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一時「岸田総理大臣が所得税減税を英断」報道が出るがなんとなくトーンダウン

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岸田総理が国民の声を聞いた結果として所得税減税を英断したのではないかと読める報道が一時流れた。だが次第に情報がトーンダウンし現在は「検討指示」になっている。どうやら党内にかなりの抵抗勢力がいるようだ。官邸側が仕掛けた「情報戦」という側面もありそうなのだが「細かすぎて伝わらない情報戦ごっこ」という感じだ。おそらくそんな話があったのかと気が付かなかった人も大勢いたことだろう。

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見出しをチェックしていて最初はかなり混乱した。時系列で情報を並べてみたのだがそれでもよくわからない。

最初にご紹介するのはテレビ朝日の見出しである。所得税減税を閣議決定に書き込むとしている。「政府の経済対策 所得減税も明記で調整 来月2日に閣議決定へ」というタイトルだ。総理大臣が調整を始めたということはこれまでの常識では決定したという意味になる。日付を跨いだ共同通信も「首相、期限付き所得減税を指示へ 20日、与党幹部に」となっており、減税を決意して指示を出したと読める。

だが共同通信の内容は次のようにある。「検討を指示した」と書いてあり「一方」の経済対策とは別の問題として扱われている。一体何がどうなっているのか。

岸田文雄首相は、新たな経済対策を巡り、税収増の「還元策」として期限付きの所得税減税を検討するよう20日に自民党の萩生田光一政調会長ら与党幹部に指示する方向で調整に入った。一方、政府は経済対策を11月2日に閣議決定する方針を固めた。複数の関係者が19日、明らかにした。

これら一連の記事が出る前に時事通信が「自民・遠藤氏「減税より給付」 経済対策巡り主張相次ぐ」という記事を出している。遠藤利明前総務会長が抵抗してるようにも見えるが「選挙対策の減税表明ですよね」と野党が指摘しそうなことを言っている。派閥の会合とは言え同じ宏池会系から「こんなことを言われてしまうのか」という気がする。

遠藤氏は岸田文雄首相がインターネット上で「増税メガネ」と批判されていることに言及。「(首相官邸内の一部が)過剰反応している。選挙を意識して減税ということだが、生活に不安を感じる皆さんの支援が優先すべき課題だ」と語った。

このため時事通信が出した記事「所得減税、20日検討指示 「国民へ還元、早急に具体化」―岸田首相」は所得税減税が規定事実であるという印象を持たせないようにかなり慎重な書き方になっている。

  • 所得税の時限的な減税を念頭
  • 首相は政調会長のほか、自公の税制調査会長とも会談すると語った。ただ、具体的な指示内容については「何を申し上げるか、現段階では控える」と述べるにとどめた。

つまり「税制調査会がどう反応するのかはよく読めていない」ということになる。

最後に見つけたのがTBSのYouTubeだった。時事通信が書いているのと同じ内容だが、動画は表情や状況が伝わるので状況がわかりやすい。結局オリジナルの動画ソースを見ないで報道だけを読んでも疑問は解決しないということがわかる。

報道を聞いて詰めかけた記者が「所得税を減税するのですか?」と聞いたのだろう。「色々検討はしているが税調の人たちと何を話すのかは今は話せない」と答えたというのが経緯だったようだ。税調に相談するよりマスコミに先に流れてしまえば税調の責任者は「世論を使った圧力だ」と抵抗するだろう。逆に何気なく官邸スタッフが漏らした一言が一人歩きし大きく響きすぎてしまった可能性もある。いずれにせよ岸田総理の表情から積極性を見出すのは難しい。時事通信の抑えたトーンが正解という気がする。

10月22日には補欠選挙が予定されている。どちらかに負けてしまうと総理大臣の求心力が低下してしまうだろう。これを恐れた誰かが前のめりになったことだけは確かである。岸田総理はこれまでさまざまな支持率回復策を打ち出してきたがどれも成功していない。

野党は総理大臣が選挙前に所得税減税の強い意志を滲ませることで選挙結果に影響が出ることを恐れている。そこで所信表明演説は選挙後の23日に行われることになった。だが、今のところSNSではたいして話題になっていない。これまでの「前科」が積み重なっており最終決定が出るまでどうなるかわからないと国民が学習してしまっているからだろう。

だが少しだけ気になる発言もある。遠藤氏は解散総選挙も牽制している。減税を牽制した会合で年内の解散は難しいと語っている。日経新聞では「減税より給付」はサブヘッドライン扱いになっていて「衆院解散「年内は厳しい」 自民党・遠藤利明前総務会長」がメイントピックだ。

岸田総理がそこまで考えているとは考えにくいが、財政再建派にとっての悪夢はおそらく総理大臣が解散権を使って「所得税減税などの負担軽減を世に問う」解散総選挙に打って出ることなのだろう。仮に今選挙が行われると議員たちが勝手に減税の約束をしてしまうことにもなりかねない。すると、財政再建派は抵抗勢力と見なされ年末に予定されていた防衛費増額のための具体的な増税検討は事実上行えなくなるだろう。

一方で岸田総理が選挙には踏み込まずに「時限的所得税減税」を閣議決定した場合、今度は自民党税制調査会は「所得税を削った分をどこで穴埋めしようか」という議論をしなければならなくなる。去年先送りした分、今年は決着をつけなければならない。

いずれにせよ今回の件から政府与党の人たちは支持率低迷を背景にSNSのネット世論をかなり気にしているということはだけはわかった。

だが議論をまとめて最終決定する人が誰もいない。今回も「強い意向を示したものの実現できなかった」ということになれば、総理大臣に対する期待はますます萎んでしまうだろう。総理が最終的にどのような「英断」を下すのかにますます注目が集まる。経済対策は11月2日に示される予定になっている、という。

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