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アメリカの8月CPIは「どっちつかずでちょっと気持ちが悪い」内容に

アメリカで8月のCPIが発表され分析記事が一通り出揃った。FOMCの追加利上げの有無を占う判断材料として注目されていた。9月の追加利上げはほぼないだろうということになったが「もう利上げはやめて良い」と言い切れるほどのものでもなかった。Bloombergは「後味の悪さを残す」と表現している。平たく言えば「ちょっと気持ちがわるいよね」ということになる。日本の金融政策もどっちに転ぶのかよくわからない状況になっており、先行き不透明感を漂わせつつしばらくは現状維持という状態が続くようだ。

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ロイターに出てくる数字は物価そのものではなく伸び率をプロットしている。物価そのものは上がっているものの伸び率は9%をピークにして下がり続けていた。これが2ヶ月連続で上がったのは主にガソリン価格の高騰が背景にありサプライズではない。問題はエネルギーと食料を除いた物価が下げ止まり現状を維持していることなのだそうだ。健康保険料の値上げが決まっているほか10月には自動車業界でストがあるかもしれない。ストが続けば自動車の価格は上昇するだろう。スト決行の有無を決める回答期限は14日だそうだ。

Bloombergの分析もほぼ同じ内容だが、アメリカの消費者が将来を不安視し始めているとの追加情報がある。クレジットカードや貯蓄に頼る人が多いという。今は資産価値が上昇しているのですぐさま困窮する人は少ないのだろうが「財の価格の伸び」は減速しているという。

不安材料はいくつもあるが「表面上はなんとかなっている」という状態だ。ただしコロナ関連の支援が終わり10月からは学生ローンの支払いも再開される。つまり経済的に困窮する人は増えることが予想される。特にキャリアと資産の形成ができていない人は苦労しそうだ。一方でバイデン大統領の支持率はやや上向いた。つまりアメリカの景気はものすごく悪くなっているということはないものの「この先大丈夫なのか?」という人が増えているという中途半端な状況になっている。

今回のCPIは決め手にかける内容で、Blomnergの分析記事では「後味の悪さを残す」と言う表現になった。ゴルディロックス的でないというのは「適切な相場ではない」と言う意味のようだ。つまりどちらかにトレンドが傾くわけではないが快適でもないというどこか気持ちが悪いモゾモゾとした環境が晩秋まで続くことになる。「どっちつかず」という表現がもっともふさわしい。

これは投資家が期待していたゴルディロックス的な数字ではないが、市場はなおレンジ内での取引となり得る。インフレは米金融当局が行動を続けるのに十分なほど高い一方で、「当局の仕事はほぼ終わった」というシナリオを撤回するほどには高くないからだ。

仮にもう一段利上げが行われれば、アメリカの短期国債などの魅力は増すのだから円安要因となる。これは先日の「勉強用」分析記事でご紹介した通りだ。

この頃にはおそらく岸田政権の経済政策がまとまっている。ロイターのまとめによると「コアになる閣僚=財務大臣と経済産業大臣」が変わらなかったのだから、経済政策には大きな変化はないだろうということになっている。

実はこちらもどっちに転ぶのかがよくわからない展開になっている。支持率が低く安定すれば国民の気をひくために大胆な経済政策が必要になる。これは財政再建と金融政策の正常化にはマイナス要因だ。一方で日銀が円安対策を急げば逆に政策変更が前倒しになる。つまり市場が予想するより早く金利が上昇を始めることになる。つまりこちらも「どっちに転ぶのかはよくわからない」というモヤモヤとした状況のようだ。

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