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防衛省の最高機密情報が中国軍にハッキングされるも防衛省は「スルー」の考え

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どうやら防衛省のサーバーが中国軍ハッカーに侵入されたようだ。時事通信が報道しX(旧Twitter)でも話題になっていた。この件について聞かれた日本政府は「機密情報が盗まれた形跡はない」と言っている。おそらく盗まれたことに気がついていないのだろう。このままではアメリカ軍は日本に情報提供ができない。日米韓が連携して北朝鮮のミサイルに対応するといった高度なスキームの構築は難しくなりそうだ。

ワシントンポストには「問題解決の最初の一歩は問題の存在を認めることである」という指摘がある。日本政府はそれに応えなかった。

IT技術の不足が国土防衛に大きな影響を与えようとしている。

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時事通信が「中国軍、日本の最高機密網に侵入 情報共有に支障―米報道」という記事を出し、一にXのトレンドワード入りしていた。文字数が限られるせいで最後の「アメリカも日本をスパイしている」という文章が中途半端に浮いている。

日経新聞も同じ話題を扱っている。「中国軍ハッカー、日本の防衛機密にアクセスか 米報道」というタイトルになっている。

元になったワシントンポストの報道もあわせると次のようになる。なおワシントンポストはアメリカ軍が日本をスパイしていましたとは書いていない。日本側がそれを知っていたという書き方になっている。

アメリカ軍が防衛省のサーバーをスパイしている最中に中国軍から侵入されていることがわかった。アメリカは自分たちもスパイをしているのだから防衛省のサーバーのセキュリティが「お話にならないレベル」であると知っていたのだろう。さすがに見るに見かねて東京まで出向き日本側に対処をお願いした。

そこで「どうして防衛省のサーバーがハッキングされているのか?」と聞かれたが発見の経緯は話せなかった。日本側もアメリカがスパイ活動をしていると知っていたようだった。

この話は非常に感じが悪い。米軍は「日本のサイバーセキュリティがどの程度のものかチェックしてやろう」と考えているのだろうと思えるからだ。日米は連携しているのだからわざわざ防衛省の秘密を米軍が抜き出す意味はない。

時期は2020年秋となっている。菅政権の末期から岸田政権にかけての時期である。防衛大臣に話を伝え「岸田さんにも話をしてくれ」とお願いしたようだ。アメリカの担当者は一度安心して帰る。日本側が真摯に対応してくれたことで「相手は理解してくれた」と安心したようだ。だが実際の対策は依然お粗末なままだった。結局話は伝わっていなかったのだ。

アメリカ側は「自分達なら対策ができる」という理由でサーバーへのアクセスを求めたようだが、それは日本側から拒否されたようだ。覗き見されたくないという気持ちが防衛省にはあったのかもしれない。仮に日本側のサイバーセキュリティ技術がお粗末なものだとすると、おそらくアメリカからのスパイウェアを仕込まれても気がつけないだろう。

日本側人はことを荒立てたくないためニコニコと相手の話を聞くことが多い。アメリカ人はこれを「理解の印」とみなすのだが実は日本人は裏で別のことを考えている(あるいは何にも考えていない)可能性が高い。アメリカ人にはそれが理解できないため困惑するという話はよく聞く。今回も結局日本政府が全く動いてくれないことに焦った米軍側がメディアリークを通じてシグナルを送っている可能性が高い。かなり困惑しているのではないだろうか。

だが日本政府の今回の報道に対する対応は全くそっけないものだった。

調査をするつもりもなければ防衛省に話を聞いて厄介ごとを抱え込むつもりもないのだろう。そもそもハッカーが「あなたの情報を盗みましたよ」などと親切に教えてくれるはずはない。侵入されているということは情報漏洩が起きているということだ。

だから侵入に気がついていない浜田防衛大臣の「任務に影響がない」には全く説得力がない。この人もITプロジェクトが扱えていない可能性がある。ITのないプロジェクトなど存在しないのだからITマネジメントの基礎知識は現在の政治家が持つべき必須のスキルだ。浜田さんにはそれがないのかもしれない。

それにしてもなぜこのタイミングでのリークになったのか。

実はアメリカと韓国の間では「事実上の核共有」の議論が進んでいる。韓国には自前で核を持つべきだという議論が一般にも広く浸透している。これを抑えるためバイデン政権では情報共有を通じて韓国の理解を得るという方針を打ち出している。尹錫悦大統領はこれを「事実上の核共有だ」と誇大宣伝した。北朝鮮からのミサイルについて事前に把握することは日本の国土を守る上では極めて重要だ。今のJアラートでは全くお話にならない。

キャンプデービッドで日米韓の首脳会談が予定されており、バイデン政権と軍部はここで各国の協力スキームについて協議したかったのだろう。

日本が国民に向けて「何も対策しません」と宣言すれば、それはアメリカに対しても「核に関する情報は要りません」と言っているのと同じことである。表向きは米軍に対して「ニコニコ」と課題意識は共有しているというかもしれないが、おそらく米軍は信じてくれないだろう。具体的な対策が求められる。そして彼らにとってそれは「アメリカ軍が対策をしてあげる」ことなのだが、今度は「アメリカ軍に情報を見られる」というリスクを日本が抱え込むことになる。

このままでは、防衛費の増額だけを約束させられ「情報はもらえませんでした」ということになりかねない。

岸田政権はアメリカから指摘されても「お粗末な」対策しか講じることができなかったという防衛省の無能力さを隠したいだけなのかもしれない。だがそのコストはかなり高いものになりそうだ。問題を解決するためにはまず問題があることを認めなければならないとワシントンポストは指摘する。日本の対応はその意味ではゼロ回答だ。問題そのものを認めない選択をしたからである。

マイナ健康保険証の問題を通じて日本政府にITプロジェクトの遂行能力がないことは十分に知っていたつもりだが、政府の無策を起点とした「デジタル敗戦」のコストは思いのほか高くつきそうだ。根幹にはITスキルのなさと問題を決して認めない頑ななマネジメント層のマインドセットにある。

デジタル敗戦からの復興に必要なのはマイナカードの配布ではない。ITエンジニアやプロジェクトマネージャーに世界標準の処遇をして世界標準の人材を確保することだ。医療福祉分野でも国土防衛分野でもそれは今すぐ取り組むべき課題なのではないだろうか。

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