先日は少し生煮えで終わってしまったのだが、結局トルコでは二週間後に大統領選挙の決選投票が行われることが決まったようだ。経済不調や地震対策の杜撰さなど様々な要因があったもののエルドアン大統領が大敗しなかった。その理由を時事通信が書いている。さらに議会ではAKPなどが過半数を維持する見込みだ。つまり、大統領が親NATO派のクルチダルオール氏に変わっても外交的な立ち位置はそれほど急には変わらないかもしれない。
先ほどトルコで「決選投票」が行われることが決まったようだ。つまりエルドアン氏が50%の票を獲得できなかったことが正式に認定された。決選投票は2週間後に行われる。
トルコはアメリカの経済制裁をきっかけに経済状況が悪化していた。トルコリラが急落したもののエルドアン大統領が「エルドアン経済学」を振りかざして金融市場から離反されていたからである。一時エルドアン大統領の支持率は急落する。ところが大統領はなりふり構わないバラマキを行い支持が回復していた。内容は年金の受給資格の拡大、最低賃金の引き上げなどが支持層に響いたのである。
ところが地震が発生しトルコとシリアで50,000人以上が亡くなった。耐震偽装などが発覚しエルドアン大統領とAKPが窮地に立たされるのではないかなどと言われていた。
ではなぜエルドアン氏とAKPはそれほど負けなかったのか。時事通信が取材をしている。もともと「保守的」であり、できればエルドアン氏を信じてついてゆきたいという人たちが多かったのだろう。さらに外敵の存在も大きかったようだ。
イスタンブールの繁華街でテロが起きたのは2022年11月だった。その後、手回しよく「クルド人に訓練を受けたシリア人」が捕まる。
まともな政治報道があれば「政府側の自作自演なのではないか」などと憶測が飛び交っても不思議ではない。だが、今のトルコには政府系メディアしかない。地震が起きた地域はシリアに国境を接しておりそれなりの差別感情などもあるのだろう。外から見ると極めてあからさまな政治宣伝にしか見えないのだが、トルコ国内ではそれなりに政権への離反防止につながったことがわかる。
このような積み重ねの結果、議会ではAKPの影響力が残り、なおかつ野党連合の中にもロシアとの関係を維持すべきだという人たちが残っているようだ。つまり、仮に2週間後にクルチダルオール氏が勝利したとしても西側先進国が望むような状況にはならない可能性が高いのかもしれない。
ロイターは「第三の男」の存在も伝えている。両勢力が僅差だったために第三の男がキャスティングボートを握る展開だ。
クルチダルオール氏はクルド系の支持を維持するのかオアン氏が持つ280万人の支持を取り付けるかで判断を迫られることになる。仮に280万人がそのままエルドアン氏に流れ込めば今回もエルドアン氏が勝利することになり「極右」オアン氏がエルドアン大統領再選の立役者になってしまうのである。