ざっくり解説 時々深掘り

岸田政権の「女性閣僚増」は「世襲閣僚増」でもあった

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

岸田政権の内閣改造が終わった。当初の予定通り閣僚を大幅に入れ替えることで「変わった感」を演出する狙いがあったのだろうなどと分析されていた。ロイターは核になる閣僚は変わらなかったのだから株価や経済政策に大きな変更はないだろうと見ている。特に顕著だったのが女性閣僚の大量増加だ。内閣改造の内容を詳しく見てみたい。すでに一部で指摘が出ているがそろって育ちの良さそうな「有名な議員の娘さん」が起用されている。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






まず政府の側の小渕優子氏をみておきたい。茂木敏充幹事長を留任させ次の総裁選挙に出にくい状態にした。メディアから拾った「岸田総理の狙い」は次のとおりだ。

  • 女性を選挙の顔にすることで女性有権者にアピールする。
  • 故青木幹雄氏や森喜朗氏の意向を聞き入れることで党内に配慮した。
  • 茂木敏充氏を牽制し経世会の分断を図った。

故青木幹雄氏や森喜朗氏が小渕優子氏の活躍を期待するのは故小渕恵三総理大臣の恩に報いるためであるとされている。先代の恩に報い血筋を重要視するというのはいかにも昭和的な発想だが、こういう昭和的な感覚を持っている人は「お父さんに世話になったから娘にもよくしてやろう」と考える可能性は大いにある。つまり岸田総理は「お父さんに世話になった人たち」を支持基盤に引き入れようとしている。

なお「疑惑」の木原誠二さんは政調会長(萩生田さん)と幹事長(茂木さん)の元に代理として送り込まれる。時事通信は「首相官邸と党の緊密な連携を図る」と書いているが「何をしでかすかわからないので見張らせておく」のではないかなどと意地の悪い見方をしてしまう。少なくとも党に下げれば説明責任は果たさなくていいという判断なのだろう。

上川陽子外務大臣の起用の狙いは次のとおりである。

  • 岸田派で一歩抜きん出ている林芳正前外務大臣をスターにしないために同じ岸田派内部から抜擢した。
  • 林氏を派閥に下げて岸田派の拡大を担当させる。気心は知れており連絡役としてはうってつけだ。
  • 上川さんは法務大臣経験者なので答弁は安定している。
  • 首脳外交が主流になっているので外務大臣にはさほど重要な役割はない。

岸田総理が基本的に「勝者を作らないことで自分の相対的な地位を上げる」という手法を好むことがわかる。ただそれだけでは不安なので自分に近い人を使者にして見張らせるわけだ。なお岸田総理が林芳正さんを警戒する原因も長老である。古賀氏は平和主義に対する思いが強く党内基盤を安定させるために安倍派と組んだ岸田総理が許せないようだ。

宏池会会長、林外相が将来的に継承を 古賀誠氏(日経新聞)

次に高市早苗さんを除く3人の女性新大臣についてみてみたい。

土屋品子さんのお父さんは参議院議員を経て埼玉県知事を務めた土屋義彦さん。自民党側で女性活躍推進本部長を勤めた経験があるため「女性活躍」と結びつけたい考えのようだ。だが骨格になる主要閣僚は変えられない上に派閥の意向を汲んで処遇しなければならない人が多く不幸大臣になった。

内閣改造 復興大臣に土屋品子氏起用へ 初入閣(NHK)

地方創生大臣の自見英子さんは自見庄三郎さんの娘。「自見」は選挙ネームで夫は衆議院議員の橋本岳さん。橋本さんのお父さんは橋本龍太郎さん。つまり自見さんは橋本家の「お嫁さん」ということになる。過去に週刊誌が不倫について書いている。コロナ対策で知り合ったということになっているが当時は「略奪婚」などと書かれていた。この人が「こども子育て担当」になっていればおそらく大騒ぎだっただろう。主婦は不倫を嫌う。

加藤鮎子さんは加藤の乱でお馴染みの加藤紘一さんの娘。加藤紘一さんは「加藤の乱」宏池会が分裂する原因を作った人だが今でも信奉者は多いのだろう。これも選挙ネームでご本名は角田鮎子さん。元夫は妻(金子恵美さん)が妊娠中に不倫をしていたとして議員辞職した宮崎謙介さん。宮崎さんは加藤紘一さんの秘書から婿入りして政界での地位を固めようとしたことわかる。なお現在の夫の角田さんは「一般人」だそうだ。

加藤鮎子さんが「セレブママ」的な言動で女性たちから離反されるというようなことがなければ、おおむね可もなく不可もなく。一応最初の報道は「子供に熱があり世話をしているときに大臣就任の打診があった」というものになっている。子育てで忙しくしている一般のお母さんにとっては親近感が湧く話になっている。

加藤鮎子氏、発熱した子どもの世話中に入閣内定の連絡と明かす こども政策担当相で初入閣(日刊スポーツ)

実は同性の女性を現役の子育て世代にすることにはリスクがある。どうしても自分の子育て環境と相手を比べて優劣をつけたくなってしまうからだ。自分より苦労しているのであればいいのだが、少しでも恵まれた点が浮き彫りになれば嫉妬の対象になる可能性がある。

ということで今回は女性に注目して人事を見てみた。岸田総理は周りを地縁・血縁で固めつつ、ライバルになりそうな人を閣内党内に囲い込んだうえで監視役を送ったりしている。また勝者を作らないようにして自分に刃向かってくる人が出てこないように牽制もする。岸田総理自身は第4派閥の領袖に過ぎない。党内的に極めて不安定である状況がこうした「戦国時代的な」人事を生み出したのかも知れないと思う。党内の気持ちを聞くのに精一杯でとても国民の方には気持ちが向かないだろう。

これだけ党内配慮しても各所から文句が出ているそうだ。安倍派は「うちの方が人数が多いのに麻生派と同じ4人なのが気に入らない」といい、二階派は「自分達の希望した人が入れなかった」とクレームをつけている。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です