ざっくり解説 時々深掘り

ぶっ壊れたまま突き進むアメリカ経済と出口を模索する日本経済の行く末についてあれこれと考える

このところ経済専門メディアの報道を見てもよくわからないと感じることが多くなった。これまでの経済の常識が通じなくなっていると感じる。Reutersなどの記事を読んでゆくと。アメリカの経済が一種の狂乱状態に入っているようだ。つまり経済としては「ぶっ壊れている」ことになる。ただ、このぶっ壊れた状態はしばらく続きそうだ。つまり誰もが「狂乱」だとわかっているのにそのまま踊り続けているということになる。「その先」を考えた投資をしている人もいるが、大半は明日の利益を求めて奔走することになる。

このエントリーに結論はない。単に「この先どうなるのだろうか」ということを考えているだけだ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






PIVOTがエミン・ユマル氏が日本株について語っている。ユマル氏はアメリカの株式の時価総額がアメリカのGDPの200%になっている点に着目し「適正価格は100%程度だろう」と言っている。つまりアメリカの株の価格は1/2に下落するというのが彼の結論だ。今のアメリカ経済はバブルなのだという。

例えばアップルの時価総額はイギリスの株式の時価総額を上回るそうだが、ユマル氏は「これ以上誰にiPhoneを売るのか? 宇宙人か?」などと言っている。

この時は「ああそうなのか」と思った。

これを念頭にロイターを読むと色々なことがわかる。

現在アメリカの家計が抱える資産は過去最高になっている。一方で所得はインフレに打ち勝てずクレジットカードの延滞も徐々に増え始めている。さらに「預金は信用できない」という流れがありMMFなどの金融商品へのシフトも始まっている。金融商品の活況は国債にも波及した。

アメリカの政治状況は不安定になりつつある。政治状況が不安定になると金利が上昇する。これは通常は資金がアメリカから逃避するサインである。だが、金利が上昇すると世界中の投資家がアメリカの国債(特に短期)を選好するようになった。これらの金融商品を購入するのためにはドルが必要だ。ドルの価格は今6ヶ月ぶりの高値をつけているという。

米国債にには人気が集まっているのだが、それは「短期」に限った話だ。長期的にはどうなるかわからないが今は祭りに参加しておこうという人が増えている。だから短期債権に人気がある。

また、原油の先物価格が90ドルを超えた。値上がりしているからという理由で投資家が引き付けられているらしい。つまりバブルなのでいつかは崩壊するということになる。これをReutersはこれを需要崩壊と言っている。もう宇宙人しかiPhoneを買わないことがわかっているのに投資家がApple株を買い続けるのと同じ理屈である。

BOKファイナンシャルのトレーディング担当シニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は、「原油の上昇は、最終的には需要崩壊につながるだろう。ただ、それが90ドルなのか100ドルなのかはわからない」と述べた。

明らかにアメリカの経済は何らかのバブルに入っている。そのバブルを背景にして消費も盛んだ。するとさらに経済が好調なアメリカにお金が入ってくる。政治的な混乱も投資家にとっては好都合である。債権の金利が上昇するので安定した収益が確保できる。債権の価格が高止まりするとドルはさらに上昇する。

アメリカ経済を人体に例えると次のようになるのかもしれない。

患者には活気がある。あまり活気がありすぎると疲れてしまうので弛緩系・鎮痛系麻薬を注入する。普通の人が使うと「麻薬」だが医師が処方している時は麻薬とは呼ばれない。だが、患者は意外と元気だ。医者(FRB)は「よかったよかった」と言っている。

これが「ハードランディングではなくソフトランディングができる」の意味だろう。

ところが、どうやら「患者は何らかの興奮剤を飲んでいるらしい」ということもわかってきた。おそらく医者もそれに気がついている。だからしばらくは弛緩系・鎮静系の麻薬成分を注入し続けなければならない。つまり、この先アメリカ経済はしばらく弛緩系・鎮静系の麻薬と興奮剤が入り混じった状態になることが予想される。

これを普通の人は「健康な状態」と呼ぶだろうか。つまりソフトランディングと経済が健康な状態に戻るでは意味が全く異なる。

仮にアメリカ経済がバブルなのであればそれはやがて萎む。だから早く逃げなければならない。だが実際にはそうなっていない。

原油の価格は値上がりを続ける。おそらくはドルの価格も高い状態が続くだろう。つまり日本政府はガソリン価格や燃料価格に対する支援を続けなければならない。いずれにせよ国民の多くは今まで通りのガソリンへの補助と冬季の電気料金・ガス料金への補助が続くことを期待しているのだから、日本の財政にはマイナスの圧力になる。

読売新聞は「アメリカの経済も好調なので日本もこれまでの金融政策を卒業できる」と表現した。だが実態はおそらくそうではない。

その上で下記のコラムを読む。

植田総裁は直ちにマイナス金利を解除するつもりはない。だがいずれ解除しなければならないとわかっている。その時に長期金利が高騰するのを防ぐために何らかの措置を講じた上で政策変更によって引き起こされるであろうショックが物価や景気の腰折につながらないように約束しようとしているように見える。

さらに、植田総裁はショッキング発言を武器にして円安傾向に歯止めをかけようとした。つまりこれはポジショントークだ。2022年の秋と比較すると現在の財務省は為替介入は行いにくい状態に陥っているようだ。このため「日銀の口先介入」で流れに歯止めをかけようとした。

さらに深読みするならば、まずタカ派的発言で批判を集めておき、結果的に何もしなかったことでハト派的な姿勢を演出できる。現在の植田総裁の発言はリフレ派(つまりアベノミクスを信奉する人たち)からは裏切りだと非難されている。

どうしても市場が植田氏の発言を「単なる口先介入だ」と見抜いた時に何が起きるのかを考えてしまう。財務省には介入をする準備はできていない。さらに年末(晩秋)にかけてアメリカはもう一段階利上げを行うのではないかと思われている。つまり、もう一段階円安が進むことになってしまう。日本の政治状況は燃料需要が高まる冬にこの状態を受容できるのだろうかと心配になる。

もう一つ別の記事を読む。

円安と原油高によって物価が押しあがっている。物価が上昇すると金利は実質的に押し下げられる。すると円安がさらに加速するという循環が生まれるだろう。だが、12月になると主要企業の来年度の業績見通しがでる。仮に業績の見通しが拡大すれば賃上げの原資になる。人手不足も続いており大企業にとって賃上げは優先度の高い課題だ。10月には物価見通しが修正され、結果的に政策修正の時期が早まるのではないか。

田巻氏はアメリカの好調な経済が「賃上げを伴った物価上昇」という状況を作るのではないかと見ている。厳密に言えばバブルなのだろうが「バブルであっても何であっても好調は好調」である。アメリカのバブル的な経済がどの程度続くかはわからないがそこから降りることはできない。国内に好材料がないからだ。

大企業が人材獲得のために賃金を上げそれが金利の上昇につながっても国内の中小企業はそれに追随できない。人材獲得競争に負けるだけではなく金利上昇に耐えられずに倒産する企業も出てくる可能性がある。

日本で賃上げを実現する好景気がバブルだとすると、やがてそれは縮小を始めることになる。とはいえ投資家たちは「自分達の資産を守るために明日どうしようか」ということを考えなければならない。結局はバブルであるということがわかっていても日本よりアメリカということになるのかもしれない。

ここまで考えていてウォーレン・バフェットという人はすごい人だなと思った。アメリカの株が割高・日本の株は割安になっている。とは言え日本国内で完結する企業にはそれほど旨味はない。円安によって沈んでしまうからだ。となると国際的な活躍をする日本の企業が中長期的には買いだということになる。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です