立憲民主党のニュースがほとんど聞かれなくなった。その理由の一つに泉健太代表の稚拙なSNS戦略がある。つまり発信力が極めて弱いのだ。今回もまたその「黒歴史」がひとつ加わったようだ。巻き込まれたのは蓮舫氏である。泉さんのニュース記事を読むと蓮舫さんが批判ばかりを繰り返しているように見えてしまう。切り取りの恐ろしさである。
参議院選挙で蓮舫氏は自民党、公明党、共産党についで第四位の得票数だった。これまで自民党に対する異議申し立ての受け皿となってきたのだが共産党にそれを奪われる形になった。選挙を通じて無党派層の関心が立憲民主党から離れつつあることを痛感したに違いない。
報道を読む限り蓮舫氏には二つの不満がある。
- 野党を一本化して対立構図を作り出すことができていない。
- 情報発信を積極的に行い無党派層に主張をリーチさせられていない。
おそらく立憲民主党が民主党時代のように躍進できていない第一の理由はSNSでの情報発信に熟達不足だろう。
テレビ時代は単純な対立構造を作り出しそれを繰り返し訴えていればポジションを浸透させることができた。テレビには「演出意図」とがあり明確なポジションが求められる。またそうしたポジションに編集や音楽を付け加えることでさらに明確化することもできる。
ところがSNS時代はそうではない。SNSでは受け手が情報に意味をつける。ニュースは「消え物」として次から次に流されてしまう。このため次から次へと実績を上げ話題を作り出さなければならない。そのためには「普段から一貫性」を意識した上で組織的な対処をしなければならない。
その意味では立憲民主党は蓮舫さんも含めてテレビからSNS時代に状況が変わりつつあるということがよく理解できていないのではないかと思う。脱却ができていないのだ。
一方で維新が成功しているのは実際に大阪市政・府政を担うことで「日々のニュース」に取り上げられているからだろう。
実際に泉さんのTwitterを見てみると「一応一通りの活動報告」はしているものの「これを意図的に膨らませよう」というようなことができていないことがわかる。また日常生活についてのツイートもなく「よくあるつまらない政治家の取るに足らないTwitter」という印象である。
ただこうしたスキルの問題は学習が可能である。つまり普段からSNSを使って情報発信をしてゆけば自ずから改善されてゆくものだ。
ところが技術とは別に「センス」という問題がある。これは残念ながら学習ができない。
センスがない人はSNSで「切り取り」被害に遭う。今回の泉さんのケースでセンスのない人は自分が被害を受けるだけでなく組織にも被害を与え周りを巻き込むということがわかった。
泉氏は蓮舫氏に「もうこんなことはやめませんか」とのTweetを送る。するとその情報だけが切り取られてYahoo!ニュースなどに取り上げられる。
普段から蓮舫さんのツイッターをフォローしている人なら「蓮舫さんは日々の活動報告もきちんとやっている」と知っているのだろうが、おそらく大勢の人はYahoo!ニュースだけを見ている。つまり情報が切り取られ「口うるさい人」という印象だけが一人歩きしてしまうのである。もともとリベラル系の女性は口うるさいという世間の漠然とした印象もありそれが助長されてしまうのだ。
その後、泉さんは「ツイ消し」を行い「もう十分に情報は伝わったから」と言っている。そもそも何が十分に伝えたかったのかはよくわからないが「蓮舫さんがなんかキリキリと怒っている」という印象だけが「十分に発信された」という印象がある。さらに組織としてはTwitter上でしか会話ができない「バラバラな立憲民主党」という印象だけが残る。
泉氏は13日午後、ツイッターに「もう十分に発信いたしました。結束に努めてまいります」と投稿し、蓮舫氏に反論したツイートを削除した。
そもそもSNSを使った手法がよく理解できていないという共通の基盤はある。
だがこれは単に技術的な問題なので十分にリカバーが可能である。おそらく、それ以上に深刻なのが「泉さんの人をイラつかせるのが絶妙にうまい」というキャラである。おそらく組織をまとめるのには全く向いておらず、従って協力者は得られないのだろうなあと思う。「野党共闘体制」が作れないのはおそらく泉さんとその周りにいる人たちのセンスの問題でもあるのだろう。
蓮舫さんのTwitterのメインは日々の活動報告である。政治にあまり関心のない無党派層にも立直しようとしているのだろう政治以外のTweetも混ぜ込まれている。だがこうした努力はセンスのない人たちに一瞬にして突き崩されてしまう。
今回の一件にはそんな残酷さがあった。