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「中国はある程度の覚悟を持って偵察気球を飛ばしているのだろう」と高橋杉雄氏

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中国の偵察気球問題についての議論が続いている。高橋杉雄氏がこの問題に参戦し「あれは偵察衛星だろう」という見解を披瀝している。高橋氏は「ルーチンではあるが、ある程度の覚悟を持ってやっているのだろう」と見ているようだ。これをWebメディアらしく「テヘペロでは済まない」などと表現している。

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このブログでこの問題を伝えた際には「気球が何なのかはよくわからないが米中対話が阻害されるのは問題だ」という論をを展開した。

ところが高橋氏が参戦し「あれは偵察装置だ」とした。中国側の主張は伝えられることはないのだから、日本国内では「あれは偵察装置だった」という認識が定着しそうである。

高橋氏は「Abema Prime」に出演し「ある程度の覚悟を持って飛ばしたのだろう」と主張している。人工衛星を使わないメリットとして「電離層で跳ね返される電波の傍受なども可能である」という点を挙げている。高橋さんは挑発するためにわざとやったというわけではなく「ルーチンの活動としてやっているのだろう」と見ているようだ。つまり対話を阻止する積極的な動機に基づくわけではなく「露見しても構わない」として偵察しているのだろうと考えていることになる。

アメリカ軍がこの偵察気球について情報を開示することはないかもしれない。だが一般的には核施設の偵察をしていたのではないかという見方が広がっているようだ。ロシアに対して向いているだけなのかあるいは中国にも向けられているのかは中国にとっては大きな問題だ。

これについてWIREDが興味深い記事を出している。The Chinese Spy Balloon Shows the Downsides of Spy Balloonsというタイトルで「スパイ気球」のデメリットについて扱っている。もともと1950年代にアメリカがよく使っていた手法なのだそうだが今回のように大騒ぎになってしまうためあまり使われなくなってしまったのだそうだ。

WIREDはあまり使われなくなったから対策も取られていないと説明をしている。例えば侵入されたとしても領土内では撃墜ができない。破片が落下するとアメリカ市民に被害が出かねないからだ。

仮に高橋さんのいうように、これが「スパイ気球」だったとすると中国政府は露見する覚悟でこれをやっている可能性が高い。実際にそういう前例があるからだ。

高橋さんの「テヘペロでは済まない。ある程度の覚悟を持ってやっているのだろう。」という主張はこのような軍事的な常識を踏まえているのだろう。高橋さんはプレゼンテーションの中で「中国がすぐに言い訳を準備してきた」ことからバレた時のことも想定していたに違いないと言っている。ただ対話を阻止するための積極的な措置とは見ていないようだ。

ここから想像を展開すると中国はもはや米中関係を冷戦だと捉えているということになる。現在の国連や国際組織を破壊するまでのつもりはないのだろうが、対話は前提としないのだから「あからさまな偵察もアリ」ということになるだろう。米中は表向きは対話の大切さを訴えながらももはや話し合うつもりはないと考えていることになる。

仮に中国が国際的に孤立しているのであれば国際社会がこれを非難することで中国を追い込むことができるだろう。

今回の問題について「中国の国際法違反だから国際的に非難されるべきだ」という論を展開している人がいる。しかしながら国際法というのは「お互いにメリットがあるから」かろうじて守られているに過ぎない。もはや対話をするつもりがないのであれば国際法を遵守する必要はなくなる。つまり、いわゆる「国際法」は事実上は単なるローカルルールということになってしまう。

その恐ろしさを我々はすでにロシアのウクライナ侵攻で目の当たりにしている。ロシアは席を蹴って国連を出て行ったわけではない。つまり内部から安定装置が崩れてゆくのだ。トルコもNATO内部からあからさまにヨーロッパの秩序構築に反抗している。

国連は建前としてはまだ存在するが既に紛争解決の実行力を持たない。NATOでさえも一枚岩とは言えない。だが日本人はまだ「国際法のない時代」を想定できていない。

アメリカ合衆国はこれからこの機器を解析し中国がどの程度の情報を得たかについて詳細に分析するはずである。つまりアメリカの手の内がどれくらい向こうに知られたかをアメリカはある程度知ることになるだろう。もしかするとそれに合わせて大陸弾道弾になんらかの改良を加えるかもしれないのだが、財政的な問題を抱えており対応ができない可能性もある。議会と大統領の間で債務上限の問題が浮上しているが解決の見通しは立っていないのだ。

いずれにせよ、日本にはこの情報は開示されないだろう。日本政府も日本国民も「日本はアメリカの核の傘に守られているのだろう」という見込みを持っているが実はその実情はよくわかっていないはずである。つまり日本の安全保障はアメリカの核の傘を前提にしつつもその傘がどれくらいの大きさでどのくらいの有効性を保持しているのかということがわからなくなりつつあるということだ。

つまりこの問題は「偵察(スパイ)気球とわかったのだから中国が悪いですよね」程度では済まないということになる。

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