ざっくり解説 時々深掘り

イスラエルが自国民を近隣イスラム諸国から呼び戻す動き ガザ侵攻は秒読みも嵐の前の静けさ

土曜日はユダヤ教の安息日にあたる。このため、ガザ侵攻に目立った動きはなかった。ハマス側はアメリカ人の人質を解放し、グテーレス国連事務総長がガザを訪れラファのゲートから支援物資がガザに入っている。

だがやはり侵攻は秒読みのようだ。イスラエルはトルコ、エジプト、ヨルダンから自国民を呼び戻している。いざことが始まればかなり大きな反発が予想されるということをあらかじめ予期しているのかもしれない。ラファについて伝えるBBCも「むしろイスラエルはガザのアクセスを遮断しようとしているのでは」と懸念しているようだ。

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AFPが「イスラエル、エジプトとヨルダン滞在の国民に「退避勧告」」という記事を出している。表向きの理由は「エジプトやヨルダンの情勢が不安になっているのでイスラエル人に滞在をやめて非難するように」という呼びかけだ。既にトルコからは大使を引き上げているそうで「有事」に備えた動きが始まっていることがわかる。

おそらくイスラエル政府はことが動けばただでは済まないと予見しているのであろう。既にバイデン大統領の感触は掴んでいるのだから「どの程度の攻撃が許容されるのか」がわかっている。これはかなり苛烈なものになるのかもしれない。

既にイスラエルでは戦争を管理する内閣が作られ国防大臣が「まもなく内側からガザを見る」と兵隊を鼓舞している。

エジプトでは「平和サミット」が行われた。アラブの国が参加しているのは当然なのだろうが、実はEUの大統領とイギリス、フランス、ドイツ、イタリアの代表が参加しているという。日本からは上川外務大臣が出席しロシアと中国も代表を送っているようである。

イスラエルとアメリカからも参加した人がいるようだが「イスラエルの代表は代表ではない」と批判されたようだ。ウクライナの戦争ではロシアが孤立していたが、ここでは全く違った構図が作られている。時事通信ロイターアルジャジーラがそれぞれ伝えている。

事態は急速に動いておりまさに「嵐の前の静けさ」と言ったところである。ただ、当初人々が恐れていた「第三次世界大戦」のような構図は作られていない。むしろ各地でそれぞれの衝突が起きており、衝突ごとに「敵・味方」の構図が違っている。つまり第二次世界大戦のようなきれいな「チーム戦」になっていないのだ。

例えばロシア、ウクライナは主権国家である。パレスチナも主権国家だが西側は認めておらずまた国境の実効支配もできていない。「主権国家」に歯向かう人たちがテロリストということになっているのだがそもそも何が主権国家なのかという合意がないという現実がある。ここに台湾を加えるとさらに事態がややこしくなる。中国にとってみれば台湾は中国の一地域だ。アメリカも台湾を国家とは認めていないが軍事的な結びつきは維持している。これらを一括りにできないため「善と悪」で二分した上で国民に「善を支持するように」訴えるというのがバイデン大統領の執務室演説の要旨だった。

となると、我々も何がいいもので何がわるものなのかが知りたくなる。

WebメディアのREHACQがイスラエルパレスチナの代表を呼んでそれぞれの話を聞いている。ジャーナリストと呼ばれる人たちはやたらと解説や分析を加えたがるがテレビ東京のバラエティ出身の高橋弘樹さんは「とりあえず両方の話を聞いてみよう」という立場のようだ。

今回の出来事の直接のきっかけはハマスが選挙に参加して勝ってしまったことにある。NHKは「ハマスが政権を取ったのでこれでは支援できないということになった」と説明している。REHACQはこの辺りを深掘りして話を聞いている。

双方の意見は驚くほど違っており「これではとても話し合いは不可能なのだろう」ということだけはよくわかる。と同時にこの状況を意図して作り上げた国なり政治家がいるはずだ。パレスチナ側は「西側がハマスを選挙に参加させるように要求した」と主張する。つまり、今回の衝突は人為的に作られた側面がある。

なお「できるだけ分析を避けてありのままの声を届けよう」という高橋さんの姿勢は政治番組というよりドキュメンタリに近い手法だ。だが、政治的姿勢や意見が皆無というわけではない。パレスチナの代表が大使と表現されている。日本はパレスチナを国家承認していないのだができるだけ両者を対等に扱うべきであるという政治的な意図はあるのだろう。と同時に余計な解説を加えることなくありのままを見てもらいたいというジャーナリストとしての意見もあるのかもしれない。

おそらくこれはテレビ局では実現しなかった報道態度である。地上波ではプロデューサの独断で政府が承認していない国の代表を「大使」と呼ぶことはできない。新しいWeb系メディアの可能性を感じるとともに今の地上波・新聞系メディアが超えられない目に見えないが確かに存在する「枠」が提示されている。

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