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中国発の化学物質がアメリカ人を蝕む アメリカで社会問題化するFentanyl(フェンタニル)とは

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アメリカのニュースを見ていると、最近Fentanylという言葉を聞くことが増えた。日本語ではフェンタニルと表記されるそうだがTBSは「アメリカでは年間11万人の死者が出ている」という。米中首脳会談でも議題になることが決まっている。

フェンタニル汚染はアメリカで社会問題になっている。主な密輸元はメキシコだが原材料の化学物質は中国から来ているという説があるそうだ。バイデン大統領は国内の麻薬問題を解決するために習近平国家主席の協力を求めており、従って米中首脳会談の主な議題になる。

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アメリカ関連のニュースを見ているとフェンタニルという言葉を聞くことが多くなった。特に説明なしに使われることもある。例えば米中首脳会談のニュースにもこんな記述がある。

また、この会談から米国は具体的な成果を求めていると述べ、軍同士の関係回復や、米国で問題となっている麻薬鎮痛剤「オピオイド」の一種「フェンタニル」の取引対策での進展を期待しているとした。

軍同士の関係回復も麻薬問題の解決もアメリカ合衆国にとっては安全保障問題だ。習近平国家主席は何らかの対策を約束しその見返りとして制裁の解除などを求めるものと考えられる。

中国は言いがかりだと言っているが、中国からアメリカに合成麻薬が密輸されているのは確かなようだ。例えば10月には中国企業が制裁対象になっている。起点は中国だがメキシコに工場がありそこからアメリカに密輸されている。つまり国際的な流通網が整備されつつある。

ロイターが非常に興味深いレポートを出している。ヘロインからフェンタニルへの市場変化をわかりやすくビジュアルで表現しており見応えがある。

2014年10月にメキシコからサンイシドロ(サンディエゴ市の一地区)に10.7kgのフェンタニルが持ち込まれた。これがこの年唯一の摘発事例だったそうだ。ところが2022年には8.4トンのフェンタニルが押収されていて32.5万人が合成オピオイド中毒で亡くなっているという。ほとんどがフェンタニル中毒とみられる。フェンタニルは1959年に発明された静脈用麻酔薬で鎮痛剤として合法的に製造されてきた。つまり原材料は違法ではない。

ヘロインは製造が簡単で安価なフェンタニルに置き換わりつつある。ヘロインはケシを栽培する必要がある。このためには広大な農地をギャングが管理しなければならない。だが、合成麻薬のフェンタニルは都市近郊の小さな「ラボ」で作ることができる。

さらにフェンタニルは少量で運ぶことができる。メキシコからアメリカ合衆国への入国者の荷物を全て検査することなどできないのだから合衆国はフェンタニルの輸入を止めることはできない。徒歩で持ち込む人もいれば、メキシコからアメリカに渡る車に隠したりして運ぶこと人もいる。致死量は2mgだという。

国境での取り締まりが難しいため共和党の候補者の中にはメキシコに軍隊を送り込んだりミサイルを打ち込んだりして製造拠点を攻撃すべきと主張する候補者が多い。トランプ前大統領だけでなくデサンティス氏やヘイリー氏なども軍事力行使を提案している。ロイターは2022年に8万人がオピオイド中毒でなくなっていると書いている。媒体によってなくなっている人の数が全く異なるが、とにかく大勢がなくなっていることだけは間違いがないようだ。

このアイデアはハマスの攻撃に報復するイスラエルの理論に似ている。アメリカ合衆国の憲法には「自衛のために他国を攻撃してはいけない」という規定はないようだ。このためやろうと思えば攻撃も可能だ。だがメキシコとの協力関係が破壊されることは間違いがない上に組織の実態も掴みにくくなるだろう。加えてアメリカ合衆国内部でのギャングの報復も考えられる。完全撲滅ができない限り武力行使は単に状況を悪化させるだけに終わるだろう。

さらにフェンタニルは中南米から流れてくる移民に危険なイメージを植え付けるためにも利用されている。ジョンソン下院議長はバイデン大統領の国境政策は危険な移民の流入を抑えることができていないと主張する。

“And it is terribly destructive to our country in so many ways — six million people-plus have been apprehended at the border, 1.7 million getaways. Fentanyl has just led to an absolute catastrophe; the leading cause of death is overdoses for Americans aged 18-49, human trafficking, enriching the cartels, it goes on and on and on. And all of that traces back to their policy decisions,” he added.

おそらく格差の拡大などを背景にしアメリカ合衆国では麻薬中毒が広がっている。しかし根本的な格差問題は解決しない上にメキシコからの流入を阻止するのも難しい。元々は医療・医薬品なのだから原材料自体は合法的に製造することができる。つまり中国が取り締まりを強化したとしても根本的な問題を解決しない限り麻薬の問題が解決することはない。

加えてフェンタニル対策は習近平国家主席にとっては対米カードのような役割を果たしている。

アメリカが中国に対して経済制裁を強めると「報復」として国内の化学物質規制を緩やかにし原材料の輸入を黙認すればいい。直接の加害国はメキシコである。原材料そのものは違法薬物ではないのだし何がどう加工されるかにまで中国が責任を取る必要はない。

これを称して「現在のアヘン戦争のようだ」という人がいる。当時のイギリスにとってみれば「退廃している清の人たち」が問題なのであって「ビジネスを規制しろというのは筋違いだ」という論理が当時の状況に酷似している。さらにインドを絡めた国際貿易を利用していたという構造もそっくりだ。

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Comments

“中国発の化学物質がアメリカ人を蝕む アメリカで社会問題化するFentanyl(フェンタニル)とは” への2件のフィードバック

  1. 細長の野望のアバター
    細長の野望

    LINEマンガに掲載されている韓国人が描いた漫画のなかで、フェンタニルが含まれる湿布を使って商売する少年たちが描かれていました。いくつかの漫画(自分が知る限りでは2つ)で登場しており、韓国でも社会問題になっているのかもしれません。
    日本でも少しだけ流通があると、以下のサイトで書かれていました。
    https://dot.asahi.com/articles/-/74865こういう薬物が広まって被害を受けるのは、東横キッズみたいな社会から見放された家出少年や貧困層の人間でしょう。薬物、家出少年、貧困層の全てにおいて大きな対策をしないと大変なことになってしまうのではないかと危惧しています。

    1. 文中にリンクがあったので直接飛べるように編集しました。2021年の記事なのでもう知る人ぞ知るという感じになっていたんですね。

      今日本で問題になっているのは若者のオーバードース(OD)だそうです。
      https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1349.html

      あとはじわじわと大麻関係の報道も増えています。こちらも気がかりです。

      コメントありがとうございました。