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バイデン大統領がICCへの情報提供を容認 狭まるプーチン大統領包囲網

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バイデン大統領がICC(国際刑事裁判所)への情報提供を決めたようだとアメリカの複数の媒体が伝えている。最初に伝えたのはニューヨークタイムスだがCNNが後追いしている。ICCに加盟していないアメリカとしてはかなり思い切った方針転換となる。

プーチン大統領はICCの起訴によって南アフリカでの国際会議に出席できないなど効果が出ているが身柄拘束までには至っていない。今回の情報提供によってプーチン包囲網が一歩前進することになることが期待される。

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ICC国際政治裁判所はプーチン大統領の戦争犯罪について捜査している。ICC加盟国はプーチン大統領を逮捕する義務があるためプーチン大統領は南アフリカのBRICS首脳会議に参加できなくなった。読売新聞は「南アフリカがやんわりと拒否した」などと表現するが、実際には南アフリカの与野党対立に利用されていたという側面もある。南アフリカの与党は「ICCなど脱退してしまえと言っていたが、野党は逆に「逮捕義務を果たすように」と裁判を起こしていた。実態は読売新聞の指摘よりも複雑な状況になっていたと言える。

プーチン大統領が苛立っているのは確かである。報復として赤根智子裁判官を指名手配した。単なる八つ当たりに過ぎないが、プーチン大統領の苛立ちがよく現れている。

国際社会からの干渉を嫌うアメリカ合衆国、中国、ロシアはICCに加盟していない。バイデン政権はICCへの情報提供がプーチン大統領包囲網としてメリットがあると判断したのだろう。最終的にどのような情報を提供するのかはICCがどのような情報を請求するかによって決まる。

ただアメリカがどの程度このリクエストに応じるかはわかっていない。

この決定に至る道筋は単純なものではなかった。アメリカ合衆国もまた「戦争犯罪」とみなされかねない事象に手を染めている。日本語版のCNNはイラクの例を簡単に挙げている。英語版では国防総省が「イラクでアメリカ人が行った戦争犯罪疑惑」の捜査に道を開いてしまうのではないかと懸念していたそうだ。つまり彼らにも「後ろ暗いところ」がある。特に国防総省は思い当たる節がいくつもあるのだろう。

このようにアメリカ合衆国のいう民主主義擁護にはご都合主義的な側面がありバイデン政権は特にその傾向が強い。「結局は国益」ということが見透かされておりサウジアラビアのような産油国や新興国のアメリカ離れが目立っている。いわゆるダブルスタンダードが多い国なのだ。

この疑念を最もうまく利用して立ち回っているのが中華人民共和国だ。これまでは戦狼外交路線だった。つまりアメリカに対応していちいち反論していた。ところが王毅外務大臣に変わるとBRICSを基軸にして新興国リーグ作りを始めた。加盟を希望する新興国と援助を期待する「BRICSの友」を拡大し、アメリカ合衆国の言っている「みんなが言っている」の「みんな」を覆そうとしているのである。

今回のアメリカ合衆国のICCへの情報提供自体は喜ばしい動きである。プーチン大統領のような一方的な侵略やそれに付随する戦争犯罪は許されるべきではないからだ。しかしながら「悪のプーチンと正義のアメリカ」という図式のみで国際社会を理解するのは極めて危険である。

特に中国の影響を大きく受けかねない日本は現実を直視し変化に対応する必要がある。

今回のアメリカの情報提供が直ちにプーチン大統領の拘束につながることはないのだろうが、一つひとつ事実を積み重ねてプーチン包囲網を狭めてゆくべきである。自らの野望のために隣国の市民を犠牲にしていいと合理化することはとてもできない。

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