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「イスラエル版の9.11」の評価も ハマスの奇襲に世界が揺れる

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イスラエルの祝祭日を狙ったハマスの奇襲攻撃が国際社会に大きな波紋を広げている。おそらくイスラエルの内政は混乱し、中東は不安定化し、イスラエルとサウジアラビアの間の和平交渉も実現が難しくなる。アメリカではこれをバイデン政権の失態として印象付けようという政局的な動きも出ている。日本は中東に石油を依存しているため中東の不安定化は物価などに直接の影響を与えるのだが、アメリカ大統領選挙への影響も我が国の安全保障にも少なからぬ影響を与えるだろう。

なお今回引用した記事の中にはかなり凄惨な現場の写真なども含まれている。残酷な映像を見たくないという人はリンク先には飛ばないほうがいい。YouTubeでは盛んに奇襲されたイスラエルの街の様子や報復空爆の様子が報道されている。日本では今の所あまり扱いが大きくないニュースなのでその落差に驚くかもしれない。

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パレスチナのガザ地区で抵抗運動を続けるハマスはイスラエルとの和平交渉を拒絶している。ハマスはスンニ派だがシーア派の国々と連携しているということがわかっている。今回は背後にはシーア派のイランがいるのではないかなどと噂されている。

イスラエルは報復のためにガザ地区を攻撃し死者数は増え続けている。イスラエルの北からも攻撃が加えられているようだ。イスラエルはシリアのゴラン高原を占拠している。このゴラン高原に対してレバノン側から攻撃が加えられているという複雑な状況だ。

ネタニヤフ首相は「戦争状態」を宣言した。バイデン大統領はネタニヤフ首相への支持を表明している。国連もハマスを批判している。現在の進捗は「イスラエルがハマスを非難した」というところまできているが声明が出るかどうかは微妙な情勢だ。

中東の評価は分かれている。サウジアラビアはバランスをとっているが、ハマスを支持する声明を出した国もある。サウジアラビアがガザ地区にいるパレスチナ人を攻撃し続ける限り、イスラエルとの和平交渉を前進させることは難しくなったと言って良い。

ハマスはイスラエル人の人質もとっている。無秩序にガザ地区を攻撃すれば人質に取られているイスラエル人が犠牲になる。人質には兵士も含まれているが、祝祭日の音楽祭に参加していた若者なども連れ去られた模様だ。中には殺された人たちもいてイスラエル当局は人質の人数を把握できていない模様。

今回の件でイスラエルやアメリカのの諜報機関は事前に情報を得ていなかった。イスラエルは現在ネタニヤフ首相が進める司法改革が続いており国民の間に大きな抵抗が広がっている。イスラエルの諜報機関は国内問題にかかりきりになっておりハマスの動向に注意が向かなかった可能性がある。

ハマス攻撃警告する諜報なし、イスラエル情報の不備に懸念 米(CNN)

事前に襲撃の兆候が全くなかったことからアメリカにも波紋が広がっている。アメリカはアラブからの国内攻撃(9.11)を経験しているため、この出来事を「前代未聞」であると評価するメディアが多く「イスラエル版の9.11」だと表現するメディアもあった。

突然ハマスから奇襲され騒然となった野外音楽祭の映像なども出回っており「9.11」が決して誇張ではないということがわかる。

一方で共和党は今回の件を民主党バイデン政権の失態と位置付けたい。今回の件を政局化する動きがある。

バイデン政権はイランからの人質を解放するために凍結されていたイランの資産を一部解放することを決めた。トランプ氏は「バイデン氏の弱腰」を非難している。共和党の間にも孤立主義か積極介入かで意見の相違がある。ペンス氏は逆にトランプ氏の孤立政策が状況を悪化させたとしてトランプ氏を非難している。トランプ氏や一部候補の掲げるウクライナからの撤退提案が念頭にあるものと思われる。

もちろん、バイデン政権はただでさえややこしい問題をこれ以上広げたくない。このため「イランが関与しているかはわからない」としておそらくは背後にいるであろうイランへの批判を避けた。しかしアメリカ主導の和平提案に対して、ハマス、ゴラン高原のヒズボラ、イランなどが反発していたことは確かだ。

トランプ氏が進めてきたアブラハム合意とバイデン政権が着手しようとしていたアメリカ版一帯一路計画に急ブレーキがかかったことは間違いがない。やはり正解のないパズルだったということになる。

バイデン政権は米墨国境の壁の建設に着手したばかりだ。トランプ大統領肝入りの政策だったため民主党は壁の建設は無意味なものであると主張してきた。だが、年間200万人以上と言われる移民希望者を排除するためにはこれ以外の政策は思いつかなかったのだろう。この件もトランプ陣営から非難の対象になっている。ウクライナの戦況膠着も含めると「外交と安全保障」でトランプ政権が行き詰まっていることは確かであり今後バイデン大統領の再選にも暗い影を落としそうだ。

このように中東とアメリカの週末を震撼させたニュースだったが日本ではそれほど大きな反応は見られなかった。度重なる中東戦争で石油価格が上昇したという記憶を持っている昭和世代は多いはずだが、いまのところは「よくある小競り合いの一つ」と理解されているのかもしれない。またイスラエルにはアメリカがついているのだからテロ組織の一つやふたつくらい簡単に壊滅できるのではと考える人も多いだろう。

このため、おそらく英語メディアで飛び交っている現地の生々しい状況とその衝撃を見ると驚く人も多いのではないかと思う。

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