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共同通信の「なかのひと」に左翼系炎上アカウント疑惑

NEWSポストセブンが「【独占】ツイッターでヘイト発言を繰り返していた「桜ういろう」は、共同通信の社会部デスクだった」という記事を出している。記事を読む限りはネットの情報と共同通信社内の消息筋の情報を集めただけのようだ。しかし、なかなかインパクトがある。まずは右だけでなく左もこうなるのかという驚きがあった。仮に事実であれば共同通信にとっては恥ずかしことだ。だがそれでも共同通信は実際に何があったのかを説明すべきだろう。

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最近いわゆる「ネット右翼」と呼ばれる人たちがおとなしくなった。自民党の主流がリベラル寄りになっており菅義偉元総理までが「人権重視で同性婚を議論しては?」などと言っている。日本の政治はいったん空気ができるとその空気に向かって走り出す傾向がある。統一教会問題をきっかけに日本政治の保守離れが起きている。当然支持者たちも離れ観客がいなくなれば演者たちもそれぞれ別の演目を探し始めるようになると言った具合である。

そうなると反対に過激な左側の人たちが取り残されて目立つようになる。ネット右翼に過激な人たちが多いため一般人はあまり政治に関心を持たなくなった。結果的に過激な左側の人たちだけが政治言論に残ったという感じさえする。

とはいえ今の段階では「週刊誌報道が一つ出ているだけ」である。記事は「ネットの話題」と書いているが検索してもそれほど多くの記事が出てくるわけではない。匿名掲示板とアゴラが取り上げている程度だった。さらに、報道の根拠は匿名消息筋の「共同通信の社内で会議が行われました」というものだ。

この話題の一番の教訓はおそらく正義感が乗った匿名性の怖さだろう。

仮にこの報道が事実だったとするとおそらくこのアカウントの持ち主はある程度の報道リテラシーや情報リテラシーを持っていたはずだ。駆け出しの記者ではなく監理的な立場にあったことからもそれは明確である。にもかかわらず「匿名になるとこうなってしまうのか」という驚きがある。普通の訓練を受けていない人はおそらく匿名で政治的な発言は深追いしない方がよさそうだ。

共同通信のブランド価値の毀損も心配だ。

共同通信は「短信」で知られる。地方紙が掲載しやすいように事実だけを報道するのが基本でバイアスがかかりにくいと考えられている。そもそも短すぎて意見を紛れ込ませることは難しい。事実と意見が混じることが多いネット言論においてはかなり重要な位置を閉めている。ところが仮に「なかのひと」がヘイト発言アカウントだったということになれば事実の取捨選択レベルでバイアスがかかっていたという可能性が出てくる。「デスク」とはそういう仕事である。

アメリカのChatGTPやIT企業にはwoke疑惑があるのと同じように日本のメディアも「左寄りで意識高い系だ」という「マスゴミ批判」が存在する。共同通信は記者の採用やデスクの選定において問題がなかったのかをきちんと対外的に説明すべきだろう。

ただし逆もありうる。ポストセブンの報道が本当だったとして飛びつくのはいったん待った方がいい。話題としては面白いのだが日経新聞でさえ日銀総裁人事予想を外す世の中である。全てのことは検証対象だと思った方が良い。

仮にこの報道が本当だったとすれば次のようなことがいえる。

  • 正義感と身バレしないという安心感が極端な主張を持つ過激な言論アカウントを作った。
  • おそらくこの人にはメディアリテラシーや政治に関する倫理的な知識はあったはずだが「匿名性の魔力」には勝てなかった。正義感の混じった匿名性はそれほど強い魔力を持っている。
  • Twitterのようなモデレーションなき言論空間では双方の極端な意見が過激化しやすい。つまり政治的な議論をするならモデレーションのある空間を作った方が良さそうだ。
  • いったん名前がバレてしまうと仕事を失うという危険性がある。また雇用していた会社も「あの会社の報道姿勢や記者の適性は大丈夫なのか」と疑われることになる。実はどちら側にもリスクが高い。何らかの対策が必要だ。

共同通信がマスコミとしての良識を持っているのであればこの件について速やかに整理して説明すべきだろう。事実も事実でないことも報道されているはずである。共同通信のブランド価値を守るために正直な情報開示と読者の理解が極めて重要である。

組織報道が前提の日本のマスコミでは。匿名にするか実名にするかは非常に難しい問題だ。

先日、テレ東日経大学が打ち切られたことについて書いた。きっかけはSNSで多数のフォロワーを獲得して退職した日経記者の扱いをめぐる親会社日経と子会社テレ東の間の軋轢だったようだ。この元記者は実名でアカウントを作ったことで出身社との軋轢が生まれた。

では匿名で活動している分にはいいのかということになる。仮に今回の件が本当だったとすると「匿名アカウントに問題がある」といえるだろう。

おそらく最も単純な解決策は社員のSNSを禁止してバレたら解雇・処分することなのだろうが、これではマスコミとしての責任を果たしたとは言えない。さらに新規ユーザーの獲得にはネットへの理解が欠かせない。これまでIT化が遅れていたと言われてきた日本のジャーナリズムだがかなり難しい局面に差し掛かっているのかもしれない。

いずれにせよSNSのなかった世界には戻れない。またユーザーでない人がネット世代に情報を発信することも難しい。ここは、隠してしまうのではなく是非積極的に情報開示してもらいたいところだ。

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