐すると、従業員たちも離職を仄めかすようになる。マイクロソフトが「アルトマン氏を受け入れる」と表明し株価が大幅に上昇を始めると「理想主義でアカデミックな」取締役会は慌て始めた。

そこで放逐に加わったディアンジェロ氏が取締役会の再編などを条件にアルトマン氏のCEO復帰を提案した。結果的にサマーズ元財務長官、セールスフォースの共同CEOブレット・テイラー氏、ディアンジェロ氏らで新しい取締役会を構成しすることとなった。開発を監視する組織が作られると報道しているところもある。刷新という名前が示す通り功利的利他主義な人たちは退場するようだ。

選ばれた科学者が叡智を持って大衆が使う技術を制御すべきであるという考え方は「正しかった」のかもしれない。だが、新しい技術に挑戦したい技術者たちの好奇心と株価には打ち勝つことができなかった。意識高い系が現実に負けてしまったことになる。

このように文化闘争的な要素があったOpenAIのお家騒動だが日本では背景が語られることはなかった。今回わかったのは一旦技術が公開されると欲望と好奇心によってそれを押しとどめるのは難しくなるということである。国家は安全保障上の問題として新しい技術に取り組む必要が出てくる。

国会では自民党の平将明議員が高市早苗担当大臣に質問をしていた。シンギュラリティの問題などをあげ国として安全保障に絡めた担当部局を作ってはどうかとの提案をしていたが、高市大臣の答弁から考えると「連絡会」止まりの取り組みに終始しそうだ。日本が成長から取り残される中で生成AI技術も「単に次にお金が儲かりそうななにか」程度の認識しか得られていない。可能性は大いにあるが扱い方を間違えると大火災になりかねない。そんな「火」のような技術であるという認識は高市大臣の答弁からは見えてこない。

アメリカでは既に普及段階に入ったライドシェアですらいまだに「違法白タク」扱いになっている。こちらはガスや灯油は危ないからこれからも薪を使おうといっているような感じである。日本語だけで情報を取っているともうこの辺りの最先端技術についての肌感覚を得るのは難しい。

おそらく日本語だけで情報を取ることは既にリスクでしかないのだろう。

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