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中国はイスラム側に付きイスラエル非難にシフト イランも介入を示唆

ハマスの奇襲から始まったイスラエルとガザの諍(いさか)いが新しいフェイズに入りつつある。動向をじっと見ていた中国がアラブとイランに接近しイスラエル非難に回った。イランもレバノンで介入を示唆している。このようにしてアメリカに対峙する勢力は今回の衝突にまた別の意味を持たせようとしている。

中東に石油を依存している日本としてはできるだけ早期に事態を沈静化させアメリカ中心の世界平和を維持する必要がある。だが、そのアメリカのバイデン政権の対応はどこか心もとない。

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イスラエルのガザ侵攻が秒読みに入っている。多くのガザ市民が南に流れたが、病人が残っているためWHOは「死刑宣告」だとして反発している。国連人権理事会も「イスラエルの侵攻はエスニッククレンジング(民族浄化)」にあたるとしてイスラエルに踏みとどまるように求めており国際世論は必ずしもイスラエル寄りではない。とはいえ、イスラエルも戦時暫定内閣まで作ってしまっているため後に引けなくなっている。

そんな国際世論を見て中国は「これはいける」と考えたのだろう。アラブとイラン支援にシフトしている。「国際秩序の守護者アメリカ」のイメージを崩しアラブを味方につけるチャンスである。

中国はBRICSにおいてサウジアラビアとイランの仲介を担っており「アメリカ抜きの和平」を推進したい狙いがあるものと思われる。

中国に接近されるイランだが、こちらはレバノンで「パレスチナ支持」を表明した。アメリカに制裁の口実を与えないように西側のプレスの質問には答えなかったようだ。イランは前面に出ず地域にいる「非政府系武力集団」が黙っていないだろうと示唆する内容になっている。これらの勢力とイランが連携していることは公然の秘密だが直接関与しているわけではないので攻撃対象にならない。ウクライナでアメリカがとっているのと同じ対応と言えるだろう。第三次世界大戦というよりは主権国家と非政府系「国準(くにじゅん)」による間接的な戦争が増えているのが「染み出す戦争」の特徴と言えるだろう。

この動きが欧米の社会問題を刺激する。パレスチナ支持者に対するデモが拡大している。フランスは反ユダヤの言論を規制している。イギリスもテロ組織の支援は犯罪に当たる可能性があるとして親パレスチナのデモに警告を発しているがデモが増えているそうだ。仮にデモの参加者を逮捕・抑圧してしまうと中国などから「欧米こそ政府に都合の悪い言論を弾圧している」と批判されかねない。欧米が一方的に中国を批判していた時代は終わりつつある。

アメリカ合衆国でも似たような状況だ。これまでイスラエル寄りとされてきたアメリカだが若い世代を中心にパレスチナ支持が広がりつつあるとされている。ヨーロッパ系に抑圧されてきた有色人種の共感が集まると同時に、SNSの台頭によって自分達で情報を精査した結果態度を変えた人たち増えているのかもしれない。結果的にイスラエルの戦争犯罪にバイデン政権が手を貸したと言われかねない状態になっている。

これを避けたいバイデン大統領は「政権は人道に最大限の配慮をしている」と国内向けの宣伝を始めた。イスラエルもわざわざ南部に水を送って人道に配慮しているとCNNに報告した。これもアメリカ向けの宣伝活動の一環と思われる。イスラエルにとってアメリカの世論がいかに重要かがよくわかる。多額の資金援助を受けているためアメリカの世論は無視できない。

本来ならばアメリカは態度を一貫させて「民主主義と人権」を擁護する姿勢を見せるべきなのだが国内の支持者向けに説明するのが精一杯だ。アラブやイランなどに対する配慮にまで気が回らないという状況であり、ウクライナ支援の継続も危ぶまれている。優先順位としては、国境対策、イスラエル、余裕があればウクライナといった感じである。そろそろ「ここに台湾が入ったらどうなるのだろう」という心配をし始める時期なのかも知れない。総統選挙が迫っている。

こうした一連の状況は結果的に中国とロシアにつけいる隙を与えている。

習近平体制は国防大臣や外務大臣が失踪するなど外交的と安全保障で迷走していた。中東に石油を頼る我が国としてはぜひこのままアメリカの外交成果に期待したいところである。だが、アメリカの政策は辻褄が合わなくなりつつあり国内向けの説明でいっぱいいっぱいの状況が続いている。安全保障をアメリカに頼る日本にとっては心配な状況が続く。

イスラエルとガザ双方で死者の数が増えている。犠牲になるのは市民たちだ。だが一方で国際社会の力の均衡にもかなり大きな影響を与えていて欧米の市民社会にも影響が出るかも知れない。さらにイスラエル産のガス田の操業が止まりヨーロッパ向けの天然ガスの価格が一時大きく値上がりした。紛争が長引けばヨーロッパの経済にもダメージを与えそうだ。だがこれも皮肉なことに国内エネルギーを売りたいプーチン大統領に有利な状況を作り出す。

ガスはエジプトにも輸出されているそうだ。つまりエジプトにも経済的な影響が及びかねない。エジプトはすでに900万人の移民を受け入れておりこの上ガザの市民220万人は引き受けられないという姿勢である。かといって移民がヨーロッパになだれ込めばおそらくヨーロッパは大混乱に陥るだろう。人道支援を増やして踏みとどまってもらいたいと考えているようだ。国内のユダヤ人たちを中東に移す計画から始まったイスラエル建国だが、逆にパレスチナ難民を引き受けざるを得なくなるかも知れないという皮肉な状況になっている。

よく「第三次世界大戦の危機」などと言われる。だが、おそらくもう何かは始まっていると見た方が良さそうだ。一つの衝突が力の空白を生みこれまで溜まっていた矛盾が噴出するというような連鎖である。

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