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PTAという日本の理不尽

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PTAはアメリカで作られた仕組みである。この仕組みが日本では独特の進化を遂げている。端的に言えば村社会の陰湿な同調圧力の温床になっているのだ。PTAが問題になるのは学校側のメンバーに入れ替わりがなく保護者だけが入れ替わるからである。つまり意識が変わらない古い村社会に新しい親たちが付き合わされるというのが現在のPTAのようだ。意味がわからないと考える人が多いのも頷ける。

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ただしPTAの意識が変わらないのが問題の全てではない。マネジメント環境が悪化すると日本の村社会によくありがちなフリーライドとマウンティングが横行することになる。

  • 善意で子供たちの安全を守ろうとする人たちにただのり(フリーライド)する親がいるという問題。
  • 逆に専業で子育てできる人ができない人に威圧的に振る舞う(マウンティング)問題。

この二つが加わる。知れば知るほどうんざりするのだが、詳しい状況を見てみよう。

フリーライダーに疲弊する善意のお世話役

PTAはあった方がいい。だが役員は嫌という親がいるそうだ。結果的に善意で役員を引き受けた親に皺寄せが行っている。代わりを決めないと役員を辞められないというしきたりのあるところもあるため「解散ルール」を作ってから次の役員を決め要とするところも出てきた。

結果的に長野県松本市の中学校ではPTAが解散する。役員のなり手がいないからである。長野市内の別の小学校でもPTAが廃止された。今後は地域でどのように子供達と関わってゆくのかを話し合っている。この学校は山間にあるため地域コミュニティがしっかりしている。このため話し合いそのものはうまく行ったようである。

ブラックボックス化するPTA

ただこれだけでは説明ができない動きがある。

京都府や滋賀県ではPTA連絡協議会が解散したり上部組織から脱退する動きが相次いでいるとそうだ。滋賀県草津市の小中学校の連絡協議会は組織そのものが解散した。下部組織の脱退がつづいていたため協議会を存続させても仕方ないということになったようだ。非正規世帯やひとり親世帯が増加して保護者に余裕がなくなっている事情が背景にあるとの分析だ。

ただ、色々調べてみると必ずしもそれだけが原因ではないのだろうなと感じることがある。PTA会費を流用した学校がある。また、PTA寄附を第二の財布代わりに期待する学校もあるという。

2022年の記事だが京都の市立高校の事務長が積立金を私的に流用して問題になった。市側は懲戒免職に相当するとの見解だが「一度支払われた退職金の返金はできない」として問題になったそうだ。返還請求期限の5年を過ぎているというのが理由だった。このニュースは刑事告発を検討となっているがその後実際に刑事告発されたというニュースは見つけられなかった。京都は「現状を調査する」として記事が終わっている。

京都市にはそもそも財政破綻懸念がある。また市長は市の教育委員会出身である。長年の放漫財政のツケは巨額借入として残っているが「単年度で赤字を脱却した」という理由で危機は過ぎ去ったと発言したため周囲から呆れられているという状態である。市のマネジメントが万全とは言い難くこの問題も適切に処理されたのかはよくわからない。

ただ問題があるのは京都・滋賀だけではない。

名古屋市の小中学校ではルールを無視してPTAから多額の寄付を受けていた事例があったそうだ。河村市長が保護者に情報提供を求めている。PTAは保護者と教師の善意の結びつきということになっているため行政の監視が及びにくい。そこで内部通報を求めているということになるがその規模はかなり大きい。100件・1000万円を大きく上回る寄付の情報が集まっているそうだ。市の教育委員会はほとんど全ての事例を把握していなかった。

保護者は次々と入れ替わるが学校側は入れ替わらない。そこにはお金を巡る様々な問題などもあり保護者がおかしいと主張してもなかなかマネジメントが変わらない。だが、それだけではない。

専業子育て家庭の「マウンティング」

中には「免除の儀式」という嫌がらせをおこなっているところもある。くじ引きで役員を決めて「個人的な家庭の事情」を話しさえすれば免除してやるという儀式である。中には泣き出す母親も出てくるそうだ。集団圧力をかけて嫌がらせを続ければ「やりたくない」という人が出るのも当然である。

そもそもPTAには無意味な慣行がありおそらく財政面での問題もある。だが一部の親が権威の側に立って参加できない人をいじめるという現象もあるため、なかなか「誰でも参加できるPTA」に変革できない。

これまでは全世帯加入が原則だとしていたが最近では任意加入であるとする学校も増えている。ただ任意といいつつ「ほぼ100%が加入している」という学校も多く、圧力をかけてPTAに引き留めを図っている学校も多いようだ。「なぜあなたは参加できないのか」「社会にキャリアがあるのがそんなに偉いのか」ということになってしまうのかもしれない。

改善提案は受付ません

学校は巨大なブラックボックスになっており「マスコミのチェックが入る」ことを嫌うところも多い。アンケートを捨てましたと公然と回答する学校も多いのだという。

隠蔽体質は他の文書でも感じられる。弁護士ドットコムが特集をしている。答えているのはPTA加入経験のある弁護士である。つまりこうした問題には人一倍敏感な人たちだ。

PTAの加盟が事実上強制されているという問題が指摘されている。加入しなければならない空気を作って集団圧力をかけるのだそうだが加入に明確な理由はない。専業主婦がいることが前提になっており活動は平日日中に行われることが多いという。

費用がどのように使われているのかよくわからないという声もあった。全国組織に「上納」されているケースもあるようだ。保護者でなくなっても居座って懇親会に参加する人もいるのだという。

アンケートに答える人たちが弁護士ということもあり、PTA組織の不効率な前例踏襲型の運営方式は評判が悪いようである。これを変えるために提案型の積極的な提案をしている人もいる。だが、日本人は提案型の人を嫌い集団圧力をかけて提案を潰すことがある。この時に子供を「人質」に取ったりするので厄介だ。

いずれにせよおかしいと思っている人たちはいる。ただそれでも変えられないのである。

政治とPTAは利益共同体?

2021年には幼稚園のPTA連合会で使途不明金が発生し会長の河村元官房長官が「遺憾の意」を表明している。この時はPTA連合会がパーティー権を買っていて河村さんの支持母体になっていることもわかった。

つまりPTAの少なくとも一部は利権団体となり自民党を支えているのだ。この利権になっているのがPTA会費の上納分だ。

自民党がイデオロギー型の政党ではなく利益団体の集まりであることがよくわかる。ただし「利権」と言ってもPTAの金で親睦旅行ができるとかそんな程度の話なのかも知れない。いずれにせよ、政府がPTAの透明化に積極的でないのにはおそらく理由があるのだろう。うっすらとした疑念はあってもそれが改善されることはない。明確な証明は極めて難しい。

自民党を支える利権集団は古い体質を改めない。また世の中の変化にも鈍感で「昔からみんながやってきたことがなぜあなたにはできないのか?」などと圧力をかけてくる。その意味では親や保護者が初めて直面する「守旧派の理不尽」がPTAなのだと考えれば良いであろう。

コミュニティにこうした圧力が加われば加わるほど「社会に参加したくない」という人は増えてゆく。中には善意でコミュニティを救おうと頑張る人もいるのだが社会や国からの支援は少ない。こうして日本の社会は崩壊に向かっているのかもしれない。一部の人がいい思いをするだけで多くの人にとっては意味がわからないだけだからである。

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