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アメリカの株価はハイテク株の牽引で回復 バリュー株からグロース株への組み替えが進む

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金曜日にはアメリカの雇用統計を受け長期金利が上昇し再び円安にふれた。金利が上昇すると株の魅力が相対的に剥落するため株価は下がるのではないかと言われている。確かに統計が発表された直後はそのように動いたがその後力強い回復を見せた。どうやらアメリカのハイテク株が牽引役となり株価が回復したようである。投資家がまだまだアメリカの経済成長に自信を持っていることが示された。

ただし2020年から続いてきたトレンドは一旦終了し新しいトレンドが生まれている。それがバリューからグロース(成長)への組み替えだ。

ではこの「グロース」とは厳密には何を指すのだろうか。キーワードになるのは成長余地ではなく回復力・耐性である。英語ではレジリエンスという。

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アメリカの経済は二極化が進んでいる。全体としては景気後退の懸念(リセッション懸念)が高まっているなどと言われるが元気に成長しているセクターと購買意欲の衰えない消費者も残っている。

悲観論が支配しがちな状況だが資産を債権だけでなく安全で着実に成長する企業に移しておきたいという需要も高まっているようだ。これまでは「バリュー株」と言われるこれから成長しそうな株式に人気が集まっていたが、より安全なこれまで成長してきた株に人気が移行しているという話がある。

ブルームバーグの記事によると「成長」より「景気後退に対する耐性(レジリエンス)」が重要視されているということのようだ。つまり債権と並びこれまで成長実績がある株が比較的安全でレジリエントな資産とみなされているということになる。

情報を整理すると、アメリカのハイテク株は「バリューより成長」という大きな流れの中で選ばれているといえそうである。そしてその魅力は耐性・回復性(レジリエンス)であるのだから「バリューよりレジリエンス」資産への移行が進んでいるということになる。

政治的な混乱が続く中でもアメリカ経済は順調に成長している。アメリカの経済指標は「ひきこもごも」の入り混じった状態ではあるが、投資家たちはより明るい兆しに着目しているといえるだろう。

一方のバリュー株も内容は様々だ。ブルームバーグが「バリュー株の相場は一旦終焉のサインだ」と主張する記事を出している。何がバリューなのだろうとその内容を見てみると「日本株上昇を牽引してきた」と書かれていた。つまり日本の株がバーゲンセールだったというわけだ。確かにこれまで顕著だった株価の全体的な上昇の流れが腰折れしていることがわかる。

日本株は特に2023年からは急速なカーブを描いて上昇しており200日平均線を超えて「成長」している。この乖離が大きくなりすぎると調整局面に入るというのがブルームバーグの記事の分析である。「高い成長」の背景にあったのは大きく膨らむ「信用買い」だ。アメリカで金利が高止まりすると借金は難しくなるのだからこれまでバリューを選好してきた人たちも安定的な成長を優先せざるを得なくなる。

とはいえ、ブルームバーグは「急速な値崩れを起こすものではない」としている。投資家たちが落ち着いて調整する余地があるとの含みである。さらにいうまでもないことだが日本株の中にも成長が見込めるものは混じっているはずである。

ピクテジャパンも同意見のようだ。成長期待から株式を買う人と割安な株を買って全体の値上がりを狙う人を分けており、今後は成長期待で株を買う人が増えるだろうと予測している。

例えばアップルの株は中国政府がiPhoneを禁止するのではないかという懸念から下落していた。この時は盛んに「中国依存のツケ」と分析されていた。「閉ざされた世界」とは中国の市場を揶揄する言葉である。iPhone 15の発表の直後も株価は動かなかったうえに中国懸念という状況は変わっていないはずだがアップルの株は9月27日の172ドルを底にして上昇している。つまり個別の業績状況とは違う状況があって株価が上がっている可能性が高い。それがレジリエンスだったと考えれば一応話の辻褄は合う。

Bloombergは一連の状況を次のように説明する。全ての人がアメリカ経済の回復力を全面的に信じているわけではない。だが、今のところ人々は努めて「朗報」を見ようとしている。ファンドマネージャーたちは難しい状況の中でも顧客から預かった資産の価値を上昇させるために何かに投資する必要がある。いつまでも悲観一色でいるわけには行かず次の「ゲーム」を探す必要があるということなのかもしれない。

借り入れコスト上昇に金融市場が十分持ちこたえるほど米景気がなお力強いという見解が、レジリアンス(回復力)を支えている。あらゆる人々にとって、それが基本シナリオというわけではない。だが6日の取引を見る限り、そうした見方が市場のセンチメントを動かす様子がうかがえる。米雇用に関する良いニュースが、株式にとっても朗報と受け止められた。

日米の経済をどう読み、どのようにポートフォリオを組み立てるかというのはあくまでも投資家一人ひとりの判断だ。今回はその一つの参考として「バリューから成長へ」というトレンドをご紹介した。

次のイベントはアメリカの消費者物価指数発表である。FOMCは10月の末に開かれるが、現在は次の12月にもう一度利上げがあるのではないかなどと言われている。またアメリカの下院では議長選挙が行われているがなかなか決着がつきそうにない。現在の予算は45日間の限定予算なので11月中旬に予算が切れるが議長が決まらないと本予算の審議が始められないという微妙な情勢である。

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