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ワグネルも関心を寄せる ニジェールのクーデターに新展開

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ナイジェリアの北にあるニジェールでクーデター騒ぎがあった。当初は大統領を護衛している人たちが勝手に起こしたものであると思われていたのだが、その後軍が支持を表明している。情報が錯綜していてよくわからないのだがワグネルの関与を指摘する媒体があった。ニジェールは対ワグネル戦の拠点になっていてアメリカからの支援がある。地下資源は少ないがロシアが欲しがっているウランも産出される。ウランはいうまでもないが核兵器の材料である。

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軍が同調せずにすぐに終わるだろうと思われていたニジェールのクーデター騒ぎについては昨日お伝えした。ECOWASからの代表が送り込まれ調停をしているというところまでを書き「すぐに終息するだろう」と書いた。だが終息しなかった。

ニジェールはナイジェリアの北にある。元々は同じ地域だったがフランス領に組み込まれたためナイジェリアとは別の国になっている。国土のほとんどは砂漠とステップで農業はほとんど行われていない。南部にニジェール川が流れており人口は南部に集中している。人口規模は2500万人程度だ。

アルジャジーラはクーデターの詳細を伝え続けている。この数日がヤマだろうという。つまりこの数日で状況を抑えることができなければ混乱が拡大するということになる。

同時にアルジャジーラーはワグネルが拡張するのではないかという懸念も紹介している。ニジェールには天然資源はあまりないがロシアが欲しがっているウラン鉱がある。ただ情報は錯綜しており確かなことは何もわかっていない。AP通信は逆の書き方をしている。民主的に政権が移管したためにアメリカが民主主義の成功例として支援しているようだ。周辺国にワグネルが既に展開しているため、アメリカはこの地域を民主主義のショーケースにしつつ対ワグネルの拠点にしたいようである。クーデターが成功するとアメリカのシナリオが崩れる。

西アフリカの各国はイスラム原理主義勢力に狙われている、元々はフランスが支援していたのだがフランスはこの地域から手を引きつつあり、ロシアが軍事支援を肩代わりし始めている。その実務部隊がワグネルだ。地方勢力と結びつき鉱山利権を保持するために雇われているケースもあるようだが、活動の実態はよくわかっていない。

近隣のマリでは親露感情を持つ市民が増えているようだが民間人の虐殺なども行われているようだ。

ワグネルはプリゴジンの乱で壊滅したのではないかと思われていた。プリゴジン氏がアフリカ援助の枠組みであるロシア・アフリカ首脳会議に出席したとする報道がある。ロシアは小麦援助を通じてアフリカを自分たちの陣営に引き付けておきたいと考えていて、リエゾンになっているワグネルにも存在価値がある。プーチン大統領はロシアでの自分の地位が危なくならない範囲でワグネルを管理し利用したいのだろう。危うい均衡がある。

あくまでも仮説でしかないのだがロシアが国際戦略の一環として「民主主義の牙城」であるニジェールを潰し自分たちに近い政権を作ればロシアにとってはメリットが大きい。だが表立ってそれをやればアフリカの首脳たちは自分たちの体制も危うくなると考えるはずである。このためワグネルのような「民間軍事会社」を使って間接的に状況を仕掛けていると考えると今回の不自然な動きにも説明がつく。

一方で国内ではワグネルのいなくなった隙間を埋めるために地方首長が民間軍事会社が設立できるようにする法案の整備が始まった。大統領の許認可制にして暴走を防ぐ仕組みである。ロシアでは連邦のトップを大統領と呼び、その下にある共和国のトップはそれに遠慮する形で「首長」と呼ばれる。大統領のみが民兵組織の許認可権限を持ち首長の上に君臨するという形である。

国際的に利用価値のあるワグネルは処罰しないが国内では反乱の要因になるために排除しようという作戦だ。だが当然プーチン大統領が弱体化すれば各地の民間軍事会社がモスクワに対して反乱を起こしたりお互いに争い合ったりするという事態が想定される。隣国のベラルーシを含んで民間軍事会社と核兵器が拡散していることを考え合わせると、おそらく混乱はかなりひどいものになるだろう。と同時にアフリカに展開しているワグネルとアフリカ各国の政情が不安定になることも考えられる。

この二つの地域は意外と緊密に接続しているのだと感じた。だが、核保有国である彼らの内部均衡は我々が考えている以上に脆く場当たり的だ。プーチン大統領の弱体化は西側の勝利にならないのかもしれない。

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