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アメリカの人為的デフォルト騒ぎで1兆ドルプラチナ硬貨案が再浮上

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「敵国がよろこぶ?」という非常に小さなニュースを見つけた。FOMCに議決権を持つフィラデルフィア連銀総裁のハーカー氏が「アメリカがデフォルトになったら敵国が喜ぶ」という興味深いコメントを出し記事として取り上げられている。確かに、ウクライナ問題でアメリカと対立するロシアが大喜びすることは間違いなさそうだ。

ただ、フィラデルフィア連銀総裁は冗談でデフォルト危機を仄めかしているわけではない。アメリカがデフォルトするとしたらそのタイミングは6月初旬にやってくる。

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ハーカー総裁はもともとタカ派的だ。しかしさすがにアメリカの経済を滅茶苦茶にしてまで金利を抑制しようとは思っていない。むしろ政治的にはバランスが取れた発言をしていると言って良いだろう。FRBは難しい舵取りを迫られているためリセッション入りの可能性は多くはないがなお存在すると強調している。

ハーカー総裁は5%まで利上げを行うべきだとしているがそのペースは減速させるべきであると考えている。うまくゆけば来年には政策が解除でき利下げに転じることができるだろうとの見通しだ。ハーカー総裁はFOMCの今年の投票権を持っているためその発言にはそれなりの重みがある。

難しい状況にかろうじて対処している金融当局者たちは現在の政治状況に苛立ちを募らせているのだろう。

もちろん基軸通貨国のアメリカがデフォルトするはずはない。ただし政治には大いに問題がある。政治が問題を解決しないどころか更なる厄介ごとを作り出しているとハーカー総裁は言いたいのかもしれない。

アメリカ合衆国政府の債務は1月19日に法定上限を突破した。このままでゆけば6月初旬までに財源が枯渇する。現在は特別措置体制に入っており、議会がなんらかの対策を行う必要がある。

もちろんこうした手法は単なる政治的なパフォーマンス以上にはみなされていない。オバマ政権時代にも似たようなことがあり直前に回避された。2011年には期限当日の8月2日になってようやく債務上限引き上げ法が成立したそうだ。ただ同じようなニュースが2013年10月にもあった。つまりアメリカ人はもともとこうしたチキンレースが好きなようだ。

だが共和党内部の強硬派のコントロールが難しくなっており偶発的なデフォルトの可能性は高まっている。日経新聞の記事のコメント欄にはアフラック生命保険のチャールズ・レイク代表取締役会長のコメントが掲載されている。「下院議長選挙の混乱を見ると嫌な予感がしてならない」と言っている。

こうした緊急事態を回避するために1兆ドルのプラチナコインを発行しFRBに買い取ってもらうという奇策まで検討されているという。

この奇策が検討されるのは今回が初めてではないようだ。つまりこれまでも何回かこうした危機があったということになる。2013年には「実際にどれくらいの重さになるんだろうか」と計算した人がいる。1兆ドル分の白金を使って作られた硬貨は、およそ19,400tの重さになるそうだ。盗まれる心配はなさそうなのだがおそらく作るのは無理だろう。純白金から1ドル硬貨と同じ大きさの「1兆ドル硬貨」を作ると1,200ドル程度のプラチナを含んだ硬貨が作れるという。

中央銀行による財政ファイナンスに当たるためイエレン財務長官は否定的な考えだそうだ。おそらくFRBも中央銀行が政府を支えるというような前代未聞のアイディアには同調しないだろう。

それでも今回「ああまたか」が「ひょっとして」に変わりそうな理由はいくつかある。最初の問題は共和党内の分裂だがこれにバイデン大統領の個人的な資質が加わる。バイデン大統領は「協力を」としながらも相手を挑発してしまう傾向がある。このため共和党との関係改善が見込めない。日本のようにパイプ役になる優秀な補佐もいないようだ。

さらに自分の間違いを認めないところがある。現在も「デフォルトに陥ることなどあり得ない」と危機を一蹴している。この時に「社会保証やメディケアの支出を削減しなければ共和党がアメリカをデフォルトさせると言っている」などと大袈裟に共和党の非協力的な姿勢を攻撃した。Bloombergはこれを「事実上の選挙キャンペーン」と言っている。

こうした状況に国民はうんざりしているようだ。

一般教書演説の視聴者は去年に比べても29%減少しているという。バイデン大統領の発言に期待する人が激減しているのだ。視聴者の73%が55歳以上の中高年で18-34歳のレンジでは5%しか演説を聞いていない。少子高齢化が進む日本でも「シルバーデモクラシー」などと言われているが実はアメリカにも同様の傾向があることがわかる。

アメリカのテレビは25-54歳を最も購入意欲が高い主要年齢層と見ているそうだが主に政党同士の勝ち負けにこだわるのは中高年であって主要年齢層と若年層はこうした議会と大統領との対立から距離を置いていることがわかる。必ずしもアメリカ全体が二つに「分断」されて争っているというわけでもなさそうである。

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