ざっくり解説 時々深掘り

ジャクソンホール前に日本の長期金利が0.675%まで上昇。報道を整理する。

25日にジャクソンホール会議が開かれる。FRB総裁の発言が注目されるが、日本時間で深夜になるため影響が出るのは来週以降になると言われている。「インフレが抑制されていない」という内容になると米国金利のさらなる上昇と円安が予想される。逆に引き締め過ぎのリスクが強調されると円高の方向に触れる可能性もある。本来ならジャクソンホール会議待ちになって為替と金利は動かないはずなのだが、日銀のYCC修正の効果がじわじわと出始めているようだ。ここでは論評は避けロイターを中心に各種報道をまとめた。

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このところ円は主要国の最弱通貨として位置付けられている。新興国も含めるとこの地位にあるのは、トルコリラ、アルゼンチンペソ、日本円。このの3つが「最弱通貨」の常連となっている。原因は3つある。

  1. 実質金利の大幅マイナス
  2. 貿易・サービス収支等国際収支の悪化
  3. 20年以上ぶりの他国との短期金利差拡大

FRBが利上げを決めた7月の会合の議事録ではインフレ上昇リスクが高いと見ており追加の金融引き締めが必要であるという予測が示されていた。この議事録が公開されたタイミングでドル円も一時146円をつけていた。

ドル円は145円が介入ラインとされており財務省の介入が警戒されている。しかし、146円ラインでも介入がなかったことから、新しい介入ラインは150円前後ではないかと見る向きもある。市場はどのラインが介入タイミングになるかを見極めようと慎重な動きを見せる。

他にも中国の経済の先行きが不安定化しておりドルが買われやすい環境にある。中国当局は防衛に躍起だが人民元がじわじわと値を下げている。ドルが買われるとひきずられて円が下がる可能性がある。そもそも通貨としての地位が低下している上に金利の高いドルが独歩高になる可能性がある。つまり円の弱さとドルの強さが合成されてしまう。

ジャクソンホールを前にアメリカの債権市場で長期金利が一時4.3%台になった。これは16年ぶりの高水準だった。市場は金融引き締めの長期化を予想するようになるとジャクソンホール前にもかかわらず金利が動き始めた。これが今回の直接のきっかけになっているようだ。

アメリカの長期金利が上昇するのに伴って日本の国債の流通価格も下落(利回りが上昇)した。今月3日には0.655%まで上昇したタイミングで日銀が国債の買い入れオペを実施したが22日にはそのような動きは見られなかった。

植田日銀総裁が岸田総理と会談した。詳細の会談内容は不明だった。為替については話し合いをしていないと言明しているが市場はこの言葉を額面通りに受け取っている人はあまりいないようだ。また予算編成を控えた岸田総理はどの程度の国債を発行できるのかを事前に知っておく必要がある。既に概算要求は出ているが重点項目(物価高と子育て)についてはさらに予算が膨らむ可能性がある。

次の日になってさらに国債価格が下落した。日銀が買い入れを行ったが消極的なものに終わったため一時長期金利が0.675%に上昇したのだ。ただし市場も水準感を掴みかねている状態で一進一退が続いている。長期金利が上昇したという報道は出たが、その内容や今後のトレンドについて分析した記事は多くない。「日銀がどのラインを介入防衛線にしているか」などはまだよくわかっていないようだ。

2023年7月末の記事によると、ピクテ証券はYCC修正後の金利想定を0.6%程度と見ているようだ。ただし実際には「オペ次第」と言っている。現状を見ると0.66%は許容され0.67%近辺が意識されているということになる。日銀の細かい動きを見つつ攻防が続く。

これまで日本政府の積極材政策が金利に影響を与えることはないとされてきたが、日本でもいよいよ過剰財政支出が長期金利にダイレクトに影響し始めるとする観測がある。

岸田総理はエネルギー価格の上昇と低い支持率に対応するために歳出増加圧力にさらされる。歳出増加圧力にさらされると市場は政府・日銀の財政再建に対する意欲を疑問視し金利上昇圧力が強まる恐れがある。金利が上昇すれば政府の債務返済負担は増える。債務返済負担が増えると実質的に使える財源は減ってしまう。日銀が金利を低く抑えると円の価格が下落する。円の価格が下落すると当然政府の歳出増加圧力にさらされることになる。

特に岸田総理が秋に衆議院解散に踏み切るならばそれまでに思い切った景気刺激策を打ち出さなければならない。当然これは長期金利上昇の圧力になる。一方で支持率が低迷し物価上昇も止まらない原価の情勢では解散は難しいのではないかという観測もで始めておりいまは入り混じった状況である。このように経済・金融状況は政治日程にも大きな影響を与えている。

状況が変化しつつあることは誰の目にも明らかだが、いつどのタイミングで何がどの程度起こるのかはよくわからない。そんな状況になりつつあるようだ。

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