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バイデン大統領が執務室から異例の呼びかけ ウクライナとイスラエル支援のために国民の団結を訴える

バイデン大統領が執務室から演説を行った。ウクライナとイスラエルを支援することはアメリカの価値観を守るために極めて重要かつ有益な投資であると主張し、そのために国民が団結するべきだと訴えた。しかしながら中東ではイスラエルとアメリカを非難する声が広がり続けている。一方で下院では3回目の投票が行われたが離反者はさらに増え続けた。バイデン大統領の声がワシントンに届いたのかは不明である。アメリカの政治の混乱は次第にアメリカ経済に影を落とすようになり日本の経済にも直接的間接的な影響が出始めている。

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バイデン大統領は執務室から演説を行った。執務室からの演説は極めて異例とされており国民に向けて特別なメッセージを発するために用いられる。世界を「いいチーム」と「悪いチーム」に分けたうえで、ハマスとプーチン大統領を「悪いチーム」に分類。その悪いチームに負けてしまうと大変なことになるので自分と政権に巨額の資金を提供すべきだというのが趣旨である。その後、9.11について触れ「そうはいっても怒りに任せた報復は避けなければならない」と補足的に言及していた。

おそらくバイデン大統領の限界はこの二分的な世界観にあるのだろう。長い間「西側自由主義と東側共産主義」という二分法で世界を見ていた。さらにアメリカの議会も二大政党制であり「民主党対共和党」という図式で世界を見ていればよかったのである。こうした20世紀的な世界観は既に大きく崩れているが高齢のバイデン氏に価値観をアップデートすることは難しい。

演説を聞いていて、バイデン大統領はさながら「民主主義」という宗教を守るために司祭のような役割を果たそうとしているという印象を持った。世界は悪の侵入を受けており今抵抗しなければ悪に負けてしまうという考え方は一神教世界では受け入れられやすいのかもしれない。だが、アメリカは既に多様化しており大統領がアメリカの価値観を代表すると考える人はもはや少数派なのではないだろうか。

また「アメリカ国民はいいチーム」なのだから「道徳的に優れていなければならない」という主張も説得力に欠ける。共和党支持者たちはバイデン大統領と親族の「疑惑」に目を向け、議会では弾劾の証拠探しが行われている。

いずれにせよバイデン大統領の訴えが下院に届くことはなかったようだ。下院では議長選挙が行われている。既に一人が議長選挙から脱落した。次の候補も党内をまとめることができていない。造反者はじわじわと増え続けておりまとまる気配がない。

バイデン大統領はウクライナ、イスラエル、アメリカの国境警備などをひとまとめにしたパッケージを発表し議会に承認を求める考えだ。予算総額は1060億ドルになる。だが、下院は議長が決まるまで法案を審議することはできない。さらに議長が決まってもバイデン大統領の元で議員たちが結束することはないだろう。

政治的に不安定な状況が続く中で米国債の金利がじわじわと上がり続けている。ロイターはFRB議長の発言が原因だとしているが、金利上昇は借入上限の撤廃提案のあたりで始まっているという。投資家たちはなんらかの理由でアメリカの政治に対して疑念を持ち始めているようだ。

このアメリカの金利上昇は当然ながら日本の経済に直接的間接的な影響を与える。まず金利差を意識して一時一ドルが150円まで上昇した。現在は介入を警戒してこの線が心理的な上限になっているが「介入なし」と判断されると一気にドル高が進む可能性がある。ただ上抜けすると今度は財務省が慌てだし「介入」する可能性がある。このため動きそうで動かない状況が続いている。

アメリカ経済はFRB議長の発言と政治的な不安定さの中でかなり騒がしい状態になっている。さらに中東情勢が悪化したことで地政学的なリスクも強まりそうだ。その度にアメリカの株価が激しく上下する。この上下の影響を受けて日本の株価も上下するため「どのあたりが適切な株価水準なのか」も分かりにくくなってしまっている。投資家にとっては難しい時期が続きそうだ。

日本は外国の不安定さに影響を受けない強い国づくりを進めなければならない。このためにはファンダメンタルズと呼ばれる基礎的な条件の改善が急務である。だがなぜか日本の政治の中心課題は「所得税減税」ということになってしまっている。

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