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外交的に孤立するイスラエル 軍は「ガザ地区に小規模侵攻した」と主張

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イスラエル軍が映像を公開しガザ地区に侵攻したがその後すぐ撤収したと主張した。単なる国内向けの宣伝なのか大きな侵攻の地ならしなのかはわからない。外交的にはむしろイスラエル包囲網が形成されつつある。アメリカ合衆国は外交的には停戦支持の立場だがバイデン大統領が状況についてゆけていないようだ。ハマスはロシアと交渉し人質の解放について協議している。人質を小出しにして進行を遅らせようとしている可能性があるが、その狙いについてはよくわかっていない。国連安保理では大国同士の批判合戦が続き、イスラエルはグテーレス事務総長を激しく攻撃している。

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今回も関連記事を短く見てゆく。

今回見た中で最もショックだったのがバイデン大統領のこの発言だ。無実の人が殺されても戦争だから仕方ないと受け取られても不思議ではない。アメリカにもイスラム教徒やアラブ系の市民がおり反発が強まっているという。ユダヤ系・アラブ系双方にプレッシャーがかかる状態になっているというニュースもあった。長年続いた「敵味方」分断思考がアメリカに広く浸透していることがわかる。大統領は間違いなくその中心にいる。

大統領はホワイトハウスの記者会見で、パレスチナ側の死者数は民間人犠牲者を出さないよう求める米国の要請をイスラエルが無視していることを意味するのかとの質問に、「彼ら(イスラエル側)は、パレスチナ人が本当の死者数を伝えているとは思えないと言っている。無実の人々が殺されているのは確かで、それが戦争の代償なのだ」と回答。

ただし、この発言の主語を大きくとって「アメリカ合衆国が停戦に難色を示している」と結論づけることはできない。国連ではブリンケン国務長官が停戦を提案するなど大統領の意向とは必ずしも合致しない動きを見せている。またフランスのマクロン大統領もイスラエルの侵攻はあってはならないことであるとの立場を改めて強調した。マクロン大統領は国際的な枠組みでのハマス掃討を提案している。

今回最も目立っているのがグテーレス事務総長の発言だ。次第にイスラエルの人道問題について厳しい発言が増えている。「国際人道法違反だ」ということはつまり「戦争犯罪だ」という指摘である。イスラエルは反発しており国連職員へのビザの発給を停止とグテーレス事務総長の辞任も要求している。ハマス側の暴力から始まった問題がイスラエルのこれまでの姿勢への検証につながるという本来はあってはならない図式といえるのだが、結果的には暴力的な訴えが国際世論を動かしている。「グテーレス事務総長がハマスのテロを正当化している」というイスラエルの指摘には反論した。

ヨルダンの王妃は西側の二重基準を批判。トルコのエルドアン大統領は国連安保理の機能不全を糾弾し「ハマスはテロリストではない」と発言している。イスラム圏のアメリカとイスラエルに対する反発を背景に「西側に対して強く打ち出す力強い大統領」という姿勢を国内的に打ち出したいのかもしれない。

イスラエルでは戦時内閣が作られている。軍は早くハマスを掃討したいという立場である。またもともとエジプトからの警告を軽視し諜報機関もうまく機能しなかったことからハマス掃討を諦めてしまうと軍の離反と野党からの批判を招きかねないという状態だ。ネタニヤフ首相の心理状況は極めて危うい。BBCは「地上侵攻の進め方をめぐっては、イスラエル政府と軍部との間で分断が生じていると報じられている。」として軍とネタニヤフ首相の亀裂を示唆する。

そんななか、イスラエルは陸上侵攻をおこなったと主張した。CNNロイターもイスラエルの報告だけを伝えているがハマス側から攻撃を受けているという報告は入っていない。イスラエル国内向けの宣伝である可能性もあれば「もっと大規模な何か」の前の地ならしの可能性もある。不透明さは増している。戦略的に無謀な攻撃に出ても何ら不思議ではないのだ。

国際社会の世論は目まぐるしく変化している。だが、バイデン大統領がこの動きについてゆけていないようだ。イスラエルへの過度な傾倒ぶりが見られる。パレスチナ側が公表した被害者数が正しいかどうかはわからないと指摘し、戦争なのだから民間人にも犠牲者が出るのは仕方がないと発言した。アメリカ国内にもアラブ系やイスラム系の住民がおり大統領の発言に反発が広がっている。もちろんアメリカ国内にイスラエルを支援する動きもあるため両者の間に緊張が高まっている状態だ。

国連安保理では大国同士の拒否権合戦が続いている。アラブ諸国が即時停戦を求める決議を提出するという段階だが、ここでバイデン大統領が拒否権を発動してしまうとおそらくアラブ諸国の意アメリカに対する反発は強まるだろう。

一方でハマスはロシアに接近している。狙いについては書かれていないが人質を小出しにすることで侵攻を遅らせようとしているのかもしれない。ロシア人などの外国人をどう逃すかを話し合っている。ハマスにはロシア国籍の人質もいるとされているそうだ。また外国に自由に出られるハマス幹部という人たちがいることもわかる。つまりガザを掃討してもハマスが消え去ることはないということになる。

駆け足で関連記事をお伝えした。さまざまな動きが起きており予断を許さない状況が続いている。国際社会が何らかの落とし所を見つけることを期待したい。

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