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岸田総理がマイナ健康保険証従来方針の転換を検討へ

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マスコミにより「包囲網」ができていたが、ついに岸田総理が紙の健康保険証の撤廃時期を延期するために調整に入ったようだ。

すっきりと紙の健康保険証の存続が決まるというタイトルが打てればいいのだが、正確には「資格確認書「期限1年」見直しへ マイナ保険証の未取得者―政府」となっている。つまり、健康保険証は廃止され「資格確認証」という名前に変わるという方針は堅持されていることになっている。NHKは今朝のニュースで分かりやすく「保険証廃止 首相週明け判断へ」と言っている。この言い方だと健康保険証がしばらく残る(つまり廃止を延期する)という選択肢も検討されているということになる。

ただ今地方自治体に問い合わせても何も教えてもらえない。そもそもこれから「保険証を廃止したらどうなるか」について検討を始めるからだ。こちらは、松野官房長官、保険証廃止「課題洗い出す」という記事で確認ができる。

どうしてこうなったのか?を調べると医師たちの組織的な抵抗運動が浮かび上がってくる。

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まず具体的に何がどう決まったのか?なのだが、これがよくわからない。そもそも切り替え制度について自治体に具体的な指示は出ていない。つまり紙の健康保険証が来年どうなるかを自治体に聞いても「よくわからない」と言われるだけである。ただ「廃止する」という目標だけが一人歩きしていた。今回岸田総理はそれを見直すと言っている。だから何をどう見直すのかがわからないのだ。

禅問答のような話なのだがこれが令和の政治の現状だ。

ただしその紙切れを健康保険証と呼ぼうが資格確認証と呼ぼうが実際の機能になんら変わりはない。健康保険証を配るだけなら今の精度を確認すればいいだけなので全員に資格確認証と名前が変わった健康保険証を配るのが一番手っ取り早い。つまり現状維持ということになる。

今回の問題の起点は国民の漠然とした不安だ。そもそもその不安はどうして生み出されたのだろうか。

TBSが【ライブ】“マイナトラブル”は止まらない 全国保険医団体連合会記者会見(2023年7月26日)というタイトルで保険医団体連合会の会見をライブ配信していた。マイナ保険証の内容と保険証の内容が合わない事例が散見されるという内容である。会見自体はどこか要領を得ない。何かおかしいという事例が散見されるのだが何がおかしいのかがよくわからない。これは当然だ。告発する側も伝える側もシステムについてよくわかっていないようなのだ。あるいは関心がないのかもしれない。

ここに出てきた医師たちの名前で検索するといくつか記事が見つかる。

リーダーを九月に購入した松戸市の「秋山歯科クリニック」では、初期費用に百万円かかった。桐谷三千雄院長(68)によると、国から機器購入費として約四十万円の補助が受けられたが、レセプト(診療報酬明細書)のシステムとの接続費など残りの六十万円は自己負担。その上、工事業者からは月々三万円ほどの維持費も必要との説明も受けた。「これでは押し売りだ。コロナ禍で患者も減り、経営への影響は大きい」

もともと「機器を押し売りされている」という被害者意識があった。機器代金は国の補助が出るが通信費はそうではないようだ。機器を無料配布し(無料ではなく税金なのだが)通信費で儲けようというビジネスだとすると携帯電話会社の1円スマホに似たビジネスモデルだが、これを国が主導してやっていたということになるだろう。

このビジネスモデルの是非はともかくとして、そもそも政府に批判的な労働組合系のお医者さんの集まりが「機器を押し売りされている」というネガティブな印象を持ったのがまずかった。さらに保険医団体連合会が最も心配しているのは「医療費がとれないこと」のようだ。実際の現行の健康保険制度ができた時に回収に苦労した経験があるのだそうだ。

ここから盛んにさまざまな報道が出てくる。報道と言っても一部の政府に批判的な新聞社が主導している。どうやら「不安」を核にしたスキルを持たない共犯コミュニティができていたようである。これが振動し国民に不安が拡散された。

別記事で「木原事件」報道において官邸記者クラブの外にコミュニティができていたようだと書いた。政治部と社会部はそもそも別の村だがその外にさらにフリーランスという新しい村ができているという構造だ。このマイナカードの事例でも同じことが言える。

ただ、仮にこの段階でバグを報告する窓口が設置されていればここまで問題は大きくならなかった可能性が高い。大規模なシステムを実務運用すれば必ずバグは出る。問題はこれを修正する体制が作れるかどうかである。政府はこれを怠ったし今も対応していない。メリットを説明しバグはないと言い続けている。

スキルがないというのは恐ろしいことだ。

つまり冷静に考えると単にテストのやり方が悪かっただけなのだがそもそもどうあるべきなのかを誰も考えないので「スキルがない」ことに気が付けない。そして、10月に解散ができるようにするためには8月か9月に問題が解決していなければならないというスケジュールを意地になって守ろうとしている。だから、実は総点検のメニューは今も決まっていない。こんなやり方で点検をしても問題は潰せないだろう。リスケは当然の結果だ。

いずれにせよ、現在の問題の本質はマイナンバー制度にもマイナンバーカードにもないと言える。機器はすでに導入されており地方自治体も健康保険組合もオペレーションに慣れてゆくだろう。保険医団体連合会も情報が合わないせいで医療費を取りはぐれることを心配しているだけなので情報精度が上がれば反対する理由はなくなる。

だが少なくとも2024年秋に健康保険証を廃止しその後1年資格確認証で運用するという方針は見直されることになりそうだ。

立憲民主党は法律の改正を求めている。

立民・泉代表「保険証廃止延期を」 今秋の法改正要求(時事)

今後の「駆け引き」は法律を改正するのか(つまり負けを認める)のかなんらかの解釈変更で押し切るのかということになりそうだが、じわじわと後退を続ければさらに傷口が広がることになりかねない。スケジュールを法律に明記して何がなんでも押し通そうとしたのはまずかった。

NHKによると与党内部の意見はまとまっておらず「聞く力」で混乱することの多い岸田総理には悩みの多い週末になりそうである。はっきりした方針が示せなければさらに混乱することも予想される。しっかりと方針を決めた上で国民の不安払拭に努めてもらいたいと願うばかりである。

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