ツイッターを見ていたら「民主党を解党して、自民党に代わりうる政党を作るべきだ」という民主党議員のつぶやきを見つけた。バカなのではないか、と思った。
本日夕刻、岡田克也代表に面会。当選3期生以下の若手有志を代表して、民主党を解党し、自民党に代わり得る新たな政党の樹立に向けて取り組んでいただくよう要請してきました。野党再編の受け皿になるためにも、民主党が自ら解党して出直すことが… http://t.co/nPRKEIeKMg
— 岸本周平 (@shuheikishimoto) 2015, 9月 3
自民党と政権交代するためには、自民党とは違うポジションを見つけなければならない。自民党とはどのような政党なのだろうか。
自民党はもともと親米・自由主義の政党だった。田仲角栄の時代に社会党の支持者を取り込むために「大きな政府」領域に進出した。大きな政府とは手厚い福祉と公共事業の実施だ。さらに、権力闘争の過程で利権を持った勢力を駆逐するために、大きな政府政策を維持したまま(つまり福祉を削らずに)小さな政府路線(つまり道路・郵政の民営化と派遣の拡大)を取った。
野党時代にネット右翼層を取り込んだ。ネット右翼層は中国や韓国が経済的に日本に追いつきつつあることに焦っているのだが、見下したり否定することで相対的な日本の国力の低下を直視することを避けている。ネット右翼は、一言で言えば「政治的な正しさと複雑さ」に疲れた層だ。彼らは「日銀の独立性」や「立憲主義」といった制限をなくせば、心配事は消えると思っている。
民主党は時々の自民党の対抗軸が堆積してできた政党なのだが、自民党そのものが揺れ動いていたので、同じように矛盾を抱えた政党になった。
自民党政治を支えているのは国民の「変わりたくない」「面倒なことには関わりたくない」という気持ちだ。安倍首相の人気を支えているのは「面倒なことは考えなくてもいい」というあけすけなメッセージなのだ。
現在焦点になっている集団的自衛権の問題について語るのは意味がない。日本政府には軍事に関する支配権がないので、国会で議論するだけムダだ。日本政府は予算をいくら与えるかという権限はあるが、軍事外交方針に自己決定権はない。これをを取戻すためにはアメリカと向き合う必要があるが、日本の政治家にそのような度胸があるとは思えない。与野党含めて軍事的な主権がないことを「見ないフリ」をしているし、国民もそれを黙認している。
政党にとってのブルーオーシャンは残っている。一つは国家に庇護してもらうことを諦めてグローバルな自由競争社会への適応を目指す領域だ。自由主義領域(あるいは小さな政府領域)と言ってもよい。しかし、その為には国民を説得する必要がある。大阪系の維新はその領域を狙っているように見える。
もう一つは、非正規の人たちを取り込んで「自分たちの問題に向き合うべきだ」と説得する方法である。しかし、この層の一部は「偉大な国家や民族」という幻想に浸ることで自分を満足させている。また、ある一部は経済的な不満や将来への不安を直視しないで、別の形で政府が間違っていることを証明したがっており、それが反原発運動や戦争反対運動の原動力になっている。どちらも、不満や不安をぶつけやすい相手に投影しているに過ぎない。この層を取り込むためには、政治運動に参加してもらわなければならないが、まず現実の問題を直視するように説得するところからはじめなくてはならない。
現在、政治家も国民も「見て見ぬ振り」をしている。相手に変われという前に目を見開いて目の前の状況を直視するべきだ。それができるまでは何度解党しても国民の支持を得ることはできないだろう。
民主党は寄せ集めの部品でできた時計のようなものだ。それを壊しても組立て直しても、動かない時計ができるだけだろう。