ざっくり解説 時々深掘り

北朝鮮からICBM級のミサイルが発射される。日本はこの先どうしてゆくべきなのか。

カテゴリー:

夕方のニュースを見ていたら「北朝鮮からまたまた何かが飛んできた」と速報が入っていた。ああまたかと思い気にしなかった。だが、今回はEEZ内に落下したようだ。北海道を中心に懸念が広がっている。

そもそもどうしてこうなったのかやこれからどうするべきなのかを考えた。まずはいったん最初から議論をやり直してみるべきだと思う。概念論ではなく具体的な話を聞くべきだ。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






北朝鮮から何か飛んできたという速報が入ったのは夕方の5時半ごろだったが「ああまたか」とあまり気にしなかった。だが、報道を見る限りかなりの騒ぎになっていたようだ。

スマホユーザーの中には「あまり長い文章を読みたくない」という人もいるだろう。要点だけを知りたい人には共同がわかりやすい。

一方でまずは詳細が知りたい人はNHKのまとめを見るのがよさそうだ。何が飛んできたかというよりその後漁民の間にどんな懸念が広がっているかの方が重要だ。

【詳しく】北朝鮮のミサイル ICBM級 北海道西方のEEZ内落下か(NHK)

今回のICBMはおそらく米韓軍事演習への北朝鮮からの抗議の意味合いがあるものと思われる。だがNHKの記事は「北朝鮮はミサイルを打ったが米韓が軍事演習をやるから安心だ」と受け取れるような組み立てになっている。無意識なのかもしれないがNHKの政治的配慮が滲む。政府は何もやっていないと思わせたくないのだ。

アメリカが北朝鮮を刺激すればするほど北海道や東北の漁師が危機を感じるということになっている。スパイラルになっておりどちらが正しいということはない。おそらくきっかけは米韓机上演習だろう。

では日本はどうすればいいのか。

安倍政権時代、安倍総理は「北朝鮮からミサイルが飛んできたら日本が打ち落としてあげる」などと言っていた。ところが実際にはイージスアショア計画は行き詰まった。最終的には河野防衛大事が「私はやりたくない」と総理に直訴してプロジェクトが止まってしまったそうだ。何かあった際に基地のある山口県の安全が守れないというのがその理由だったようだ。対応は可能だが12年かかるというのがアメリカ側の対応だったという。

9月になって安倍総理は新しい談話を発表する。当時のNHKの報道を見ると、自衛隊からはイージスアショアの前例から「今度は何年かかるのか」と懸念が表明されていたことがわかる。少なくとも自衛隊の頭越しに政治主導で議論が進んでいた様子がわかる。

その後の岸田政権になり状況は悪化している。アメリカには防衛費を2倍にしますと約束したが具体策が国民に提示されることはなかった。さらに財源論もまとまっていない。つまり、次に財源の議論が再開される今年の年末まで議論は事実上棚上げになっている。このため岸田総理は懸念を表明しつつ注視することしかできない。おそらくこのままアメリカのセールスマンから何かを買い続けても「実際に使えない」というものは出てくるだろう。

それでも政治的配慮でアメリカから守ってもらえればそれでいいという時代はあった。今問題になっているのは目の前にミサイルが飛んできてもまだそう言い切れるかという点にある。

アメリカ人の頭の中は自分んたちの庭先に飛んできた「気球」でいっぱいだ。共和制の国なので民意に左右されるのは仕方がないところではある。さらに治安も悪化している。治安が悪化した区域の警察官が暴走し地域住民を殺してしまうという事件まで起きている。また入国審査官の人権侵害もかなり横行しているようだ。地域の安全が守られなくなると「国境警備を厳しくしろ」という声が出る。ところが入国審査官や警察の待遇が改善されるわけではない。このような状態に置かれているアメリカの民意が日本海の状況にまで関心を寄せてくれるはずはないのである。

浜田防衛大臣は一生懸命「これはアメリカにも届くミサイルなんですよ」と発言しているのだが、おそらく国内の治安状況に頭がいっぱいのアメリカの民意に浜田大臣の声が届くことはないだろう。国内の危機があり頭上に気球が飛んできた。中には本当に偵察気球もあったかもしれないがそうでないものまで戦闘機で5000万円かけて撃ち落とすというのが今のアメリカなのだ。バイデン政権にとって日本海の優先順位は高くない。大統領が無策というより片づけるべき問題が多すぎる。

米韓机上の訓練に刺激され北朝鮮はアメリカに抗議の意味を込めてミサイルを打った。アメリカ人はそれに反応しなかったがEEZ内に落ちたことで北海道などでは騒ぎになっている。日本はアメリカの気を引こうとして一生懸命だ。それが唯一の防衛対策だからだ。おそらくアメリカにはその声が届くことはない。他にも問題を多数抱えておりアメリカ側では優先順位が高くない。

目を背けるのは自由だが「アメリカへの心理的依存」が我が国の防衛政策上の最大のセキュリティホールになっている。日本近海で危機感が高まると日本政府も日本国民もさらにアメリカに依存するようになる。ところがアメリカから見れば台湾近海も日本海も「アメリカには関係がない」話にすぎないためアメリカでのこの問題に対する優先順位は高くない。実際に起きているミサイル問題よりも将来あるかもしれない(ないかもしれない)台湾侵攻の話の優先順位が高いのも実はおかしな話だ。日本の防衛当局はアメリカの文脈に合わせて優先順位を差し替えていて皆それに薄々気がついている。

ここで「アメリカ依存を脱却すべきだ」と主張してもおそらく聞いてくれる人はそれほど多くないだろう。対米脱却依存=東側陣営の陰謀と考える人がほどんどなのではないかと思う。戦後70年以上続いてきた東西冷戦型のマインドセットから抜け出すのはかなり難しいはずだ。

ここでふと先日石破茂元防衛大臣の発言を思い出した。専守防衛という政治的なストーリーから離れて議論を組み立て直すべきだと言っていた。マスメディアは「大演説だ」と終わりにしているが、内容を読むと「自衛隊の人たちの話を聞いてみませんか?」などと言っている。

安倍政権から岸田政権まで主に防衛問題は「アメリカとどうお付き合いをすべきか?」というような問題として捉えられてきた。おそらくまず最初に取り組むべきなのは議論を公開した上で防衛当事者の話を直接聞くことなのだろう。最初は備品が足りないとか待遇が悪いというような話しか出ないかもしれないが辛抱強く聞き続けるべきだろう。

対米従属というマインドセットから離れるべきだというより「具体的に話を聞く」ことの方が取り組みやすい。

おそらく共産党や社民党などは取り組みが難しいだろうが、憲法議論の前に右左なく与野党で共に取り組むべきなのは実は安全保障の問題なのではないかと思う。この議論を通じて共通の理解ができたときにはじめて現実的な憲法改正案も作れるのではないか。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です