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アメリカ合衆国でウクライナ切り離しが始まる 下院議長が新提案

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新しく議長になったジョンソン議長が予算を方針を決めた。イスラエル支援の法案を優先して審議する。

ジョンソン議長は29日、FOXニュースの番組で「今週下院でイスラエル単独支援法案を可決に持ち込むつもりだ」と発言。イスラエル支援は「重大かつ緊急性の高い事案だと考えている」と述べた。

バイデン大統領が求めていたウクライナ支援は切り離す。これはどのような意味を持つのか。

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バイデン大統領は今政治的なジレンマに直面している。バイデン大統領を支えている価値観は二つある。それが「民主主義」と「強くて安定したアメリカ」だ。かつてこの二つはアメリカの車の両輪であり共に達成することが可能だった。

アメリカ合衆国には民主主義という信仰がある。これを世界中に広げるのがアメリカ合衆国の使命だ。結果的にこの戦略は成功した。共産主義体制は打倒され中国の市場は資本主義に解放された。アメリカ合衆国は勝ったのである。

だが結果的にこの動きはアメリカやヨーロッパ主導の世界秩序の安定に異議を唱える勢力の勢いを拡大させた。さらに一人勝ちした欧米には良い暮らしを求める大勢の移民が殺到する。結果として欧米では価値観の多様化が一気に進んだ。アメリカの優位性は相対的に弱まり国内にも価値観の変化についてゆけない人や競争から脱落する人たちが生まれることになった。

アメリカ合衆国はヨーロッパで迫害された多様な価値を擁護するという理念のもとに生まれた。イスラエルもまたヨーロッパで差別されていた人たちを中東に輸出することで造られた国だ。どちらも起源はヨーロッパにある。

イスラエルは今でも敵に囲まれている。

だがアメリカ合衆国はその後大きく拡大した。規模と複雑性が拡大すればするほど管理は難しくなる。これが今バイデン大統領が抱えてている問題の核にあるのだろう。

イスラエルのガザ侵攻はこうした情勢変化の一つの表れにすぎないといえる。だがこうした情勢変化が現れるたびにバイデン政権の支持率に大きな影響を与える。10月の支持率は37%だった。イスラエルに一方的に肩入れしたことが支持率低下の要因になったようだ。

かつてはアメリカ合衆国を支えてきた理念も経緯が積み重なると単なる積み上げの集積に過ぎなくなる。バイデン大統領はこれをかろうじてまとめておこうとしている。だが、何かを選べば選ばれなかった方から反発が起きる。それを収めようとすると今度は態度がぶれていると言われる。結果的に亀裂が大きくなり大統領の威信に傷がつく。「世論調査に一喜一憂すべきではない」と言う人もいるが大統領選挙を控えておりこれはかなり難しい注文だろう。

一方で共和党の側には単純化の動きが広がる。複雑な政策を訴えていたプロの政治家に資金が集まらなくなっている。ペンス前副大統領は選挙戦から撤退した。

一方、トランプ前大統領は「イスラム系移民を排除したことは正しかった」として入国規制の復活を訴えている。自身をネルソン・マンデラに喩えるようになったトランプ前大統領は自分を政治的迫害の犠牲者であると位置付け多くの支援と資金を集めているようだ。

だがこうした単純化による切り離しは人々に罪悪感をもたらす。例えば、アメリカがイスラエルに肩入れしガザ侵攻を許せば多くの罪もないガザの子供たちが犠牲になる。すると「あれは単なる数に過ぎず信頼できるかどうかはわからない」とか「イスラム教徒はどこか危ないのだからアメリカの国内に入れるべきではない」という言説に対するニーズが生まれる。「非人間化」は罪悪感から人々を救う痛み止めのような役割を果たす。

だがこれはアメリカ合衆国が掲げてきた「民主主義は人々を解放する」という信念を大きく毀損することになる。複雑化し過ぎた民主主義は受難の時代を迎えている。

CNNはこう伝える。

人数の集計に当たっては、正確さと説明責任を重んじていると主張。犠牲となったパレスチナ人の人間性を消し去ることはできないと述べた。

イスラエルのガザ侵攻は第二段階に入ったと言われる。今後、民間人も含めたガザの無力化が行われるはずだ。ネタニヤフ首相は攻撃を第二の独立戦争と位置付け自身をその先頭に立つ偉大なリーダーだとの姿勢を明確にした。ガザ地区では破壊された通信インフラが一部復旧しわずかながら内部の状況がわかるようになったそうだ。長く苦しい何かが行われており断片的な情報が我々の耳にも入ってくる。だが多くの人々は目を覆い耳を塞ぐだろう。複雑でわかりにくい上に直視し難い現実を含んでいる。

アメリカ合衆国は「ほどほどにしろ」という態度のため攻撃は長期化しそうである。ホワイトハウスは「民間人とハマスを区別しろ」と言っている。できるはずもないのだが「とりあえず言うべきことは言った」とアメリカ国内に向けて形を作っておく必要があると言うことなのかもしれない。

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