コンプライアンスの崩壊とは恐ろしいものだと感じた。これまで頑なに認めてこなかった性加害を認めたことがきっかけにになり帝国が崩壊を始めた。
ジャニーズ事務所がジャニー喜多川氏の性加害を認めたことで有名企業が次々とジャニーズ事務所のタレントとの取引を中止している。長年問題を放置していたツケは非常に大きく取り返しがつかないものになった。外資系企業は行動計画を見るとしているが一部国内企業は風評を恐れてジャニーズから撤退した。
CM契約が先細れば、CMに依存するテレビ局はジャニーズタレントを使うことに「理由」が必要になる。おそらく今後多くのタレントを抱えることも新規タレントを育成することも難しくなってゆくだろう。
その後に補償問題がのしかかる。一説には10億だ、100億だ、1000億だなどいう無責任な数字も飛び交っている。そうなると、今後は会社の資産だけでなく藤島ジュリー景子氏が個人的に引き継いでいるとみられる土地などの資産に注目が集まる。おそらく「性加害からの逃げ得は許さない」という風評にさらされることになるだろう。
企業のジャニーズ離れが起きている。FLASHはまるで取り調べのように各社の広報に取材をして対応をまとめている。今後少なくともしばらくはジャニーズのタレントを起用するたびに企業はこうした「取り調べ」の対象になることが予想される。
- アサヒビール:既存広告は継続・新規からは撤退
- P&Gジャパン:行動計画を求めており推移を注視している
- アフラック生命保険:行動計画を求めており推移を注視している
- 日本マクドナルド:状況を注視
- フマキラー:協議中
- ロート製薬:協議中
- トリドール(丸亀製麺):適切に対応
- オープンハウス:回答なし
- ティファニージャパン:回答なし
- 東急リバブル:回答なし
このほか時事通信はキリンビールは新規契約はしないと答えており、サントリーは今後協議すると言っている。ジャニーズタレントの広がりぶりと企業の戸惑いがよくわかる。
- ジャニーズ起用せず アサヒとキリン(時事通信)
冷静に中身を見ると外資系はコンプライアンスがしっかりしていると感じる。つまり単にイメージ悪化を恐れているのではなくビジネスと人権の立場から行動計画を見てから判断を決めると言っている。
一方でJALのような国内企業は世間からの風当たりが強くなることを警戒しているのだろう。ほとぼりが冷めるまで当面見送りということになった。
今後は企業は世間の反応を見て決めてタレントの起用を決めてゆくということになる。すると当然テレビ局側もジャニーズタレントを使うに当たって「CMスポンサーのお伺い」を立てることになるだろう。つまり「どうしてもこの人でなければダメだ」という理由が必要になる。
これまで出演していたタレントはそのまま起用されるかもしれないが、新規のジャニーズ系のタレントの起用には大きな障害が出ることが予想される。これまで企画書に入れておけばなんとなく通っていたものが通らなくなるということだ。そしてこれは出版にも広がる可能性がある。
これまでジャニーズ事務所は鉄壁のメディアコントロールでその独占的地位を守ってきた。今後はそれらが全て逆作用して跳ね返ってくることになる。その象徴が白波瀬氏だ。会見にも出てこず最後までメディアコントロールを試みたとして非難の対象になっている。長年白波瀬氏に抑えられていた芸能記者は多い。今後はこれが全て逆に作用するだろう。
では「現在状況を注視している企業」はどうすれば世間に納得感がある説明ができるのだろうか。それはおそらく賠償がきちんと片付いた時だろうがそもそも額も確定してない上にどれくらいの被害者がいたのかもよくわかっていない。このためスポーツ新聞では10億だ、100億だ、1000億だという無責任な数字が飛び交っている。さらに交渉には数年がかかるものと見られているそうだ。
- ジャニーズ性加害問題、前代未聞の損害賠償額100億円超か 芸能事務所幹部「ジュリー社長が株や不動産を売れば払えない金額ではない」(サンスポ)
- ジャニーズ事務所、被害者への補償金1人1000万円程度か…交渉には数年程度、弁護士が推測(スポーツ報知)
つまりジャニー喜多川氏の名前を冠していようがいまいが、ジャニーズ事務所は負の遺産を数年は抱えることになり、その間週刊誌やスポーツ紙から監視されることになる。
さらに「海外での訴訟も」ということになっている。海外では懲罰的な判決が出ることがある。国内問題なのになぜ海外での訴訟が可能なのかと疑問に思っていたのだがどうやら海外でも問題行動があったようだ。ただし原告側が行動を起こすかは今後の対応次第なのだそうだ。
ジャニーズ事務所から出たタレントにお咎めが及ぶことはない一方で単に逃げ遅れたタレントだけが被害を受けているだけと言える。これは理不尽極まりない。
外資系を除き企業が恐れているのは「風評」である。つまり世間の納得感が得られなければこの状態がいつまでも続くということだ。そして理不尽な被害を受けるのは会社ではなくタレントとタレント候補生たちだ。タレントはCMやテレビ番組に出ることが難しくなる。原資が先細れば新しいタレントたちの育成も難しくなるだろう。こうなると所属タレントに対する救済策は一つしかない。それはこれまで袂を分かった滝沢氏や飯島氏に深々と頭を下げてタレントを預けることだ。
ただ、創業家そのものは100億円程度の規模であれば「なんとかなる」ほどの資産を形成していると言われている。株式上場していない会社なので会社の資産規模がよくわからない。さらにオーナー企業だったために会社の資産が個人に転移されている可能性もある。デイリー新潮は「今後はこの資産を使ってジュリー氏が新ビジネスを始めるのではないか」とも言われているそうだが仮にそのようなことをすれば「性加害で稼いだ金でまた金儲けか」ということになりかねない。
このことから、どんな企業も内部通報などの制度をしっかりと整えつつ、ステークスホルダーとの台頭な関係を構築してゆくべきだということが改めてわかる。力によるコントロールが強ければ強いほどその反作用も大きい。
ジャニーズタレントに関する監視はおそらくタレントが外に出れば解決する。だがおそらく性犯罪による蓄財という風評は会社と個人には残るだろう。株式会社は形式的には有限責任なのだが「世間の監視の目」が必ずしもそれを許すとは限らない。再発防止特別チームが指摘し東山新社長がなぞった法を超えた補償の意味が重くのしかかってくる。単に時効を超えて補償に応じるというだけではなくなりつつある。2人の遺産を受け継いだ藤島ジュリー景子氏は資産を抱え込んでいる限り世間の監視という負の遺産を抱え続けることになる。