支持率の下げ止まらずに苦慮する岸田総理が新しい作戦に出た。トリガー条項の凍結解除を萩生田政調会長に指示した。狙いは維新と共に国民民主党を抱き込み立憲民主党などの反対勢力を分断することなのだろう。
常々SNSではトリガー条項凍結解除が要望されることがあったのだから「これで支持率が下げ止まるのか」と考えてYahoo!ニュースを見た。コメント欄は大盛況だったが「どうせ検討だけだろう」とか「なぜ消費税をやらないのだ!」という声が多く聞かれるのみだった。
よく考えてみれば「補正予算案に国民民主党を抱き込む」というような細かい作戦を理解している人はそう多くなさそうだ。依然永田町が「独自の論理」で動いており一般有権者との間に深刻な乖離があることがわかる。
支持率の深刻な低下に悩む岸田総理が新しい作戦に出た。現在の政権は自公政権と呼ばれる。この政権の支持率は低下を続けており補正予算を自公単独で強行採決するとさらに国民が離反すると考えたのだろう。
ここは野党を分断したい。
維新を抱き込むのは比較的簡単だ。万博を擁護すればいい。維新は万博予算が入っているという理由で予算案に賛成することを決めたようだ。中には岸田総理に憲法改正について具体的なスケジュールを支持せよと前のめりにせがむ議員もいた。おそらく議員内閣制の仕組みはよくわかっていないのだろう。岸田総理は9月末までの改正を目指すと答弁した。ただ「目指す」だけで具体的な対策は答弁しなかった。
国民民主党は泥舟からは距離を置きたい。岸田総理が絶対に飲まないであろうというトリガー条項を盾にし抵抗を続けていた。ところが岸田総理が答弁でトリガー条項に触れ、さらに萩生田幹事長に見直しを指示した。これで玉木代表が断る理由がなくなってしまった。ただし検討が始まっただけなので玉木代表は反応していない。補正予算案は今月末までの成立を目指しているため萩生田政調会長に残された時間は多くないが玉木氏としては様子見といった感じなのかもしれない。特に今のところ予算案の賛否についての報道はない。
トリガー条項の凍結解除には自民党からの反発も根強い。今回は政策調査会で検討するようだが、税制調査会は負担増について「言いにくいことも国民に訴えてゆく」としている。仮に「指示はしたがゼロ回答だった」ということになるとああまたかということになってしまう。逆に予算成立の期限に間に合わず「もう用済みだからやっぱり凍結解除しない」ということになってしまうとこれはこれで国民から批判されることになるだろう。
立憲民主党は派閥の資金疑惑に焦点を当てたいところだが今ひとつ迫力に欠ける。おそらく有権者は誰かが逮捕されるなり議員資格を失うなりしないと「細かいニュース」には注目しないだろう。さらにそもそもがしんぶん赤旗と上脇教授の調査にフリーライドしているだけで独自調査ではない。政権側は幹事長に調査と説明を指示し国会審議からは切り離したい考えだ。
ただしこの切り離し作戦がうまくゆく保証はない。自民党の議員たちは検察がどの程度まで操作するかをかなり気にしているようだ。補正予算ではなく本予算審議に影響が出るかもしれない。
岸田政権は基金に16.6兆円を溜め込んでいる。国民が税金の使い方を監視するならばこの基金にはもっと批判が集まっても良さそうだ。岸田総理は「年末までに見直す」としてこちらも議論から切り離そうとしている。一方で予算には新しい基金の積み増しも含まれており、どこまで改革が進むのかはわからない。
岸田政権に対するうっすらとした反発は高まり続けている。だが細かい内容にまで興味を持っている人は少ない印象だ。たんに負担増を予感して不機嫌になっている有権者が多い印象だ。長いあいだ反対してきたトリガー条項凍結解除を突然表明したように、政権もとにかく目の前の辻褄合わせに一生懸命な印象だ。官僚たちは基金に予算を溜め込み「今のうちに取れるだけ取っておきたい」というマインドに支配されているようだ。本来ならば欲しい予算は毎年獲得すればいいだけなのだから、むしろ官僚たちの方が「冬の到来」を予感しているのではないかという気になる。財界も「今はアメリカの景気がいいがそれがいつまで続くかわからない」として賃上げには消極的である。
全体を俯瞰する人が誰もいなくなり、とにかく明日をどうするかというマインドセットが日本中に蔓延している。そして誰もがなぜかあまり根拠がないままに「冬の到来」を予想している。
こうした場当たり的な対応が嫌われるのではないかと考えてYahoo!ニュースのコメント欄を見てみた。トリガー条項の件は共同ニュースの記事がアクセスランキングで一位になっているのだが「ガソリンだけでなく消費税も減税すべきだ!」というような意見が書き込まれているのみだった。中には検討するだけなのではと疑っている人やトリガーの分だけ何か別のところで取るだけなのではなどと想像を膨らませている人もいた。
よく考えてみると「岸田総理が国民民主党をとりこんで野党を分断しようとしている」という図式もあまりにも専門的すぎて有権者にあまり理解されていないのだろう。つまり自民党と公明党が単独で強行採決しようが維新と国民民主党を取り込んで立憲民主党を孤立させようが、おそらく有権者には興味がないことなのだろう。
Comments
“岸田総理が維新と国民民主党を取り込みへ トリガー条項の凍結解除検討を萩生田政調会長に指示” への1件のコメント
ガソリン高騰対策のトリガー条項解除の検討は国民の為ではなく党利党略とはトホホ、岸田には呆れる。