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ジリジリと円安が進む中、日銀植田総裁が密かにマイナス金利政策解除のシグナルを送る

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現在、円安ドル高が進んでいる。一時は1ドル144円まで落ちる局面があったが、結局その後ジリジリとドルが高騰し現在は147円台後半というところまで来ている。鈴木財務大臣と神田財務官のトーンは一段階上がり「そろそろ介入もあるのでは」という観測も高まる。だがこのドル高はそろそろ打ち止めであると言われている。となると投機的な動きはなくなるので介入は起こらずに円安が定着することになる。

このようなニュースを探してReutersとBloombergばかりを漁っていたのだが、Yahoo!ニュースで意外な記事を見つけた。植田総裁が読売新聞の取材に応じた。結局植田氏は何もしないだろうという人もいるが、金融アナリストの久保田博幸氏はこれを読んで年内にマイナス金利政策が解除される可能性もあるのではないかと言っている。読売新聞も年内の変化に期待している。

これを総合すると「財務省の介入はなくしばらくはドルが高い状態が続く」が「年末にかけて円高に転じる可能性もある」ことになる。週末にかけて相場はお休みになる。この辺りで一度落ち着いて各報道を読みつつそれぞれのシナリオに対する対策を考えておきたいところだ。実にさまざまな角度からさまざまな報道が出ている。

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数年ぶりにドルが高い状態

現在の状況はドル高と円安という二つの側面がある。現在はドル高が重要なドライバーになっている。アメリカ経済は好調なのだがインフレ抑制のために金利が引き上げられている。政治的なリスクはあるがアメリカの債権が魅力的な存在になりドルの需要は8週間連続で上がった。Bloombergは2005年以来と書きReutersは2014年ぶり最長と書いている。

ドル高はしばらくはこのままの状況で推移すると見られている。だが、潜在的な需要は満足したという観測があるそうだ。Reutersの表現を借りれば「市場はすでにかなりドルを買い持ちにしており、上昇幅は小さい。これ以上のドル急伸は難しいのではないか」となる。

今後ドル円が急速に円安方向に触れないとすると財務省が為替介入をやる口実がなくなる。このところ神田財務官と鈴木財務大臣は口先介入を繰り返している。鈴木財務大臣が口先介入をやったときには一時146円台まで円高の方向に触れたがその後効果はすぐに剥落した。

かといってドルが下がる要因はないのだからこのままの状態が続くことになりそうだ。

読売新聞で植田総裁が年内のマイナス金利解除の「可能性」に言及

だが、意外なところで意外な記事が見つかった。植田総裁が読売新聞の取材に応じたそうだ。記事の内容もさることながら、解説する金融専門家の記事が興味深い。Yahoo!ニュースのコメント欄には「結局植田総裁は何もしない」と書く専門家もいた。だが一方で「具体的な時期を書いたのには驚いた」という人もいる。中でも最も前のめりなのが久保田博幸氏だ。

久保田氏は読売新聞を通じて植田氏の方からメッセージを送ったのではないかと見ている。植田氏は市場を直接動かすために未明の日経新聞を使ったりしていたが、広くメッセージを普及させるために一般紙である読売新聞を使い市場がお休みになる土曜日に公開したということだ。確かに動揺を避けつつ比較的穏やかにメッセージを浸透させることができる。これが日経新聞であれば見え方も浸透速度も違っていたはずだ。

久保田氏のタイトルは年内と書いているが「タイミングからみて9月21、22日の金融政策決定会合で何らかの動きが出る可能性がある。」と書いている。さすがにここまで書いて大丈夫なのかと心配になる。すでに読んだという人も多いだろうが内容についてはぜひご自身で確かめて評価していただきたい。

読売新聞も「年内」を期待

来週にはアメリカのCPIの発表がありFOMCも控えている。日銀の政策発表はFOMCに合わせておこなわれ大抵「何もニュースがないのがニュース」ということが多い。

読売新聞の記事だが「マイナス金利解除「物価上昇に確信持てれば選択肢」…植田日銀総裁インタビュー」というタイトルで「年内にも判断できる材料が出そろう可能性があることも示唆した。」というリードになっている。後段で正確な発言を「春闘を待たずに判断できる可能性はゼロではない」と記述している。

いずれにせよジリジリと円安が進む状態はもはや許容できない。円安と原油高が続く限り政府は数兆円をかけてガソリン価格を維持しなければならない。このため日銀はついに追い込まれてマイナス金利の解除に進むのではないかと見る人は多いようだ。

すでに岸田総理には「ご説明」を済ませている。あとはそれを実行するだけという状態である。

植田日銀総裁が岸田首相と会談、政策修正説明 為替議論特になし(Reuters)

長期的な財政の見通しが立ちにくいことから長期米国債の金利は少し下がり短期米国債の金利が上がるという状況になっている。米国債は逆イールドの状態が続いているがこの状態はしばらく続くものと見られているようだ。

ここから先は「バーゲンセール」になっていると言われるアメリカの短期国債の価格(利率)を見極めつつ手持ちの円をいつドルに替えるのかという判断をすることになる。さらに景気の動向によっては日米の株価は大きく影響を受ける。これらの状況と可能性のあるタイミングを整理した上で、何か動きがあった時にどう行動するのかをシミュレーションすることになるのだろう。

2024年に容易に利下げが行われないとする根拠はアメリカの家計が好調だから

FRBはソフトランディングに対するコミットメントを強めている。と同時にインフレの開始を過小評価したことがトラウマになっているため容易には利下げには踏み切らないだろうとも見られている。これが「金利はなかなか下がらないだろう」という見方の根拠になっているそうだ。つまりこの前提が崩れれば今後のシナリオは大きく変化する。

アメリカの経済過熱は冷めつつあるが「しばらくは無理をせずにお薬(高金利)を飲んで安静にしていましょう」という状態である。学生ローン返済の再開や利上げによる企業の資金繰り悪化の懸念がありつつもなかなか景気減速の兆候が経済統計には現れてこない。このため米中摩擦による株価の一時的な下落はありつつも株価に決定的なインパクトを与えるような悪い影響は出ていない。

アメリカ家計が好調な理由の一つが「資産」のようだ。日本と違って住宅が資産になる上に貯蓄ではなく投資をしている人が多い。不動産と株価が値上がりしている間は資産価値が保たれている。

ただし信用の拡大はクレジットカード残高も拡大させる。それに従って家計の資金繰りに行き詰まる消費者の比率も上昇しているそうだ。資産価格の上昇を背景にアメリカ人は盛大に借金をし盛大に消費をしているという状態が続いている。

つまりこの状態はすでにバブルになっている可能性もある。

そもそも9月には株価が下落しやすいという傾向があるようだ。あえて探してみるとなかなか不吉な記事も見つかる。株式投資家にとってはできれば見たくない記事ではあるが、いざという時のシミュレーションさえしておけば何か起きた時過度に慌てなくて済むのかもしれない。

この記事の示唆するところは、アメリカ人の資産はすでに過大評価されている株価にも大きく支えられているのだから株価が大きく変動すればFRBの金融政策にも影響が出るであろうということになる。

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