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エジプトの大統領が「パレスチナ難民はイスラエルのネゲブ砂漠に退避させればいいではないか」と主張

パレスチナに住んでいる人たちはアラブ系のイスラム教徒である。近隣のエジプトとヨルダンは同胞を助けてあげるべきだ。だが、エジプトはラファを開けるつもりがない。これはどうしてなのか。欧米のメディアが解説記事を出している。両国はイスラエルが領地を広げるためにパレスチナ難民を周辺国に追い出そうとしているとみているようである。

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エジプトのシシ大統領は「今回のイスラエルの戦争は民間人をエジプトに追い込むことを目的にしている」と指摘した。ヨルダンのアブドラ2世国王もこれに同調し「両国とも難民はいらない」といっている。

ヨルダンやエジプトの懸念にはそれなりの理由がある。イスラエル建国の開始はすなわちパレスチナ難民発生の始まりだった。まず70万人が難民化し1967年の中東戦争で30万人が非難した。その子孫は今や600万人に膨れ上がっていると言われているが、多くがヨルダンにいる。エジプトもヨルダンも今回の衝突をきっかけにした難民流出を恐れている。

JICAの解説を見て驚いた。もともと半数がパレスチナ難民だったそうだが、この20年でさらに人口が倍になったそうだ。

ヨルダンの人口は、2017年の統計で約970万人です。2000年の人口は約480万人であったため、20年足らずで2倍以上に増加したことになります。もともとヨルダン国民の半数以上は、中東戦争を逃れて移住したパレスチナ難民やその子孫であるとされていましたが、それに加えて、2004年のイラク戦争や2011年に勃発したシリア内戦を経て、イラク人やシリア人が多数ヨルダンに流入したため、近年の急激な人口増加につながっています。特にシリア難民の数は、ヨルダン政府によれば130万人を超える(UNHCR未登録者を含む)とされ、そのほとんどはキャンプ以外の街中で生活しています。

エジプトにも900万人の難民がいるとされている。情勢の安定しないアフリカから逃れてきた人たちである。人口は1億人以上いるのだがそれでも人口の1割弱が難民というのだから社会圧迫を想像するのはそれほど難しくない。

イスラエル側は今回の作戦はハマス掃討が目的であり戦争さえ終わればパレスチナ人はガザに戻ることができるといっている。だが、エジプトは信頼していない。このため「イスラエルが南部のネゲブ砂漠にパレスチナ人を収容すればいいではないか」と主張している。このショッキングな発言は抜き出されてTBSでも紹介されている。

エジプト・シシ大統領 ガザ住民のエジプト退避拒否を明言「イスラエル南部の砂漠に住民を移すこともできる」(TBS)

さらに、エジプトは国内でイスラム過激派と長年にわたって戦っている。ハマスが国内の過激派と連絡を取り合うことを警戒しており国境は厳しく管理されている。エジプトはガザにいた反イスラエル勢力がエジプト領になっているシナイ半島からイスラエルを攻撃することも心配しているようだ。エジプトは1979年にイスラエルと関係を修復しているが、ハマスはイランを後ろ盾にするシーア派とも連携をとっている。混乱が加速すればエジプトはイスラエルとの関係を見直さざるを得なくなる。

この一連の事件は次第にイスラエル+アメリカとその他の世界というような図式を作りつつある。特にアメリカにおけるウクライナとイスラエルの二重基準は明確だ。結果的にアメリカを中心としたウクライナ支援のあり方にも疑念を生じさせることになるだろう。アメリカはアメリカで複雑な事情を抱えている。

バイデン大統領は日本時間の20日午前9時に演説を行いイスラエルとウクライナに対する追加支援を求める演説を行うものとみられている。今伝わっている情報ではパレスチナの人道支援にたいして1億ドルの支援が行われパレスチナとウクライナに対しては1000億ドル程度の支援を要請するものとみられているそうだ。

共和党はさらに難しい状況にある。親トランプ派の下院議員候補が一回目の投票で20名の離反者をだした。当初の予定では離反者は10人程度と予想されていたそうだ。二回目の投票では4名が造反に加わり2名が同調に転じたとされている。難しい状況だ。

共和党はイスラエル支援には前向きだがウクライナ支援に反対している人たちも多い。バイデン大統領の作戦は「イスラエルとウクライナを抱き合わせにする」ものだが、そもそも下院議長が決まらないと予算が審議できない上に、決まったとしても抱き合わせ審議は難航するだろうとされている。時事通信は「臨時議長に立法権を与える方向で検討に入った」と言っている。外国の援助も重要だがまずは連邦政府の閉鎖を防がなければならない。

誰もが「ガザ地区の人たちはかわいそうだ」ということはわかっている。だがそれぞれの国や陣営はそれぞれの事情を抱えているためこの状況を直視したくない。例えば「この攻撃はイスラエルが直接ミサイルを打ち込んだものではない」という論調があり病院で大勢の死者が出たというのはどうも怪しいという人もいる。だからイスラエルに責任はないというわけだ。だがよく考えてみれば仮に病院攻撃がフェイクだったとしてもそれによって中東の世論が沸騰していることは確かでありガザの人たちが非人道的な状況に置かれているという事実が消え去るわけではない。そもそも世論を巻き込んだ情報戦という色彩が強くなっているため専門家はあまりこの議論に巻き込まれたくないようだ。BBCは「情報が少なすぎてなんとも言えない」という専門家の声を伝えている。

ただお互いがお互いを非難しあっている時には自分達の持っている罪悪感や無力感を感じずに済む。

イスラエルはハマスを声高に批判し、中東の市民達はイスラエルと背後にいるアメリカを批判する。エジプトとヨルダンはイスラエルが攻撃さえやめれば問題は片付くと言っている。民主党は共和党が民主党に協力を求めて妥協さえすれば問題は片付くといい、共和党では穏健派とフリーダムコーカスたちがお互いに罵り合っているという状態になっている。

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